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学生よ騙されるでない! ブラック企業の見抜き方

第3回 セミナーや面接でブラック企業を見抜く


新田龍(ブラック企業アナリスト)
2009/12/25

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■セミナーからブラック企業を見抜く

 一般的に、説明会やセミナー、会社説明会でブラック企業かどうかを見抜くのは難しいものです。そもそも説明会は、「会社に好印象を持ってもらうために、あらゆる手段を尽くしてアピールするところ」ですので、その場で何かまずいことが露呈する、という事態はまずないといっていいでしょう。むしろ、ブラック企業ほど説明会で良い印象を与え、その後の選考にも疑問を抱くことなく進んでもらうことが大事になってきます。

 では、どこで判断すればよいのか。細かい点になりますが、次のようなところに留意しておくのがよいでしょう。

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●人事担当者や社員が明らかに疲れ果てており、印象が良くない

 ハードワークを含め、さまざまな問題を抱えている可能性が高いです。好印象を持ってもらい、自社への応募を促すための場であるにもかかわらず、このような印象を抱かせてしまうこと自体が問題です。留意するに越したことはありません。

●参加者への配慮が足りない(説明不足、不親切、社員の態度が悪いなど)

 集まる学生も、いずれは何らかの形でその会社のお客さんになるかもしれないのに、充分な気配りができないということは、実際の顧客にも配慮がない表れであるといえるでしょう。また、社員の態度や雰囲気に違和感がある場合、それは会社の人間関係や社風の現われかもしれません。

●説明があいまい

 きちんと説明できない、後ろ暗い理由がある可能性が高いです。前回の記事「ネットや雑誌からの情報収集でブラック企業を見抜く」において「求人情報を見ても、仕事内容がよく分からない会社はキケン!」と書きましたが、説明会も同様です。「具体的な業務内容がよく分からない」「抽象的な表現で煙に巻くような説明をする」場合は怪しいと捉えていただいてよいでしょう。そんなときは、以下のような点に疑問を持って「事実」を確認するようにしましょう。

・「仕事内容は、コンサルティング営業です」

 対象顧客は法人か個人か。法人なら、どんな業界のどれくらいの規模の会社が対象で、どの部署あてにいくらくらいの商材を、何に関するコンサルティングをして売り込むのだろうか。

・「残業は少ない方で、休みも取りやすい方です」

 具体的に、オフィスに誰もいなくなるのは夜何時ごろなのか。残業せずに成果を出して出世している人はいるのか。有給消化率はどれくらいか。休む場合のフォロー体制はどうなっているのか。

 説明会やセミナーは、会社と接触できる貴重な機会です。本質的な部分を見抜き、不審な点、不安な点は解消できるよう、有意義に活用しましょう。

■面接からブラック企業を見抜く

●面接回数が少ない
●面接時間が短い
●面接中は雑談ばかり
●面接は通過したが、何が評価されたのか分らない
●スケジュールに余裕がなく、次の選考を受けるように急かされる

 「何の判断もしていない」=「頭数さえ揃えば誰でもいい」という考えである可能性が高いです。特に面接通過時、「どこが評価されたのか分らない」と感じた場合は、その時点で怪しいと思ってよいでしょう。

 人事のプロであっても、人をきちんと評価し、見抜くには時間を要するものです。従って、人事担当者ばかりでなく、現場社員なども選考に参加し、これまでの経験、将来の可能性や人柄など、時間をかけて多角的に判断するのが本来あるべき面接の姿なのです。

 また、以下の場合は、顧客に対して誠意がない会社である可能性が高いです。

●面接官が事前に書類を読んでいない
●面接官の態度が横柄である
●学歴、性別、国籍や前職などに対して偏見、差別的、モラルを欠いた発言がある
●日程調整など、応募者の都合を考慮しない
●面接後の連絡が遅い

 求人情報、メールや電話での連絡、そして面接でも、企業と皆さんとのあらゆる接点において「何かしら誠意が感じられない対応」が見られた場合、その会社は顧客に対しても知らず知らずのうちに失礼な対応をしている可能性が高いといえます。そもそも意識が欠落しているか、きちんとした対応を徹底させるマネジメントが存在していない証拠といえるでしょう。

■会社訪問でブラック企業を見抜く

●受付やオフィス、トイレが汚い

 社員のモラルが低い可能性があります。乱雑なままで平気な社員が多いということは、その分だけ細かいところに配慮が足りず、訪れる人がどんな印象を抱くかというところまで相手の視点から考えられていないことを表しています。外部に対してそのような程度の配慮ということは、当然、社内の労務をどう捉えているか。推して知るべきといえるでしょう。

●標語やスローガン、棒グラフが所狭しと張られている

 目標達成へのプレッシャーが強い可能性が高いです。これは分かりやすい例ですし、比較的広範囲に見られる光景ではあります。常に衆人環視の下で結果を判断されることにプレッシャーを感じる人は避けた方がよいでしょう。 

 ここで見るべきは、グラフではなく標語やスローガンです。「気合だ、やる気だ」「訪問件数○件目標」などと書かれていたら注意が必要です。恐らくその会社の営業を統括している人もしくは社長は、セールスについて精神的、感覚的な判断しかできず、結果的に売れなかった場合に「会社の仕組み」ではなく「営業マンの能力」が問題だなどといい出しかねませんので。

●デスクでランチを取っている人が大勢いる

 ハードワークが常態化している可能性があります。1人や2人程度であればよくある光景ですが、それが多数派であれば要注意です。1時間もゆっくりと休みを取れないくらい忙しい、もしくは休みを取ることが許されない社風の表れかもしれません。

■神は細部に宿る

 今回挙げた「ブラック企業らしい兆候」には細かい部分が多く、そこまで気と目を配って確認するのは大変かもしれません。しかし、そんな些細なことにこそ、会社や社長の考えが反映するものなのです。まさに「神は細部に宿る」ですね。

 今回のポイントは、「この会社はなぜそうなっているのだろうか?」と情報を解釈する、本質を考えるクセがあれば見抜けることも多いでしょう。

 一方で、見抜くべき点の中には「雰囲気」や「印象」など、多分に感覚的、主観的な要素が入ってきます。これらを論理的に説明するのは難しいのですが、「どうも胡散臭い」「何かシックリこない」といった感覚は意外と当たることが多いものですから、ぜひ大事にして、「本質的な分析」と合わせて検討いただきたいと願っています。 

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筆者プロフィール
新田龍(にった りょう)
ブラック企業アナリスト、キャリア教育プロデューサー、大学講師、株式会社就活総合研究所 代表取締役、および株式会社ヴィベアータ 代表取締役。
早稲田大学政治経済学部卒業後、ネット上で「ブラック企業」といわれる2社において事業企画、コンサルタント、人事採用職を経て独立。「すべてのはたらくひとをハッピーに」を目指し、これまで5000人以上の面接・カウンセリング経験、早稲田大学など20大学でのキャリア指導経験を持つ。著書に『人生を無駄にしない会社の選び方』、(日本実業出版社)がある。



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