開発中、クライアントとはかなり密に打ち合わせをする。本来の目的(コーディネートの期間短縮)を見失うことなく、なおかつ現場が使いやすいシステムを作ることが重要だ。
立場の違いにより、マネジメント層は「コストを抑えてほしい」と考えているし、実際にシステムを利用する現場は「使いやすくしてほしい」と考えている。両方の声を聞き、本来の目的と照らし合わせながら開発プロジェクトを進めていくのも橋本氏の役目だ。
プロジェクトはおおむね計画どおりに進んだが、それでも納期直前はかなりの忙しさとなった。これはどのプロジェクトでも共通するのだという。
「きちんと計画を立てて進めてはいるのですが、完成が近づくにつれて、『もっとここを良くできるんじゃないか?』とか、『もっと使いやすくできるんじゃないか?』っていう気持ちがどうしても出てきてしまうんです。完成したときに、少しでも良いものをお客さまに提供したいから、時間が許す限りプロジェクトメンバーと議論を重ねます」
最後の1週間は「めちゃくちゃ忙しかった」と橋本氏は語る。だが、プロジェクトメンバー全員が一致団結して努力した結果、システムはついに完成した。
当時のことを思い出すように語る橋本氏 |
「企画提案の段階から担当し、保守運用チームに引き渡すまでの間、すべて自分の責任範囲でやれたというのが、自分の中では非常に大きかったですね。この経験は、ほかのプロジェクトを担当する上でも大きな自信になりました」
プロジェクトを終えてうれしかったことは何かと聞くと、橋本氏は笑顔で答えてくれた。
「チームメンバーに、『このプロジェクトは本当にやっていて楽しかった』『またこのチームでやろう!』という言葉を掛けてもらえた時ですね。本当にここまでやってきてよかったと思いましたよ」
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移植を待つ患者のためにも、ドナーは多ければ多いほどいい。だが、ドナー登録希望者が加速度的に増加した場合、旧システムでは対応し切れないという大きな問題点が出たことが、システムを刷新した目的の1つだった。橋本氏は自身が作ったシステムに大きな自信を持つ。
「偶然かもしれないですが、このシステムが完成したころから、骨髄バンクのコマーシャルがバンバン流れるようになったんですよ。でもこの新システムが稼働したことで、『ドナーさんが何人来ても大丈夫!』という状況を作り出せた。僕たちもそれだけのものが作れたという自負がありましたね」
コーディネートにかかる時間の短縮という本来の目的も達成できた。患者さんの役に立てたのがうれしかった、と懐かしそうに語る。
「ボランティアの方も含め、骨髄バンクで働いている人たちは、自分の仕事に対してとても熱心な人が多かったんです。人の役に立てることが心からうれしい、という思いがひしひしと伝わってきました。そういう人たちと一緒に仕事ができたことで、僕たちのモチベーションも上がりましたね」
「コンサルティングを頼まれるときというのは、何か新しい組織を立ち上げるとか、お客さまが自社の継続的な成長のために新しい事を始める時が多いんですよね。例えると……これから始まる『お祭りの場』に飛び込んでいく、って感じかな。そのお祭りの全体を見たうえでシステムを作っていかなくてはいけない。そういう意味では、責任の範囲も広いし、プレッシャーもあります。その分、やりきった後の達成感はかなり大きいですね」
クライアントの目的を達成するため、目の前の課題をITを使ってどう解決するか考える。実際に作り、しかも作って終わりではなく、その効果を直接確認することができる。それが大きなやりがいです、と橋本氏は語る。
橋本氏の「お祭り」という考え方は、プロジェクトチームのメンバーに対する接し方にも表れている。橋本氏は「どうせならみんなで楽しく」と考えている。
「どんなに厳しい状況でも、前向きに考えるようにしています。大きな壁が目の前に立ちはだかることもありますが、どうせ越えなくてはならないのなら、楽しく前向きに乗り越えたい。そういう意味で、チームメンバーへの声掛けを行って、常にいい雰囲気をつくっていくことはとても重要なことなんですよ。コミュニケーションはすごく重要。開発プロジェクトの仕事っていうのは、スポーツでいうと団体競技なんじゃないかと思っています」
1人で作れるシステムは存在しない。常にチームを意識することが大事なのだ。
「アクセンチュアは風通しが良く、上司や同僚に思ったことを何でもいえる雰囲気があるんです。社員にはそれぞれ得意分野があるので、分からない事があればすぐに詳しい人に連絡をとる。そうすると丁寧に教えてくれるし、中には『いまからそっちに教えに行こうか?』っていってくれる先輩もいます。チームワークの良い会社だと思います」
終始、穏やかな雰囲気でインタビューに答えてくれた橋本氏。しかし、その内に秘められた熱い思いを感じることができた。入社当時にあこがれたアクセンチュアの社風を、彼もまた受け継いでいるのだろう――そう記者は感じた。
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