その一方で、吉岡氏がこのキャンプで伝えたいのは技術知識そのものだけではないという。
「4泊5日で教えられる内容には限りがあります。だから、このキャンプはきっかけ作りなんです。これから先、何年も続くかもしれない開発者人生の『道しるべ』が提示できれば、と思っています」(吉岡氏)
吉岡氏の願いはもう1つある。それは「仲間を発見して欲しい」ということだ。キャンプを通じて形成されるであろう、横(同年代)と縦(講師や先輩)に伸びる緩やかな「基盤系プログラミングコミュニティ」の種となって欲しい、と吉岡氏は語る。
福井氏も「学生は毎年、日本中から集まりますからね。地方の人はこういう場で仲間を見つけてください」と話す。キャンプに参加した学生たちの声で最も多いのが「同志が見つかってうれしかった」というものだったという。
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セキュリティ&プログラミングキャンプのユニークな制度として「チューター制度」がある。過去のキャンプ参加者は「チューター」に応募することができるのだ。審査が通れば、今度は学生を教える立場に回ることができる。
「キャンプが終わった後、熱心な学生はチューターとして参加してくれるので、わたしたちのやっていることが後にどうつながっているか見えるんですよ。セキュリティコースはもう長いことやっていますから、実際にIT業界で活躍し始める人が出てきましたね」(福井氏)
セキュリティコースの講師、望月岳氏は「セキュリティキャンプ2004」の参加者だ。当時、学生だった望月氏はIT業界で活躍する傍ら、昨年から講師として活動している。同じくセキュリティコースの講師、滝崎芳枝氏も「セキュリティキャンプ2005」の参加者である。
キャンプを通じて技術を教えた学生がIT業界に入り、今度は教える側に回る――そうした「エコシステム」が、セキュリティコースでは実現し始めている。吉岡氏はプログラミングコースでもこうした循環が成り立つことを期待しているという。
今年のプログラミングコースは「実験的」と吉岡氏は正直に語る。だが、できれば継続していきたい、というのが吉岡氏の望みだ。
「煽るわけじゃないんだけど、来年も同じものができるかどうかは分からないですから」(吉岡氏)
このキャンプは経済産業省の「高度IT人材育成」の一環である。成果が出ていないと判断され、予算が切られたら同じものはできなくなる。「来年も同じかどうかは分からないから、取りあえず来てください」と吉岡氏は笑う。
「プログラミングの素晴らしさ、楽しさを知って欲しい。そして、できれば『職業としての』プログラマになって欲しい。今回のキャンプは、野球でいえばイチローがキャッチボールしてくれるようなもの。そんな体験ができるんだから、プロになって欲しいなあ」(吉岡氏)
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