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セキュリティ&プログラミングキャンプ2009

セキュリティ&プログラミングキャンプ2009 レポート
「実践的であれ」――伊藤直也氏から学生への言葉


岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2009/8/20

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「潜る」伊藤直也

 伊藤氏は「この話はいろいろなところですでにしているのだけど」と前置きをしつつ、「でもすごく大切なことなので、繰り返します」と特別講義を始めた。

 最初にスクリーンに映し出されたのは、スティーブ・ジョブズ氏の言葉だった。「シリコンバレーは世界を変えるために存在する」。世界を変えるとは、世界を良くするということであり、しかもそれは「偽善ではなく、自分自身も経済的に豊かになるということ」だと伊藤氏は説明した。

伊藤直也氏
はてな CTO 伊藤直也氏

 「プログラミングは世界を変える。それは、絵空事として受け止めてほしいわけじゃないんです。決して大げさな話ではなく、自分の自己実現につなげてほしい」

 伊藤氏は「はてなブックマーク」を作るまでのキャリアを振り返り、「とんとん拍子で来たかというと、そうでもない」と語った。1990年代後半のオンラインゲームの登場やGoogle創業に衝撃を受けた伊藤氏は、プログラミング経験1年ほどでニフティに新卒入社。「なんとかなるだろうと思ったら、なんとかならなかった。世界を変えるなんてレベルじゃない。毎日本を読んで勉強していた」という。

 その後、アメリカを中心にブログブームが到来。伊藤氏はシックス・アパートのソフトウェアを使用してブログサービス「ココログ」を立ち上げる。「世間で評価されたが、実際は先輩におんぶに抱っこだったし、自分で一から作ったわけじゃなかったから、ほめられればほめられるほど、劣等感を感じていた」と伊藤氏は当時の心境を切々と語った。

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 「自分の手で何かを作り出すにはどうしたらいいのだろう」と悩んでいた伊藤氏は、同年代の成功している「尊敬する技術者たち」が「リスクを取っている」ことに気付いたという。一方、自分は大企業に属し、リスクを取っていなかったのだ。リスクを取り、自分で一からものづくりをしたい、という思いから、伊藤氏ははてなに転職した。

 「(はてなブックマークは)自分で一から作ることができた。一皮向けた」と伊藤氏は語るが、同時に「いろいろとごまかしていた。ひどいコードとか、場当たり的な実装とか」と悩みもあったことを明かした。

 「当時、はてなは技術的にすごい会社で……というようなことをよくいわれていた。でも、自分がやっているのは、自分ができる範囲でごまかしながら作ったものだった。そのギャップに悩みながら、それを正当化して自己顕示欲を満たす日々だった。自分はプログラミングしかできないから、それを否定することができなかったんです」

 はてなブックマークはヒットしたが、場当たり的な対処で大きくしていったため、「よく落ちるサービス」になってしまった、と伊藤氏は語る。夜中に落ちれば、自分だけでなく、ほかのスタッフにも迷惑を掛けてしまう。伊藤氏は「大きな壁にぶつかった」と表現した。

 壁を突破したきっかけはLinuxカーネルの本だったという。たまたま買ったその本には、負荷分散の基礎が詰まっていた。これをきっかけに、伊藤氏ははてなのインフラを刷新し、はてなブックマークを改修する。「それまでは『ノウハウ』でしかなかった。このとき初めて『技術』に向き合ったと感じた」と伊藤氏は強調した。

 「技術に真っ当に向き合うには、流行から距離を置くことが重要でした。流行の技術や流行のコミュニティに触れていると、馴れ合っちゃう、安心しちゃうんです。でも、自分にとって本当に必要な技術を得るためには、『潜る』必要があったんです」

 周りにカーネルを勉強している技術者なんてほとんどいなかった、と伊藤氏は振り返る。だが、それが血となり肉となるのだ、と。

 吉岡氏が語った「深い部分」という言葉とつながっている、と記者は感じた。学生たちに、その言葉の真意が伝わることを祈る。

実践的であれ

 「プログラミングで世界を変えられるのは明らか。アイデアだけで世界は変えられない。自分の手で証明するしかない」

 伊藤氏はそのように学生たちを激励した。そして、「チャンスを逃さないためには、継続的に学習することが大事。学習意欲を継続させるには『この道でやっていくんだ』という覚悟と、自分に足りないものを持っている人と出会って『困難にぶつかる』という経験が必要」とアドバイスした。それはまさに、このキャンプを通じて学生たちが考え、経験したことなのだろう。

 「みんながこのキャンプで学んだことは何か。プログラミングのノウハウ? それは一部でしかありません。みんなが学んだのは『世界を変える力』です」

 実践的であれ。「自分が作った」が圧倒的に正しい。自分で何かを作り出して、世界を変えよう――そう伊藤氏は力強く語った。

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