Engineer Life
第4回 読者調査結果発表
〜エンジニアの抱く“危機感”の正体とは?〜
小柴豊
アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
2002/9/13
最近では、当フォーラムだけではなく、エンジニアにスキルアップ/キャリアアップ情報を提供する多くのメディアが登場している。こうしたメディアが成立する背景には、エンジニアのスキル/キャリア向上ニーズの高まりがあるはずだ。それが実はエンジニアの職業的な危機意識の表れとも見て取ることができる。では、今日のエンジニアはどのような点に危機を感じ、どう対処しようとしているのだろうか? Engineer Lifeフォーラムが実施した第4回読者調査から、その状況をレポートしよう。
エンジニアの9割が将来に不安/危機感を感じている
読者にエンジニアを続けるうえでの将来への危機意識を尋ねたところ、全体の9割以上が職業的な不安/危機感を感じていることが分かった(図1のうち「日常的に感じている」「ときどき感じることがある」の合計)。人間である以上、生きていて不安や危機感を感じるのは当たり前といえるが、全体の5割近くがそれを“日常的に”感じている点に、現在のエンジニアの切迫した状況が表れている。
図1 エンジニア業の将来への危機意識(N=392) |
エンジニアの危機感=自分自身への赤信号
では、こうしたエンジニア業への危機意識は、どのような要因から生じているのだろうか? 上記の不安/危機感の理由を尋ねた結果、「スキルアップするための機会や時間、資金の不足」がトップに選ばれた(図2)。以下、「所有スキルの陳腐化」や「自分の適性や市場価値の有無」など、個人個人のスキルに関する項目のポイントが、マクロ環境やリストラといった外部要因を上回る傾向にある。エンジニアにとって、自らのスキルこそが環境変化を乗り越えていく武器といえるだろう。その武器が陳腐化し、新たな研さんを積むこともできないとしたら……。エンジニアの危機感は、外部からの脅威にではなく、成長する方向性を見失った自分自身に向けられているようだ。
図2 危機感を感じる理由/要因(N=392) |
スキル危機下のキャリア目標とは?
ところで、こうした危機感に対して、エンジニアはどのような対応を考えているのだろうか? 5年後くらいを想定したキャリア目標を尋ねた結果が、図3だ。ご覧のとおり、現職の延長線上で「SE/PG(プログラマ)として専門性を深めていく」読者が3割弱なのと同時に、「(業務分析やビジネス・モデリングなど、)より上流の業務にシフトする」「コンサルタントになる」といった上級スキル職指向者も、合計で3割を超えている。その半面、「現場のエンジニアからマネージャ/管理職業務に異動する」との回答が1割にも満たなかったことからは、あくまで技術スキルを武器に生きていこうとする、読者の“エンジニア・ライフ”への強いこだわりが感じられる。
図3 今後のキャリア目標(N=392) |
キャリアプランを実現するアクション目標は?
とはいえ、図2のようなスキル危機の状況において、こうしたキャリア目標を達成するためには、何かしら特別なアクションが必要となるだろう。そこでキャリア目標実現のための“アクション目標”を尋ねたところ、「業務外でも必要なスキルは自習する」という読者が全体の8割にも達した(図4)。この数字は、「現在の業務に注力する」との回答の2倍以上にあたっており、もはや目前の仕事をこなすだけでは生き残れないという、エンジニアの厳しい現実認識が反映されているようだ。
図4 今後のアクション目標(N=392)。3つまでの複数回答 |
エンジニアがいま注目するスキル/資格とは?
ここまでの結果では、新しく習得すべき技術が続出する中、エンジニアとしての生き方を貫くために、強い危機感を持ちながら自主的なスキルアップを志す読者の姿が明らかになった。後半ではそうしたエンジニアが、現在どのような分野のスキルアップを考えているのか、その内容を明らかにしていきたい。
まず読者が現在の業務上、最もスキルアップの必要に迫られている分野を尋ねた結果が、図5だ。14の選択肢の中で読者が上位に挙げたのは、「プロジェクト管理」「オブジェクト指向分析/設計」「Java/J2EEによるシステム開発」「ネットワーク設計/構築/管理」の4つだった。エンジニアからスキルアップの機会/時間を奪う要因として、短納期化/要求変化といった現代のソフトウェア開発の危機的状況があるが、それらを乗り越えるためにも、プロジェクト管理やOOAD(オブジェクト指向分析設計)に関するスキルは有用となりそうだ。
図5 業務上スキルアップが必要な分野(N=392) |
次にスキルアップと関連して、IT関連資格に関する読者の取得状況および今後の取得意向について、紹介していこう。
まず、国家・公的資格について見ると、現在は「基本情報技術者」取得率が全体の45%で最も高く、「ソフトウェア開発技術者」「初級システムアドミニストレータ」がそれに続いている(図6)。今後取得したい資格では、「テクニカルエンジニア:ネットワーク」「同:データベース」の人気が高いようだ。
図6 IT関連資格取得状況/取得意向:国家・公的資格(N=392)。TEはテクニカルエンジニアのこと |
続いてベンダ資格では、現在のところ「オラクルマスター」および「マイクロソフト認定技術者(MCP)」の取得率が高く、今後はそれらに加えて「サン・マイクロシステムズ技術者認定資格」「シスコ技術者認定」の取得意向も上がっている(図7)。
図7 IT関連資格取得状況/取得意向:ベンダ資格(N=392) |
最後に、そのほかの民間資格を見ると、現在はオブジェクト指向分析/設計に対応した「UML技術者認定」の取得率が16%でトップとなった(図8)。今後も「UML技術者認定」および「XMLマスター」の取得意向はベンダ資格に劣らず高くなっており、ベンダニュートラル系資格への注目度も高まりそうだ。
図8 IT関連資格取得状況/取得意向:そのほかの資格(N=392) |
調査概要
調査概要 | |
調査方法
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Engineer Life フォーラムからリンクした Webアンケート |
調査期間
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2002年7月8日〜8月7日 |
有効回答数
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392件 |
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