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採用の舞台裏から見える転職事情

第3回 「見える化」してほしい採用プロセス

山本直治(キャリアコンサルタント)
2006/11/8

転職を考えるITエンジニアは、つい書類選考や面接をどうすれば突破できるかに目が向かいがちだ。そんなとき、転職者を募集する企業の舞台裏では、どんなことが起きているのだろうか。まずは己の敵を知れということで、キャリアコンサルタントが求人企業の裏事情を紹介する。転職する際の参考にしていただきたい。

 宅配便で送った小包がいまどこを動いているかは、Web上で確認ができるようになりました。

 しかしそんな時代になっても、就職・転職における採用選考プロセスは、まだまだブラックボックスの中にあります。多くのIT企業がCRMやSCMの重要性を叫んでいるにもかかわらずです。今回は、採用選考のプロセスで転職希望者が持つであろう疑問や不満について話してみたいと思います。

選考が遅い

 書類選考に出してから結果が出るまでに最低1週間、さらに面接が終わって結果が出るのにも必ず1週間以上かかるという企業があります。選考部門が多忙だから、あるいは決裁範囲が広く時間がかかるためかもしれません。とはいえ、転職希望者の人生にかかわる話に1週間も2週間もかけて何をやっているのだろうか、という疑問を感じることも少なくありません。慎重に検討した結果といえば聞こえはいいですが、時間がたつほど面接の印象は薄れるはずです。そんな長い時間をかけて、本当に検討してくれているのだろうかと思うわけです。

ほかの応募者とのコンペ(競争)

 選考(特に最終面接後)に時間がかかる場合は、採用枠を超える複数の候補者で席を争っているため、ということが少なくありません。企業としてはほかの応募者の動向(辞退されるかどうか)も見ながら、あなたに対してどう連絡をしようか考えるため、おのずと決定が遅くなるのです。

 逆にあなたがある企業からもらった内定の許諾の可否の回答を渋ることで、転職希望者も加害者になる場合もあるかもしれません。

 とはいっても、採用はほかの候補者との競争であるのは仕方がないとして、理由を明らかにされず待たされるのは、あまり気分が良くないものですよね。

 「あなたは次点です。ほかの人の状況待ちです」と伝えることが相手に失礼かどうかという問題はありますが、絶対評価か相対評価かの違いであり、多くの人は状況や理由を聞きたいと思うのではないかと私は考えています(ちなみに、私が新卒で入った国家公務員の採用面接では、採用の各ステップである程度そういう「あなたの採用可能性」「採用人数に対するあなたの相対位置」を本人に伝える慣行があります。脈がないと思えばその時点で別の手も打てるので、私はその方が親切だと思うのですが……。

 採用選考中にあらかじめコンペティター(競争相手)の存在を応募者(転職希望者)に告知しておけば、最終的にそれが理由で不採用となっても、「貴殿の人物、経験、スキルであれば十分採用可能性がありましたが、同時期に能力の拮抗する複数の方の応募があり、最適な方を選考した結果、このたびはご縁がなく、貴意には添えない結果となりました」といってもらった方が、応募者としても救われるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

選考が早まるケースは

 本当に人が足りなくて困っている急募ポジションや、選考期間が長いことで辞退が続いてしまっているような企業は、選考期間を短縮することもあります。

 しかし、ある候補者が応募した後に、予告なく従来の選考プロセスを短縮してくることもあり(3回の面接予定が、初回面接後にいきなり内定となるなど)、これをされるとほかの応募企業の選考と時間が重なることもあり、転職希望者が困ることもあります。

 選考で予想外に待たされるのも予告なく早まるのも、内定を出すタイミングを企業側が全面的にコントロールしていることに変わりはありません。それでいて「内定が出たらすぐ決断しろ」というのでは、応募者側をあまりにも不均衡な立場に置くことになります。特に内定が早まった場合は、私は企業側に回答期限をある程度猶予してもらうように努めています。

奈落の底へ

 当初「面接の結果、内定を出す方向で選考を進めている」と伝えられていたのに、その後一転してよく分からない理由で不採用にひっくり返されてしまい、応募者に申し訳ないことをしたことがあります。

 おそらくは、魅力的な人材が応募してきたからといったところなのでしょうが、発言には責任を持ってほしいと思います。これにこりた私は、その連絡をしてきた会社が本人の第1志望であったとしても、ほかの応募先の辞退は極力先送りしてもらうようにお願いしています。

 求人企業としては「その応募者への失礼は1回限り」ぐらいに考えているのかもしれませんが、応募者の選考プロセスで不愉快な経験があると、以後キャリアコンサルタントはその企業を敬遠し、要注意企業として対応するか、候補者に転職の候補先企業として提案しなくなることもあるのです。心配な方は、応募する前にキャリアコンサルタントに、「いわくつきの選考事例」があったかどうかを聞いてみるのもいいかもしれません。

理想の採用プロセスとは

 これはあくまで傾向であって、例外があることは申し添えるものの、

「採用(面接の内容・雰囲気・採用選考の速さなど)において印象の良い会社は、職場環境もよい会社が多い」

ということはいえるのではないでしょうか。印象が良ければ、会社に好印象を持った優秀な人材を確保しやすいので、会社のレベル・社内環境も上がるという好循環が起きると考えられるためです。

 世に一流といわれる会社でも、面接態度に問題があったり、選考でかなり長く待たせるなどすると、応募者から悪い印象を持たれるようになることも少なくありません。

 キャリアコンサルタントは、こうした企業の採用プロセスに関する情報提供を、バイアスがかからない程度で転職希望者に積極的に行っているはずです。そうした情報を参考にして、応募先、入社先を決めていただければ幸いです。

筆者プロフィール
山本直治
労働市場の限界と格闘しながらITエンジニアのキャリア形成をサポートする公務員出身の異色キャリアコンサルタント。 現在はロード・インターナショナルで活躍中。



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