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第65回 まさかうちの会社が……倒産完全対策マニュアル

Tech総研
2009/3/4

第64回1 2次のページ

経営が安定しているように見える会社でも、倒産する可能性はある。2008年度に倒産した上場企業のうち、60%が黒字企業だったという。不況のいまだからこそ知っておきたい倒産対策マニュアル。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)

  「大きい」「有名」「社歴が長い」からといって安心はできない

 「大きい、有名、社歴が長い企業は倒産しないというのは錯覚。企業の倒産に関して、この10年間で過去の経験則は通用しなくなった」

 こう語るのは信用調査会社、東京商工リサーチ 情報出版本部 情報部 統括部長の友田信男氏。「業績が伸びている会社はいい会社とよくいわれるが、その考えも捨てた方がいい。2008年度33の上場企業が倒産しましたが、その60%が黒字企業でした。つまり業績好調だと思われていた会社だったのです」

東京商工リサーチ
情報出版本部 情報部
統括部長
友田信男氏

プロフィール
1955年10月生まれ。1980年東京商工リサーチ入社。福岡支社情報部長、北九州支店長、本社情報部長を経て1996年より現職。企業共済協会「企業倒産調査年報」検討会委員。

 2008年末にも、世界的な企業が破たんするといううわさが駆け巡ったという。大企業だから、ブランドが浸透しているから、黒字だからといって安心できないというわけだ。

 ここで、「倒産」という言葉について整理しておこう。「倒産」とは、財産を使い果たして資金繰りができず、事業の継続が困難になる、経営が破たんしている状況を表す。

 図1のように、倒産処理の手続きには種類がある。まず裁判所の関与の下で手続きを進める法的整理、裁判所が関与することなく債権者と債務者の話し合いにより手続きを進める私的整理とに分けられる。

 法的整理はさらに清算型と再建型とに分けられる。一般的に「倒産」というと、会社そのものがつぶれてなくなってしまうイメージがあるが、そうとは限らない。再建の見込みのある企業の場合は、民事再生手続きや会社更生手続きを利用し、企業の維持、再生を目指すというわけだ。倒産に種類があることを知っておくことは重要だ。万一、倒産に巻き込まれた際のリスク軽減に役立つからだ。

図1 倒産処理における手続きの種類

  倒産に巻き込まれてしまった場合の対策

 エンジニアから見て、会社倒産にまつわるリスクにはどんなものがあるのだろうか。またそれを軽減するにはどんな方策があるのか。秋田社会保険労務士事務所 代表 秋田繁樹社会保険労務士、牛島総合法律事務所 影島広泰弁護士、リクルート リクナビNEXT編集長 黒田真行氏に聞いた。

秋田社会保険労務士事務所
代表
秋田繁樹氏

プロフィール
第一生命保険相互会社に入社。その後、ネットワンシステムズを経てミツイワに入社。厚生年金基金運営管理システムや健康保険組合向けシステムの提案販売に従事。2004年独立し開業

Q1.出勤したら、会社の扉に「本日をもって倒産しました」という内容の張り紙が。経営陣に話を聞こうにも連絡が取れない。こんなとき、誰に相談すればいいの?

A.勤務先の所在地を管轄する労働基準監督署に相談する。

 「まずは勤務先の所在地を管轄する労働基準監督署に行きましょう。労働基準監督署とはその名のとおり、労働基準法をはじめとする所管する法律(労働安全衛生法、労災保険法)などに基づき、解雇や賃金不払いなどの労働条件および安全・衛生に関する労働者からの相談対応、また労働者災害補償保険(労災保険)の給付などの事業を行っています。監督署には管轄があります。冒頭で述べたとおり、必ず勤務先の所在地を管轄している監督署を訪ねること。倒産してからではなく、危ないと感じた時点で相談に行っても早すぎることはないかもしれません」(秋田社労士)

Q2.会社が倒産して、経営陣に連絡が取れない。未払い賃金はもらえるの?

A.倒産したからといって、会社が賃金を払う義務がなくなるわけではない。

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 「倒産しても会社は賃金を支払う義務がありますが、残された資産が乏しく、払いたくても払えない状況になることも多いのが実情です。そんな際の救済策が未払い賃金の立替制度です。この事業は労働者健康福祉機構(賃金援護部立替払相談室)が行っています。未払い賃金の範囲には、定期賃金、退職金、一時金(賞与・ボーナス)、休業手当、割増賃金、年次有給休暇の賃金などが含まれます。労働者健康福祉機構を直接訪ねてもいいのですが、まずはQ1で紹介した労働基準監督署で未払い賃金についての相談をしてみるとよいでしょう。実は監督署で未払い賃金立替払いの手続きも受け付けているからです。しかも勤務先が倒産したかどうか、また未払い賃金があるかどうかについては、管財人の認定もしくは監督署の確認、証明が必要となります。監督署では倒産時だけではなく、会社が存続していて給与の遅延がある場合も相談できます」(秋田社労士)

Q3.離職票をもらえなくても、失業保険はもらえるの?

A.失業保険に関しては、ハローワークで相談する。

 「離職票がなくても、働いていたという証明ができればもらえます。例えば経営者が逃亡してしまい離職票がもらえない場合もあるでしょう。そんな場合でも、雇用保険を支払っていたという事実が証明されれば失業保険はもらえます。まずはハローワークに相談に行きましょう。また社会保険については、最寄りの社会保険事務所に相談に行けばよいでしょう」(秋田社労士)

Q4.所属部署が他社へ事業譲渡。勤務条件がいまより悪くなると告げられた。それを聞いてから辞めると自己都合退職になるの?

A.自己都合退職になる可能性もあり。まずは労働基準監督署に相談する。

 「不況が続くと、会社がつぶれるまでには至らなくても、事業譲渡やM&Aなどに直面するケースが増えてくると思われます。このような場合、労働条件が継承される可能性は少ないでしょう。条件が悪すぎるからといって退職すると、自己都合退職になる可能性があります。そうすると失業保険をもらえるまでに3カ月間の待機期間が発生するなど、不利益になることも。まずは労働基準監督署内の総合労働相談コーナーに相談することをお勧めします」(秋田社労士)

牛島総合法律事務所
弁護士
影島広泰氏

プロフィール
2003年弁護士登録、牛島総合法律事務所に入所。ITシステムの開発に関する案件や、エンターテインメント関係の知的財産権にかかわる案件を数多く担当。自ら破産管財人を務めることも多い。

Q5.客先での開発プロジェクトに携わっている最中に勤務先が倒産、翌日からどうすればいいの?

A.倒産しただけでは雇用契約はなくならないので、客先には行かなければいけない。破産管財人あるいは勤務先の指示に従う。

 「倒産したからといって、すぐに勤務先との雇用関係がなくなるわけではありません。解雇されたり、退職したりしない限り、勤務先が倒産しても出社する義務があるということです。他方、開発プロジェクトに関する会社間の契約が倒産でどうなるかというと、契約の法的な類型(請負か準委任かなど)や倒産手続きの種類(破産か民事再生かなど)によってさまざまで、倒産したからといって必ず契約が終了してしまうわけではありません。開発プロジェクトの契約の状況がどうなっているかを従業員が直接知るのは難しいでしょうから、破産管財人あるいは勤務先の指示に従うことになるでしょう。結局、解雇されたり退職したりしない限り、破産管財人あるいは勤務先から客先に行くように指示されれば、それまでどおり客先で仕事に携わることになります」(影島弁護士)

Q6.ある開発中の技術に関し、勤務先と秘密保持契約を結んでいる。勤務先が倒産してもこの秘密保持契約は有効?

A.秘密保持契約の有効性に影響はない。

 「勤務先が倒産しただけでは、契約の有効性に影響はありません。冒頭でも紹介したとおり、倒産にはいろいろな種類があります。いわゆる再建型の法的手続きで会社が存続することになれば、会社との秘密保持契約の効力は原則としてそのままということになるでしょう。また、清算型でも再建型でも、ある事業がほかの会社に売却されることがよくありますが、その場合には売却先の会社との間で秘密保持契約が存続することがあります。ここで注意していただきたいのは、会社の営業秘密に当たる技術やノウハウが記載された工程図や設計図などをコピーするなどして持ち出し、転職先などで利用することは、不正競争防止法違反だということです。発覚した場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金という刑事罰が科せられる可能性があります。秘密を漏えいするような行為は絶対に避けましょう」(影島弁護士)

Q7.入社時の誓約書に、「退職から1年過ぎないと競合他社への転職はできない」と記載されていた。勤務先が倒産し、転職先を探さなければならないときでもそれは有効?

A.必ずしも有効ではない。

 「絶対有効かというとそうではありません。退職後の競業避止義務の有効性についてはさまざまな議論があります。憲法には『職業選択の自由』という基本的人権が規定されており、これが大きく作用する可能性があるからです。しかしこれも勤務先での役職や職務などによって変わってくる可能性があります。例えば役員として多額の報酬をもらっていた人と、一般の従業員では、結論が変わってくる可能性があります。不安な場合は一度、弁護士に相談してみるとよいでしょう」(影島弁護士)

Q8.経営者の了解を取り付け、倒産した勤務先の技術者仲間で新しいベンチャーを立ち上げることにした。その際に法的な面で気を付けることは?

A.法律的にはさまざまな難しいポイントがあるので、必ず弁護士に相談を。

 「倒産した勤務先の技術者同士で起業を考えることもあるでしょう。その場合、気を付けなければならないポイントがたくさんあります。例えば、先ほども述べたように、倒産した勤務先のノウハウや技術を使用すると秘密保持契約違反で損害賠償請求を受けたり、不正競争防止法違反で損害賠償責任や刑事責任を問われたりする可能性があります。また、仮に経営者から『そのノウハウや技術は持ち出してもよい』との約束を取り付けたとしても、後に破産管財人からそれが否認されて返還を要求されたりすることもあり得ます。そのほかにも、例えば会社の商号をそのまま使うと、倒産した会社の負債を負わされてしまう可能性があります。このように、倒産をきっかけに勤務先の仲間で集まって新しく会社を立ち上げる場合には、いろいろ難しいポイントが多いので、弁護士に相談するべきでしょう」(影島弁護士)

Q9.自分で企画し、開発したパッケージソフト。勤務先がつぶれたいま、その権利は誰のもの?

A.著作権は勤務先の会社にある。

 「自分で企画、開発したとしても、会社の仕事として企画、開発したものであれば、通常は職務著作として、会社が著作者となり会社が著作権を有します。会社が倒産しても、会社の著作権がなくなってしまうことは基本的にありません。ただし、会社が破産した場合、破産管財人が譲渡・換価しなかった著作権は、裁判所での破産手続きが終結すれば消滅してしまいます。価値のある著作権であれば通常は管財人が譲渡・換価するでしょうから、倒産したからといって、従業員に『棚ぼた』があることはほとんどない、と考えておくのが無難でしょう」(影島弁護士)

リクルート
リクナビNEXT編集長
黒田真行氏

プロフィール
リクルート入社以来、求人情報誌づくりに20年携わる。2006年「リクナビNEXT」編集長に就任。Tech総研編集長も兼任

Q10.倒産により転職活動を余儀なくされている。「倒産」という退職理由は不利?

A.前勤務先を退職した理由は、採用の合否には本来関係のないもの。志望動機や実績をきちんと伝えることが最も大事。

 「採用担当者の合否判断基準は、その人が仕事で成果を生み出せる技術やスキルを持っているか、自社の社風に合うか、人間関係を円滑に築けるかなどという点。そこで高評価を得るには、志望動機や職務経歴をきちんと伝えることが重要です。退職理由は端的に伝えられればそれでよい。それより、なぜこの会社を選んだのか、この会社で何ができるのか、将来どんなことに携わりたいのかをしっかり伝えること。前職の会社が倒産したことで心理的に傷つくのは当然ですが、それを引きずることなく堂々と胸を張りましょう。姿勢1つで、採用担当者の印象も変わるからです。また、職務経歴の欄でわざわざ『倒産』という言葉を使うのは避けた方がいいかもしれません。事業継続が困難に陥った、業績が悪化し事業撤退した、民事再生を申請した、などほかの表現もありますから。もしかすると倒産に至った理由を聞かれる場合があるかもしれませんが、その場合も前勤務先の愚痴に聞こえないようにすること。経営戦略の不具合など、ポイントを端的に語る程度でいいのではないでしょうか」(黒田リクナビNEXT編集長)

倒産を見抜くチェックポイント  

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