Tech総研
2010/7/9
同じエンジニアでも、業界・業種によって年収に差が出てくる。Tech総研の調査から、異業種転職の可能性を探る。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載) |
日本経済は景気回復に向かっているが、その足取りは業種や企業によってバラツキがある。昨年度は世界不況の影響で手取り年収が減った人が多いが、今年度はどうなるだろうか。エンジニア3000人の業種別平均年収を調査した、その“驚くべき”結果は──。
やはり年収が高いのは 金融・保険、サービス業系 |
今回の調査対象はエンジニア3000人。システム開発、システム運用・監視、コンサルタントなどのIT系職種(以下、IT系)と、機械設計、生産技術、品質管理、素材関連などの機械・電気・化学系職種(以下、機械・電気・化学系)に大きく分かれる。勤務先企業の規模は100人未満(26%)、100〜500人未満(24.3%)、1000〜5000人未満(20.6%)が多い。年齢は22〜35歳、平均年齢は30.75歳となっている。
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勤務先企業の業種で最も多いのが「ソフトウェア・情報処理系」で、41.4%を占める。通信、インターネット関連などを含めるとIT関連業種は51%と過半数を超える。続いて多いのが製造業系で39.1%。商社、流通、専門コンサルタント、マスコミ、金融・保険などのサービス業は合計しても7.8%と少数だ。ところが、業種別の平均年収をランキングしてみると、上位に並ぶのは、「1位、金融・保険系、598万円」を筆頭に、「2位、専門コンサルタント系、559万円」「4位、商社系(総合商社・素材・医薬品など)、551万円」「7位、電力・ガス・水道、513万円」「8位、団体・連合会・官公庁、505万円」など、ほとんどがIT関連業以外のサービス業系業種なのである(表1)。
製造業では、総合電機メーカー556万円が3位につけているが、あとは5位に化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカーが、9位にコンピュータ・通信機器・OA機器メーカー、10位に医療機器メーカーが顔を出すにすぎない。調査対象者の最も多い、ソフトウェア・情報処理系はベスト10のはるか下、25位と下位に沈み、その平均年収額443万円は、トップの金融・保険とは155万円もの開きがある。
これはかなり「痛い」結果ではあるまいか。この調査は年収が数千万円に達する金融ディーラーと、ソフトハウスに勤める一介のプログラマの比較ではない。金融・保険業界に勤めている人も、社内情報システムなどを担当するエンジニアなのだ。同じエンジニア同士でも、勤めている会社の業種によってこれほど年収の開きがある。当たり前といえば当たり前とはいうものの、こうした現実を突き付けられて、「技術者としては同じようなレベルの仕事をしているのに」と悔しくなる人が多いのではないかと思われる。
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“金高造低”“造高情低”の 構造は変わらないのか |
技術系であれ事務系であれ、一般的に金融・保険業界は製造業よりも給与が高いことは、新卒で就職活動を経験してきた人であれば知っているだろう。同じ製造業でも総合電機と銘打つ大企業と、その子会社や、下請け・サプライヤーに甘んじる中小企業では、年収レベルで歴然とした差がある。
ITやインターネット関連産業は時代の寵児(ちょうじ)とはいうものの、業界の歴史が浅く、明治時代から地道に資本を蓄積してきた金融業界とは、産業基盤が大きく異なる。金融ビッグバン以降の業界再編はドラスティックだが、金融業界の高給与体質はそれほど簡単には崩れないのだ。片やIT業界は、資本主義の歴史で見れば勃興期の産業。株式を上場する社員数1000人以上の企業はまれで、社員十数人規模の零細ベンチャーが多数を占める。さらに社員の平均年齢が若いということもあって、平均年収をとってみると金融や製造業の大手には歯が立たないのが現実だ。
もちろん、こうした平均年収から見た日本の産業構造が、これからも同じままであるとはいえない。いずれは、“金高造低”(金融が製造業より平均年収が高い)、“造高情低”(製造業が情報産業より高い)の順位が逆転する日が来るかもしれない。ただ、果たしてそれはいつのことだろうか。
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