Tech総研
2010/8/9
「地方の時代」とずいぶん前から叫ばれているが、産業分布の構造的な偏りや、中央/地方の賃金格差の問題はなかなか解消されない。今回は、全国4300人のエンジニアの年収を調べ、その「格差」の現状と、それでもなお地方で働く魅力について分析した。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載) |
厚労省全国調査では ダントツトップは東京都 |
主要産業に雇用される労働者の賃金については、厚生労働省が毎年「賃金構造基本統計調査」を全国で行っている。基本的には月額給与をまとめたものだが、平成21年(2009年)の調査結果では、全産業にわたる一般労働者(短時間労働者を除く)の平均賃金は29万4500円で、これは1996年以降で最も低く、4年連続の減少。また、調査が現行方式になった1976年以降で最大の減少率となった。リーマンショックによる景気悪化が労働者の賃金に影響を与えた、といってよいだろう。
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産業別では最も賃金が高いのは、男性が金融業・保険業(46万8100円)で、最も低い運輸業・郵便業(26万1700円)に比べると、約1.8倍の開きがある。雇用形態別には、男性の場合、正社員は33万7400円であるのに対して、非正規雇用の社員は22万2000円で、非正規は正社員の66%程度の賃金となっている。昨今、さまざまな角度から議論されている非正規雇用問題だが、正規/非正規の格差は一向に埋まらないのが現状だ。
厚労省の調査では、都道府県別の集計も出している。そこから製造業・男子に絞って、ベスト10とワースト10を抜き出したのが表1(製造業・男子に絞ったのは、後で見るTech総研調査の回答者属性との間で、整合性を可能な限りもたせるためである)。それによれば、トップは東京都の40万8500円。以下約6万円差と大きく水があいて、大阪、神奈川、愛知、京都、三重などが続く。ワーストは、全国最低が青森の23万2300円。沖縄、秋田、鳥取、島根、宮崎なども月収25万円以下と低い。これは製造業の中でも大企業の事業所の分布が関東、関西、東海地区に集中し、東北、沖縄、中国、四国、九州に少ない現状を裏付ける数字でもある。
◆ ベスト10
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◆ ワースト10
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(厚労省平成21年賃金構造基本統計調査より/製造業男子:月額給与)
関東、関西、中部地区が 依然高い傾向 |
こうした公的な全国調査の結果を念頭に置いて、Tech総研が独自に行った調査を見ていただきたい。Tech総研の場合は、サンプル数が4300件。電気・機械・化学(EMC系)とIT系エンジニアに絞った調査なので、読者にとってより身近な数字になっているはずだ。また、こちらは月収ではなく年収ベースで回答を得ている。
それによれば、年収額のトップは徳島の555万5000円。続いて、栃木が入り、東京は3位。以下、神奈川、三重、兵庫、千葉などが続く。先の厚労省調査では19位の徳島がトップになっているのは、統計上のサンプルの偏りがあるのかもしれない(徳島のサンプル数は14件で東京1241件の1.1%ほどしかない)。そうした一部の突出現象を無視すれば、やはり関東、関西、中部地区が高い傾向は読み取れる。
ワーストは、秋田の318万円が最も低く、大分、青森、山口、山形、新潟、沖縄と続いている。栃木の528万6000円と比べても、秋田、大分、青森は60%ほどしか年収を得ていないことになる。ちなみに調査対象の全職種平均の年収は459万9000円だった。
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IT系では福井、奈良、香川、鳥取が 上位にランク |
電気・機械・化学(EMC系)などのいわゆるハード系職種と、IT系との比較も見ておこう。EMC系が高いのは、栃木、三重、北海道、愛媛、岐阜、神奈川、東京など。北海道はやや意外ではあるが、関東、関西地区が東北、九州、中国地区を上回っているというのが全体の傾向だ。
IT系については、徳島、福井、奈良、香川が善戦している。近年、ソフトウェア産業振興に力を入れる鳥取も上位にランクした。東京、神奈川も上位に入るが、IT・ソフトウェアの場合は、事業所の全国展開が進み、必ずしも年収レベルでは首都圏の独り勝ちとはいえない、ということが分かる。装置や工場設備を前提としないIT系の仕事は、全国どこにいてもできるし、それなりの年収を得ることができるということかもしれない。
「高賃金=高満足度」とは必ずしもいえない |
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