Tech総研
2010/9/14
Tech総研がエンジニア1000人を対象に、2010年夏のボーナス支給額に関する調査を実施した。その概要を紹介する。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載) |
全体平均額は59.2万円。 前年比で6.2%の増加 |
日本経団連が7月に発表した大手企業の今夏のボーナスは、前年比0.55%増の75万7638円で、3年ぶりに前年度比増に転じた。経団連では「景気の底打ち感はあるものの、楽観視できる状況ではない」としている。その一方で、大阪信用金庫による取引先の中小企業約1000社を対象にした調査では、「夏のボーナスを支給しない」と回答した企業の割合が前年比5.7ポイント増の49%で、過去最悪になったという。平均支給額も前年より1541円安い25万3559円で、同じく過去最低になった。大手企業との著しい格差が見て取れる。
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Tech総研のアンケート調査は、ソフト・通信ネットワークなどのIT系(以下IT系)、電気・電子・機械・素材などのハード系(以下ハード系)のエンジニアに絞ったものだが、勤務する企業規模は1000人以上が57.9%、1000人未満が42.1%で、大企業、中小企業がほぼ半々という構成だ。夏のボーナス支給額は全体平均で59.2万円となっており、経団連調査よりは低いものの、大阪信金調査よりはかなり高めに出ている。同じ回答群に聞いた2009年度夏のボーナスは全体平均が55.7万円だから、前年度に比べると、6.2%の増加となっており、これは経団連調査を大きく上回るものである。
研究・開発など上流工程にかかわる エンジニアのボーナス額が多い |
エンジニアの場合、給与・ボーナスは職種によって一定の差がある。米国のように職種別賃金が明確になっているわけではないものの、例えばIT系の場合、システム開発のより上流工程にタッチする人や企業──例えば、コンサルタントファームのコンサルタントや、大手SIer(システムインテグレータ)の上級SE──の方が、2次請け・3次請けのソフトハウスのプログラマよりは一般的に賃金が高い。こうした職種別賃金構造という観点から職種別・専門技術別に夏のボーナスを見ると、表1のようになる。
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最も高いのはIT系の「研究、特許、テクニカルマーケティング、品質管理ほか」の73.8万円。以下「素材、半導体素材、化成品関連」「通信インフラ設計・構築(キャリア・ISP系)」「コンサルタント、アナリスト、プリセールス」「ハード系の制御設計」「システム開発(Web・オープン系)」などが続く。
支給額が低い方から見ていくと、「運用、監視、テクニカルサポート、保守」の50.2万円が最低で、「サービスエンジニア」「セールスエンジニア、FAE」「システム開発(マイコン・ファームウェア・制御系)」「システム開発(汎用機系)」なども順位は下位に甘んじている。「運用・監視」の50.2万円と「研究、特許」の73.8万円では23.6万円の差があり、決して小さな額ではない。簡単にいってしまえば、やはり、研究・開発などのより上流工程にかかわるエンジニアの方が、販売・サポートなどの下流工程のエンジニアに比べるとボーナス額は大きいということがいえそうだ。
職種をIT系とハード系でざっくり分けてみると、ソフト系が58.9万円、ハード系が59.5万円と、差はわずかながらもハード系がIT系を上回っている。全体的には前年度に比べボーナスは増えているが、中でも増加幅が大きい職種は「素材、半導体素材、化成品関連」9.9%、「光学技術」9.0%、「ハード系の研究・特許、テクニカルマーケティングほか」7.0%など、ハード系に集中している。これは化学・材料、半導体、エレクトロニクスなどの製造業における景気回復の足取りを象徴しているのかもしれない。一方で、「パッケージソフト・ミドルウェア開発」「セールスエンジニア、FAE」など前年度よりもボーナスが減っている職種もいくつかある。
年齢・年代によっても当然ボーナス額は差がついてくるが、全体平均だと30代前半と20代後半の差は10.7万円ほど。この差が顕著なのは「パッケージソフト・ミドルウェア開発」26.3万円、「素材、半導体素材、化成品関連」25.3万円、「光学技術」21.4万円などだ。これらは年功序列型が強い企業に多い職種ともいえるし、経験の積み重ねがモノをいう職種ともいえる。
大手SIer、コンサル、化学系などが健闘。 構造的に低い派遣業界 |
勤務する企業の業種別で見ると、もともと構造的に足元のしっかりとした業界や景気回復の波に乗っている業界と、そうでない業界の違いがよりクリアになる。
職種別と同様に2010年度のランキングをとってみると、表2のようになる。ベスト5は「大手SIer/NIer(ネットワークインテグレータ)、コンサルファーム、ベンダ」86.8万円、「化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー」80.5万円、「金融・保険系」79.1万円、「外資系SIer/NIer、コンサルファーム」68.8万円、「鉄鋼・金属メーカー」65.9万円だ。外資系SIerを国内系が上回るのは珍しい現象。いずれにしてもIT業界ではより上流工程にかかわる企業が強いといえる。そのほかの業界では化学・素材系の好調ぶりが印象に残る。
ワースト5を拾ってみると「技術系人材派遣企業」34.5万円、「専門コンサル系」35万円、「住宅・建材・エクステリアメーカー」37.8万円、「食料品メーカー」45.4万円、「繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー」45.8万円などとなった。
前年度に比べて、ボーナスの伸び率が高いのは「繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー」15.5%、「大手SIer/NIer、コンサルファーム、ベンダ」11.5%、「医療機器メーカー」10.1%など。これらの業界は、回答者の実感値としてもボーナスが「増えた」とする回答率が高くなっている。
逆に前年度よりもボーナスが減っているのは、「専門コンサル系」「商社系電気・電子・機械系」「大手SIer/NIer、コンサルファーム、ベンダの子会社、関連会社」「外資系SIer/NIer、コンサルファーム」などだ。大手SIer/NIerでは伸びているのに、その子会社・関連会社ではボーナスが減っているというのは興味深い現象だ。もしかすると利益が親会社に吸い取られるという状況が発生しているのかもしれない。
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消極的ながらも「満足している」が55% |
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