第1回 「社員が納得しない評価制度」はもうやめた
唐沢正和
2008/9/9
ITエンジニアが能力を発揮できる人事制度とは。どのような考え方に基づき、どのように策定されるのか。サイボウズ 取締役副社長兼人事本部長 山田理氏に聞いた。 |
優秀なITエンジニアを引き付け、能力を発揮させられる人事制度、教育制度とはどのようなものか。どんな人事戦略に基づき、どのように策定されるものなのだろうか。
本記事ではその答えを探るため、創業から11年と若い会社でありながら「最長6年の育児・介護休業制度」「成果重視と年功重視の選択型人事制度」などのユニークな人事制度を打ち出しているサイボウズにインタビュー。全3回にわたって、サイボウズの人材戦略についての基本的な考え方、具体的な施策立ち上げの経緯、その成果、今後の取り組みなどを紹介する。
■人材戦略の基本は「社員の増加と成長」「その継続」
今年(2008年)で創業12年目を迎えたサイボウズ。グループウェア事業を主力ビジネスとして成長を続ける一方で、ベンチャー企業からの脱皮を目指し、新たな制度策定に意欲的に取り組んでいる。
サイボウズ 取締役副社長兼人事本部長 山田理氏 |
サイボウズ 取締役副社長兼人事本部長 山田理氏は、サイボウズの基本的な人材戦略を「多くの社員が集まって、1人1人が成長しながら、長く働ける環境を提供すること」と語る。
その背景となる考え方について、山田氏は「もともと、会社とは何らかの目的を達成するための人の集まり」としたうえで「サイボウズであれば、グループウェアをより簡単にして、より安価に提供することで、ITを大衆化していきたいと思う人々が集まっている。この目的を達成し、会社の価値を高めていくためには、『人が増える』『個人が成長する』という2つの方向性があり、それが長く続いていくことが重要だと考えている。これを実現していく具体的な施策が、人事制度や教育制度だ」とする。
例えば、3人の社員が4人に増えたら、会社は4人分の価値を生むことができるようになる。さらに、4人それぞれが成長すれば、プラスアルファの価値が期待できる。このサイクルが長く続けば、時間軸の積み重ねによっても価値は高まる。「短期間で上場して大きな利益を上げたが10年で倒産してしまった会社と、その半分の利益で20年続いている会社を比べると、生み出した利益は一緒でも、長く続いている会社の方が評価できる」との考えだ。
■新卒採用に力を入れ、サイボウズのDNAを浸透させる
この人材戦略をベースに、サイボウズでは、2004年から積極的に新卒採用を進めており、現在では、全社員のうち入社5年以内の新卒社員が約半数を占めているという。
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ベンチャー企業の採用といえば、即戦力に期待できる中途が中心になると思われることが多い。もちろんサイボウズも、創業時にはスピードを優先し、中途で即戦力になる人を多く採用した。「特に上場前は、中途採用を中心に、約1年で人材を一気に倍増させた」と山田氏は振り返る。
しかし数年がたち、「業績が伸び悩み、株価が下がってくると、退職する人が増えてきた」という。「中途採用の人材はお金だけがモチベーションになりやすく、会社に長く根付きにくい傾向があることが分かった」
それらの経験を生かし、サイボウズは新卒採用に力を入れることを決定した。「長期にわたって会社が成長し続けるためにはどんな人材戦略が必要なのかを考え、多少時間はかかるだろうが新卒を採用して、サイボウズ流の働き方、いわばサイボウズのDNAを浸透させ伝承していこうと考えた」と山田氏は説明する。
納得感のない評価制度、1人歩きする点数……試行錯誤の末に |
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