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サイボウズ、脱ベンチャーへの人材戦略

第3回 長距離走のスピードで働ける環境

唐沢正和
2008/11/19

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技術力を重視するITエンジニアのキャリアパス

 サイボウズが定義する社員の11階層には、それぞれの必要スキルが定められているが、その中に「マネジメントができる」というスキルはない。

 山田氏は「『マネジメント』という言葉を使わず、あえて『役員に一目置かれている』という表現にした。研修プログラムでマネジメントのスキルを学んでも、それだけでは階層は上がらない。優れた技術力を持つITエンジニアであれば、マネジメントのスキルがなくても、役員に一目置かれる、つまり信頼される存在になれるはず」と説明する。マネジメントの道に進まなければ評価が上がらないという企業が多い中、同社では「高い技術力」を「マネジメント能力」と同等に位置付けているのだ。

 ベースとなっているのが「信頼」という考え方である。「高い技術力で信頼を得ることができれば、それを生かして新技術の採用を提案したり、重要な開発プロジェクトを動かしたりできる。ただ、身に付けた技術は自分1人で抱え込むのではなく、研修などで社内に公開し、多くの社員に認めてもらうことが大切」ということだ。

 「一方で、技術力さえあれば信頼されるというわけではない」と山田氏はくぎを刺す。「優秀なビジネスパーソンとして信頼されるためには、基本的なことだがビジネスマナーを守ることも重要。営業、ITエンジニアを問わず、サイボウズが上場企業として顧客から得ている信頼を大事にしながら仕事ができる人材を育成したい」と話す。

 この考えに基づき、まずはサイボウズ社員として活躍するための共通プラットフォーム部分としての教育制度の整備を進め、ITエンジニア向けの技術研修については順次体系化に取り組む方針だ。

1泊2日の合宿研修で全社員とコミュニケーション

 教育制度の整備を進める一方で、サイボウズ独自の研修プログラムとして全社的に取り組んでいるのが1泊2日の合宿研修である。

 これは、新入社員、2年目社員、3年目社員、マネジメント層など、全社員を階層別にグループ分けし、それぞれのグループと社長や役員が合宿形式で行う研修。1カ月に約1回のペースで開催され、全社員が1年に1回は参加できる。任意ではあるが、およそ9割の社員が参加しているということだ。

 研修では、「問題解決メソッド」「モチベーション創造メソッド」として、いま抱えている問題の解決策、仕事に対するモチベーションの高め方などを社長と副社長が直接伝える。開始は2006年の秋で、まずはマネジメント層を対象に行った。「当初は勝手が分からず、あまり効果的な研修にはならなかった」と山田氏は振り返る。しかし、何回か繰り返しながら内容を改善していった結果、現在では「社内でも認められたと感じている」そうだ。

 例えば「問題解決メソッド」では、「問題」を「理想と現実のギャップ」と定義する。「理想があれば問題は必ず出てくるもの。解決のために問題にどう取り組むかが重要」という考え方を浸透させる。これによって、問題というネガティブなものを解決すべき目標に変え、仕事のモチベーションにするというメカニズムを共有できる。

 合宿研修によって、各社員がどんな考えを持って仕事に臨んでいるのかが分かり、社内でのコミュニケーションが取りやすくなったという。大きな成果をあげているようだ。


 全3回にわたって、サイボウズの人材戦略と具体的な取り組みを紹介した。人事制度、教育制度ともに、着実にベンチャーという領域から脱し始めているサイボウズの姿勢は、IT企業にとって大いに参考になることだろう。

 「創業期のように、明日会社がどうなるか分からないという段階は終わり、いまはベンチャー企業から安定企業への狭間にいる状態だ。これからはもっと先を見て、10年、20年、100年と続く企業を意識しながら、長距離走のスピードで働ける人材戦略を考えていく必要がある」と山田氏は語っている。

 今期は「伝承」をテーマに掲げ、この先継続的に増えていくであろう新入社員たちに「サイボウズ流」の考え方を伝えていくため、研修プログラムの体系化に注力し、教育制度の土台づくりを目指す。

 

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