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2012年の注目技術&サービス展望

Webサービス技術の2011年トピックまとめ&2012年予想


エンジニアtype
2012/2/7

めまぐるしく情報が飛び交う昨今のIT業界。そんな激動の時代に遅れを取らないためにも、右往左往してしまう人たちは多いのではないだろうか。「常に業界トレンドに敏感でありたい」と思うあなたのために、IT業界の著名人たちが2012年のITキーワードを大予測。

※本記事は、「エンジニアtype」のコンテンツを一部@IT表記に統一した上で、許可を受けて転載するものです。

 HTML5、ビッグデータ、Facebook、ソーシャルゲーム、PaaS……。

 2011年、IT業界を賑わせたホットワードは、サクッと挙げただけでもこんなにもある。ジャンルによっては、この1年の激変ぶりは、クレイトン・クリステンセンの名著『イノベーションのジレンマ』でいうところの「破壊的イノベーション」に近いものすらあった。果たして、この変化の流れはどんな方向に進んでいくのか。

 そんなインターネットの半歩先の未来を、【Webサービス】【エンタープライズ】【インフラ】の3つに分類し、各領域を代表する識者たちにそれぞれ、2011年の振り返り2012年の注目トピックについて語ってもらった。

【Webサービス編 インデックス】

ロケスタ代表・古川健介氏の予測

「鍵は、リアルタイム時代に適合したサービスが生まれるかどうか」

ロケットスタート 代表取締役社長
古川健介氏

大学在学中に中高生向けコミュニティなどを手掛けるメディアクリップ代表取締役社長などを務める。2007年12月にロケットスタートを設立。2009年9月より、ライフレシピ共有サイト「nanapi」の運用を開始。

【2011年振り返り】新しい“リアルタイム”SNSが人気に

 今年は、スマートフォンが爆発的に普及したことで、『EyeLand』や『ソーシャルランチ』、『Wondershake』などに代表される現在地や人間関係から人とつながるサービスが出てきました。この、“ネットからリアルにつながる”という新しいトレンドは、Facebookなどの従来のSNSとは違った形のSNSとして流行していく気がします。しばらくこの流行が続くのではないでしょうか。

【2011年振り返り】日本発ユニークアプリの海外展開

 今、撮った写真をプリクラっぽく加工して共有できる『DECOPIC』というアプリが、1カ月で100万ダウンロードを達成するなど注目を集めています。台湾や香港などの東アジア地域で急速にダウンロード数が増えており、利用者の80%が海外のようです。

  ほかにも、ファッションアイテムを組み合わせてコーディネートを提案できる『iQON』も、アジア圏で大人気。日本独自の文化は海外に向けての大きな強みなので、アジア進出は今後も増えていくでしょう。

【2012年予測】スマホ課金でマネタイズ

 2012年9月には、スマートフォンの浸透率が過半数を超えると予測されるように、来年の注目は「スマートフォンユーザーが多数いるからこそできるサービス」が流行ると思います。そして、ユーザーがいるからこそ課金モデルが成立するので、【スマホ×課金】の流れは多くなっていくと予想しています。

  ソーシャルゲーム業界ではすでにアプリ内の課金が順調ですが、ゲーム以外の業界でも、アプリ内でのコンテンツ課金などが多くなっていくでしょう。

【2012年予測】有料How to 動画

 来年あたりから、日本でも動画市場の新しい流れがやってくるように感じます。それが、有料Howto動画です。海外ではすでにその兆候があり、Office系ソフトや、Webの専門技術を動画で学ぶ『lynda.com』は、課金ユーザーだけで100万人に上るほど。

  ほかにも料理やメイクなど、動画で学ぶ方が分かりやすいものもニーズが高そうです。実用や学習の分野での有料Howto動画が増えていくでしょう。

日本Androidの会運営委員長・安生真氏の予測

「ITの変革が影響を及ぼす分野は、わたしたちの予想をはるかに超える」
ケイブ プロモーション&マーケティング室開発
安生真氏

専門学校を卒業した後、単身米留学し、現地の大学でコンピュータサイエンスを学ぶ。卒業後、大学でインターンをする傍ら、エンジニアとしてGoogle Desktopなどの開発に携わった。2007年に帰日し、ゲームソフト制作会社のケイブに入社、日本Androidの会理事兼運営委員長も務める。

【2011年振り返り】ソーシャルゲーム市場の拡大

 ソーシャルゲームはいわゆる家庭用ゲームなどの、「長期間作り続けて、作り終わったら終了」という開発体制ではなく、ユーザーの動向などに応じて臨機応変に変化させていく、サービス的な作り方が望まれます。その点から、Webサービス業務からソーシャルゲームへの参入や、ノウハウの共有が進みました。

 また逆に、Webサービスへゲーム要素を追加していくなど、ゲーミフィケーションへの意識も高まりました。さらに、インフラやWeb技術者がソーシャルゲーム関連企業へ転職するケースも非常に増えました。

【2011年振り返り】セキュリティ・個人情報ポリシー

 個人情報の漏えいや議論は以前よりありますが、携帯端末やSNSはより属人的な情報が多く、その取り扱いについての議論が活発になりました。

 現在地情報やゲームプレイ履歴、アプリ利用履歴などの漏えいや収集が明るみになったことにより、セキュリティホールそのものはもちろん、サービス運営側が何を目的にどこまで情報を集めていいのか、ということを再考させられることが多くありました。

【2012年予測】電子書籍市場の拡大

 電子書籍は、利用者のニーズに実情が対応し切れていない状況ではないでしょうか。出版社や書店も変化を迫られている一方、簡単には業界構造を変え難いようです。

 ただ、物質とデータという意味では、使用目的が同じでも使用方法が違い過ぎるので、テープからCDへのリプレースのようなことにはなりません。拡大はし続けるでしょうが、変化はいっぺんには来なさそうです。

【2012年予測】3D on the Web

 ゲームももちろんですが、Google MapsがWebGL対応するなど、非ゲームWebサービスであっても3D対応が注目されています。表現力の向上とブラウザの対応が進んだことにより、3D表現の相性の良いサービスはコスト次第では移行(あるいは両対応)が進みそうです。

 WebGLはブラウザが標準的に対応しているものが多い一方で、3Dプログラミングの基礎ができていないと、やや難しいです。一方でUnityは、ツールが強力で、またマルチプラットフォーム対応なのでスマートフォンアプリなどにもビルド可能ですが、今のところWebGL対応というアナウンスはないため、ブラウザの場合はUnity Web Playerをインストールする必要があります。

ジークラウドCEO・渡部薫氏の予測

「Webの舞台の主役がスマートフォンだということを、あらためて認識する」
ジークラウド株式会社 CEO
渡辺薫氏

1996年7月より2002年9月まで、ウィナ代表取締役兼CEOとして主に携帯電話向け画像認識技術の開発・提供などを手掛ける。以後、ソフトバンクグループ企業の役員、ベンチャー企業の創業社長などを歴任。2010年1月にジークラウドを設立。

【2011年振り返り】PCWebからスマホWebへ

 今年のトレンドとしては、ガラケーからスマートフォンへ、PCからタブレットへ移行するなど、デバイスの世代交代が進みました。それに伴い、Webで体験できることもよりリッチになってきました。この流れを汲んで、Flashがモバイル端末での開発を終了し、新たにHTML5が登場するなど、技術的にも大きな変化が起きました。

 結果として、今までFlashの開発が主流だったWebサイトも、来年以降はよりリッチなインターネット体験を提供できるHTML5での開発が主流になるでしょう。Flashエンジニアは、いよいよ技術転換の必要性に迫られるのでは?

【2011年振り返り】スタートアップベンチャーの勃興

 今年に入り、Web業界を中心にスタートアップベンチャーが数多く登場しました。クラウド技術、ベンチャーキャピタル、コワーキングスペースといった起業しやすい環境が整い始めたことや、ソーシャルサービスが盛り上がったことが大きな要因です。

 このスタートアップブームは、おそらく来年以降も続くと思います。しかし、今からソーシャルアプリを作っても、勝算はほとんどありません。来年狙い目なのは、飲食業でも農業でも何でも構いません。問題は、従来型のビジネスモデルにどれだけWeb技術を入れていけるかでしょう。

【2012年予測】FacebookWeb

 来年は、確実にFacebookを中心としたWebサービスが主流になります。わたしはそれを、「FacebookWeb」と呼んでいます。従来のWebとの違いは、グーグルの検索が機械的な抽出法だったのに対し、Facebookは自分の知り合いという信頼性の高い発信源から情報を得られるという点。

 ユーザーは、自分の知り合いを経由してFacebookのタイムライン上で情報やサービスを知れるため、信頼度と質の高い情報を得やすくなるのです。2012年、Facebookはさらに信頼度の高いプラットフォームとなり、一大情報メディアへと進化していくでしょう。

【2012年予測】教育のソフトウェア化

 わたしが予測する2012年の一番大きなインパクトとしては、あらゆるリアル社会がWebに紐づけられるのではないかということ。例えば、リアル社会で「欲しいな」と思ったものを、自宅に帰ってAmazonで購入するといったことが、あらゆる分野で一般的になっていくと考えられます。

 中でもわたしが注目しているのは、教育業界。教育は2012年、Web化が進みます。従来型の1対Nの平均点教育ではなく、個々の能力に合わせた教育方法にカスタマイズされていくでしょう。スタートアップベンチャーも、教育業界での起業は狙い目かもしれませんね。

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