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ITエンジニア、その独立の軌跡

第1回 起業を夢見る学生時代から独立前夜まで

ナレッジエックス 中越智哉
2006/8/11

この3月に独立したばかりのITエンジニア。彼はなぜ独立を決意したのか。法人を設立するに当たって、具体的にどんな苦労があったのか。独立を果たしたいま、どんな思いでいるのか。それを語ってもらった。

 私は、勤めていた会社を今年の2月に退職し、3月に法人を設立しました。

 この連載では、私が独立を決意するまでの心境や、法人設立にかかわる苦労、独立して活動を始めて感じたことなどを、学生時代から現在に至るまで時系列にお話ししていきたいと思います。

起業家を夢見た学生時代。しかし……

 私が独立したいと考えたのは、この1〜2年のことではありません。思えば学生時代に就職活動をしていたときから、現在のように独立した後のことを想像していました。

 私が学生だった時代は、「ネットバブル」や「ドットコムブーム」という言葉が聞かれるようになる少し前だったように思います。私の大学では、就職活動といえば卒業年次の春くらいに行うのが普通で、夏ともなればほとんどの学生が内定をもらっていました。

 皆、就職活動が一段落して、いよいよ卒業論文の研究に本腰を入れる……そんな時期になっても、私は一切就職活動をしていませんでした。いわゆる「起業ブーム」を目の当たりにしていた私は、「起業家になりたい!」と本気で思っていたのです。

 思いは本気だったのですが、逆にそれ以外は何もありませんでした。もちろん、自己資金などもありませんでした。

 「1円起業」はまだできなかった時代です。小資本では有限会社も株式会社も作れませんでした。書店に行くと「1万円で合資会社を作ろう」という内容の本があったので、これを読んでいた覚えがあります。

 私は当時、野球を題材にしたネットワークゲームを作り、それを事業として起業しようとおぼろげに考えていました。ネットワークゲームなんてもうかるかどうかも分かったものではない、といわれていた時期です。いまにして思えば、着想は決して悪くなかったかもしれないのですが……。

 ある日私は、様子を見かねた研究室の教授や助教授に呼び出されました。特に教授はその年の就職担当教官だったので、ことさら心配してくれたようです。

  そのときも私は同じようなことを繰り返し述べて、とにかく就職活動はしない、起業するといい張りました。ですがそのとき、助教授が私にこういったのです。「本当にそのつもりならば、事業計画書を持ってきなさい」

 そこではたと気が付いたのです。自分には思いだけはあるが、それを形にする力がまだないということに。

「5年後、10年後は何をしていると思いますか?」

 事業計画も立てられない以上、起業は無理だと気付いた私は、とにもかくにも就職しようと考えました。「いまの自分にはとても起業できるような力はない。だからいったん就職して、そこで経験を積もう」と。

 とはいっても、そのときすでに11月。まじめに就職活動をしていれば、もしかしたら大手企業からも内定をもらえたかもしれませんが、その時期から頑張ってもそれは無理です。それに、起業に必要な経験を積むためにはやはりベンチャー企業に就職するのが一番ではないかと思い、ネットで地元のIT系ベンチャー企業の情報を調べるなどしていました。

 そんなとき、雑誌を読んでいてふと目に留まった求人広告がありました。そこには、私のような未熟者にとっても明快なキャッチフレーズが躍っていました。まだ当時商業ベースになっていくかどうかも分からないテクノロジを専業にして事業を展開しているという内容の広告に、私は強く引かれました。しかも自分が非常に興味のある分野です。

 私はさっそくその会社に応募しました。地元の企業への就職を考えていたのですが、その会社は東京です。でも、もうそんなことは関係ありませんでした。年も押し迫った12月になっていました。

 会社からはすぐに返答がきました。「面接するので来てほしい」とのことでした。しかし、ここでまじめな就職活動をサボったツケが回ってきます。

 12月といえば卒業研究のピーク。できの悪い学生だった私は、当たり前のように徹夜をしていました。そんな時期に面接を受ける心の余裕はありません。そこで私は図々しくも「修論発表の終わった後(2月)でもよろしいでしょうか?」と返信しました。幸いにも会社からはOKをもらい、2月に面接のため東京に行きました。

  面接ではいくつか質問を受けたのですが、唯一覚えているのは「5年後、10年後は何をしていると思いますか?」という質問です。私は上記のような経緯で就職することを決意したので、長く会社にいる可能性は少ないと思っていました。面接時にすぐ辞めるようなことをいうのもどうかとは思ったのですが、10年後ならいいかと、「御社でお世話になっているかもしれませんし、独立して1人で仕事をしているかもしれないです」と答えた記憶があります。

いつか来る、その日に備えて

 そんなこんなで、無事に就職することができました。「経験を積んで、起業に必要な力を蓄えよう」と決意して就職したのですから、すぐに辞めようなどとはもちろん考えず、真剣に仕事に取り組みました。その間、心の中ではいつもこんなことを思っていました。

「いつ独立してもいいと思えるように、常に自分を高める努力をする」
「自分がクビになったら会社にとって大きな損失だ、と胸を張っていえる存在に一刻も早くなれるよう努力をする」

 社会人として、ビジネスマンとして、ITエンジニアとして経験を積むのは、お客さまのためでもありますが、自分の中ではいつか訪れるXデーに備えるためという感覚が強くありました。徹夜続きの仕事や、理不尽と思われるような仕事でも頑張って乗り越えられたのは、そういう思いがあったからというのも理由の1つだったと思います。

 時は流れ、いよいよ独立を決意するときがやってきました。

   

今回のインデックス
 ITエンジニア、その独立の軌跡(1) (1ページ)
 ITエンジニア、その独立の軌跡(1) (2ページ)

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