第45回 5歳からのプログラマの選択は
「.NETを究める!」
加山恵美
2007/12/26
■「.NETを究めにいこう」
学生時代にしたことは親の手伝いだけではなかった。XMLやプログラミングに関するWebサイトも作成したし、豊富な知識を生かして雑誌に寄稿することもあった。学生として自由な時間が多かったとはいえ、ITの世界に深くのめり込むことになった。
2000年前後には、富永氏はJavaに興味を持っていた。だがJavaの登場は1995年。「自分よりも先に経験している人がごまんといるだろう」と富永氏は考えていた。そこに運命の出合いがあった。マイクロソフトが.NETを発表したのだ。富永氏は、ベータ版が発表されたときから飛び付いた。
「Javaだと、登場時から経験している人と比べると7年もの差が開いているため、かなわないと思いました。しかし.NETならみんな未経験です。『いまから.NETを始めれば、誰よりも長い経験を持つことができる』と考えたのです」
休暇中のプログラムとしてのアルバイト、Webサイト作り、雑誌への寄稿。これらで得た経験と自信、加えて.NETの登場が決定打となった。「これからは、.NETを究めにいこう」。富永氏は決意した。
まだ学生の身だった富永氏だが、あまりにコンピュータにのめり込んでしまい、卒業は困難な状況だった。結果的に富永氏は、卒業よりも.NETを選んだ。卒業証書がなくても、十分社会でエンジニアとしてやっていけるとの自信があったのだ。
■「これからは.NETですよ」とアピール
経験が先行してしまったが、富永氏はプロになるべく就職先を探すことにした。求人情報サイトから.NETの仕事「のみ」ができる会社を探した。「.NETを究める」という強い熱意を持つ富永氏の行動は徹底していた。
だがまだ.NETは登場したばかり。.NETの仕事のみができる会社となると、大手から選ぶのはまず無理だった。そこでエンジニアの派遣業務を中心とする、創業したばかりの会社に目を付けた。採用面接で富永氏は、応募側でありながら「これからは.NETですよ」と熱く語った。その熱意と経験・スキルが認められたのか、無事採用となった。
就職を決めた当時、富永氏は将来についてこう考えていたそうだ。「20代は、多少苦労してでも多くのプロジェクトをこなし、経験を積むことを優先しよう。30代になったら、腰を据えて働ける会社に就職したい」
入社して最初に配属されたのは、エンジニアが方々から100人ほど集う大規模なプロジェクトだった。もちろん.NET Frameworkをベースとしたシステムだ。富永氏は、まずは開発ツールの作成から仕事を開始した。
転機はすぐに訪れた。プロジェクトのITアーキテクトに成果物のレビューを受けた際、そのセンスの良さを認められ、アーキテクトチームに抜擢されたのだ。こうして富永氏は、システム全体の設計に携わるITアーキテクト集団の仲間入りをすることになった。
■ITアーキテクト集団への参加
センスを認めてくれたITアーキテクトは、富永氏にとって、父に続く2番目の師匠となった。大手企業で20年近くエンジニアとしての経験を積んだベテランだ。日本ではトップクラスといっても差し支えないほどレベルの高いエンジニアだった。富永氏は師匠を慕い、昼休みなど休憩時間のたびに行動を共にして、システムの極意や理念を深く語り合った。父からは、品質や完成度を高めるにはどうコーディングしていくべきかを学んでいたが、このITアーキテクトからは、大規模システムにおいてどう基盤を構築していくかを学んだ。
プロジェクトには2年携わった。社会人としての最初のプロジェクトだったが、ITアーキテクト集団に参加でき、いい師匠に恵まれ多くを吸収できた。
続いて、Visual Basic 6.0の既存システムをVisual Basic .NETへ移行するプロジェクトに、ITアーキテクトとしてかかわった。富永氏のスキルは十分だったが、プロジェクトの終盤では多少ごたごたがあった。枠組みは構築できていたものの、オフショアで開発するメンバーにその意図がうまく伝わっていなかったためだ。
「開発の労力を少なくするように基盤を構築したはずでしたが、開発者たちはわざわざ労力のかかるプログラミングをしていたのです。そこで、テンプレートを穴埋め式のものに置き換えました。熟練したプログラマなら自由度が少なくなることを嫌うかもしれませんが、これならスキルが高くないプログラマでも、確実に少ない労力で開発することができます」と富永氏は語る。
――転職を決意した瞬間。「ここで学べることは、すべて学んだ」
今回のインデックス |
5歳でプログラミング。師匠はエンジニアである父だった |
.NETを究めにいった環境で、2人目の師匠に出会った |
新天地への飛躍を助けてくれた人が3人目の師匠 |
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