自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

第8回　無計画なチャレンジは転職失敗のもと

アデコ 福間啓文
2008/11/27

前のページ｜1　2｜

■転職で一番重視するポイントは？

　徳山さんは新たな転職活動に入るに当たり、下記のような考えを持っていました。

• 安定を考え、大手企業に入りたい
  
  
• チャレンジできる環境がある会社を希望
  
  
• ポジションはマネージャ、最低でもマネージャ候補を希望
  
  
• 給与は前職以上を希望、それが無理でも大幅には落としたくない

　この考えを基に、徳山さんはインターネットを中心に情報を収集し、転職活動を始めました。しかし、思うような会社に出合えません。これらすべての希望を満たすような求人はなかなかないからです。あらためて転職活動の難しさを感じた徳山さんは、転職支援サービスに申し込み、私と面談をすることになりました。

　私は、率直に徳山さんに聞いてみました。

　「いろいろと希望はあると思いますが、一番重視したいポイントは何ですか？」

　「……そうですねぇ……」

というなり、徳山さんは考え込んでしまいました。

　この質問は、徳山さんには効果的だったと思います。このときの徳山さんは、転職に失敗したという自己嫌悪やうまくいかないことへの焦りを抱き、気持ちが後ろ向きになっていました。

　徳山さんの直接の転職理由は会社の業績不振です。しかし徳山さんの中に、「転職で実現したいことは何か」という明確な目的はないようです。このままの状態で転職活動をしていると、同じような失敗を繰り返してしまう恐れがあります。

■マネジメントの経験とスキルを生かして転職したい

　私は徳山さんに、転職活動の基本である「なぜ？」を確認したのです。このことをきっかけに徳山さんは「転職で何をしたいのか？」「何が自分の強みなのか？」「今後はどのようなキャリアプランを考えているのか？」などの転職活動のポイントを確認し、下記のように整理することができました。

・マネジメントの経験とスキルを生かして転職したい

　自分の最大のアピールポイントは何か？ との問いに、徳山さんは「マネジメントの経験とスキルです」と答えました。前職での実績と自己分析から導き出された答えです。これは採用側が安心できるポイントであると思います。

・「大手企業」→「長く働ける企業」へ意識転換

　徳山さんが大手企業にこだわった理由は、「安定性」を求めたからです。大手企業から中堅規模のソフトハウスに転職して失敗した徳山さんは、「大手なら安心」という意識を強く持っていました。しかし、現在は大手だから安心できるという時代ではありません。このことを説明し、「大手企業希望」から「長く働ける企業を希望」と意識を変えてもらいました。

　これらに基づき、私はあるインターネット専業金融サービス企業の、社内SE部門のマネージャというポジションを紹介しました。マネジメントの経験とスキルを生かせるのはもちろん、徳山さんが経験してきたようなネットワークインフラ系の仕事が多い、前職レベルの待遇が受けられる、チャレンジ精神を求める社風があるなど、希望にぴったりだと考えたからです。

　金融業界の経験がない徳山さんは、初めのうちは抵抗があったようでした。しかしマネジメントの経験を生かせること、成長企業であることなどから応募を決めました。その結果、みごと内定を獲得したのです。

　企業側の内定理由は、金融業界経験の不足を補って余りある徳山さんの「人物面」に期待したことでした。新卒から大手で鍛えられたビジネスセンス、大規模案件での調整力、現状に満足しないチャレンジ志向などから垣間見える徳山さんの可能性が、高く評価されたのです。

　徳山さんの方も面接を受ける中で、企業の強みや今後の成長性に深く納得し、「ここなら長く働ける」と感じたようでした。最初に勤めていた企業で感じていたような閉塞（へいそく）感がまったくないこと、新企画の提案や実行を大いに推奨する社風であることも理解でき、正式に入社を決めました。

　現在、徳山さんはマネージャとして、これまでの経験を生かして活躍しています。

---

　今回紹介したケースから、転職活動には明確な理由が必要であること、勢いに任せてではなく冷静な判断をしなければならないことを分かってもらえたと思います。

　転職を考えるきっかけ、希望はいろいろでしょう。しかし「気持ち」だけで動いてはいけないのです。そこから「なぜ、転職をするのか」「転職で実現したいことは何か」という転職活動の基本を確認し、方向を定めて動くのが、失敗しない転職のコツです。

今回のインデックス

社長からスカウトされ、勢いで転職。そして後悔

転職の目標は、「マネジメントの経験とスキルを生かすこと」

前のページ｜1　2｜

筆者プロフィール

アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 福間啓文 1969年生まれ、大阪府出身。私立理系大学卒業後、精密機器メーカーにてソリューション提案営業を経験し、2000年にアデコへ入社。現在、IT系人材・ITエンジニアを専門にキャリアコンサルティングを担当。営業としての観点とキャリアコンサルタントとしての経験から、1人1人のニーズをくみ取り、的確な情報提供・アドバイスをすることを念頭に転職支援を行っている。CDA（キャリア・デベロップメント・アドバイザー）資格取得。

＠IT自分戦略研究所 全記事インデックス

＠IT自分戦略研究所の関連キーワード
転職活動
プロジェクトマネージャ

＠IT自分戦略研究所の関連サービス

48の質問で面接力を高める！ 「面接トレーニング」 ITエンジニアが転職面接で聞かれそうな質問を48個集めました。すらすら回答できれば、面接通過の可能性大！ 面接力の向上に、面接前の最終チェックに、ぜひご活用ください。