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基本から始めよう 初心者のための転職テクニック:実践編

第3回 能力と志向を分析し、効果的な応募を

キャプラン
山田雄督
2005/5/18

転職を決意しても、実際にはどこから手を付けていいか分からない……。そんな転職初心者のために、選考段階から内定、退職、入社に至るまで、転職の各局面の重要なポイントを解説する。ここだけは押さえて転職を成功させよう

どの企業に応募するか

 本連載第1回「職務経歴書で現在の実力、未来の自分を表現する」では職務経歴書の書き方を、第2回「人材紹介会社は強力な転職ツール」では人材紹介会社の活用法を紹介しました。転職活動をしようとしている皆さんは、もうこの時点で個人で直接、あるいは人材紹介会社を使って求人企業に応募することができると思います。

 そこで今回は、どんな企業に、どのように応募するかをテーマとして考えたいと思います。

能力と志向を整理してから行動に移す

 求人企業に応募する際に求職者の方が考慮すべきことは、年齢・経験を経るごとに変わってきます。

 新卒あるいは第2新卒で就職・転職するときには「この業界でこんな仕事をしてみたい!」という「願望・熱意」が決め手として大きな割合を占めますが、社会人としての経験を積むにつれて「経歴」が大きな財産となり、これを基に転職することが多くなります。

 転職先を考えるときには、「やりたい」「やりたくない」という希望を根拠とする観点と、「できる」「できない」という経験を根拠とする観点を分析してみることが必要なのです。「できる」「できない」については、業務経験があるか否かで判断する必要があります。

 この4点を相関的に評価した結果を企業に応募する際の1つの判断材料としてみるのです。いかがでしょうか。

能力と志向の分析:その例

 それでは実際に、多様な職種、場合によっては業種を、能力の「できる」「できない」と、志向の「やりたい」「やりたくない」の組み合わせで4つに分類し、書き出して整理してみましょう。

 例えば開発エンジニアの職種ならば、オープン系開発、Web系開発、制御系開発、ネットワークエンジニアといった広義の職種、併せてプログラマ(PG)、システムエンジニア(SE)、プロジェクトマネージャといった狭義の職種を挙げてみましょう。

 将来についての考えが漠然としていて、方向性を突き詰められていない方は、業界から検討する必要があります。同様に、開発エンジニアの中でも社内SE希望の方については業界から検討し、場合によっては業務系なのかインフラ系なのかまで検討する必要があります。

 以下に1つの例を掲載します。この方は社内SEとしての管理系職種を経験し、今後の職種としてはSE・PGとしてのオープン系・Web系のシステム開発の実務を一番に希望されているようです(図1)。4.「やりたくない」「できない」に1つも記載がありませんが、ある程度方向性が定まった段階で書いた例ととらえてください。

図1 能力と志向の分析の例

 実際に職種を分類する際の注意点を2点挙げます。

 ・「できる」「できない」は客観的評価を基に分類

 「やりたい」「やりたくない」という願望は主観的に評価することが可能ですが、「できる」「できない」の評価は自分だけでは限界があると思いますので、人材紹介会社などによる客観的な評価を基に分類するとよいでしょう。

 ・「なぜ」を突き詰める

 分類する際には必ず「なぜここに分類したか」という根拠を考えるようにしましょう。特に「やりたくない」に分類したものについては即座に視野から消してしまいがちですが、「なぜ」をしっかり考えたうえで判断することが重要です。

 「なぜ」の検討を避けてしまうと、いざ内定を取った際に「本当にこれでよいのだろうか」という迷いが出てくることがあります。いつも多忙で情報収集する余裕がない方では、分類が単なる思い込みである可能性もあります。可能性を広げるという意味でも、即「応募しない」ではなく、人材紹介会社などから客観的な意見を求めてみるのはいかがでしょうか。

 この「なぜ」を突き詰めておけば、面接時に志望動機を聞かれたり、「こんな職種の方が向いているのでは」といわれたりしたときの返答にも役立つかもしれません。

分類ごとに転職活動の方法を変えてみよう

 分類ができたら、あとは具体的な職種あるいは企業ごとに再度分類し、応募する段階になります。

 応募段階における分類ごとのポイントをアドバイスします。

 1.「やりたい」・「できる」

 これまでの経験分野について会社を変えて再度チャレンジしてみようという領域ですので、いわゆる「売り手市場」で積極的に動くことができると思います。しかし、特にこの領域の転職を考えている方は、退職する理由について、メリット・デメリットの両面を踏まえてしっかり考えるようにしましょう。

 転職は、夢や希望を追い求める機会としてメリットの面だけがクローズアップされがちです。場合によっては、深く考えた結果デメリットの方が大きいことに気付き、退職しない方がよいという結論に達するかもしれません。

 2.「やりたい」・「できない」

 転職してスキルアップしたいと考えている領域ととらえることができ、この領域の転職を考えている方は最も多いと思います。俗にいう「キャリアギャップ」が発生している領域でもあります。

 まずはこれまでの経験を職務経歴書に余すところなく記載し、どの仕事ができて、どの仕事ができないかを整理したうえで、志望動機などを考えるようにしましょう。

 職務経歴書の記載方法については、本連載第1回「職務経歴書で現在の実力、未来の自分を表現する」を参考にしてください。

 できる限り「やりたい」という熱意の部分をアピールし、少しでも可能性を高めることも有効です。このような場合は書類選考が厳しくなる可能性が高いと思われるため、職務経歴書の自己PRや志望動機の記載を充実させ、場合によっては別途志望動機書を作成することがポイントです。

 3.4.「やりたくない」の2領域

 1と2の領域を慎重に検討すれば、「やりたくない」に分類した企業に応募することにはならないと思います。しかし、人材紹介会社などの客観的評価で「ピン!」とくる企業がなければ、実際に応募し、面接を通して企業の雰囲気を肌で実感してみることも重要です。

 転職活動に費やす時間に余裕がある方については、後々の迷いを消すという意味でも、これらの企業に応募してみてもよいかもしれません。

 今回はどんな企業に、どのように応募するかを決める方法の1つを紹介しましたが、いかがでしょうか。

 応募する企業ごとにも入社後のメリット、デメリットなどを考える必要があると思いますが、ここまででやっとスタートラインに立った状態といえるのではないでしょうか。

 ここからは、面接などで皆さんの人間性や突発的な質問に対する切り返しが試される段階です。転職活動は大変な作業だと思いますが、自分のこれまでの軌跡を披露する貴重な機会として、楽しめるくらいになれるとよいですね。

筆者プロフィール
キャプラン
山田雄督

大手生命保険会社に入社し、営業管理業務、社内SEに従事。2004年より現職。多数のエンジニアと接した経験を生かし、IT関連の技術職、営業職のキャリアコンサルティングを担当。求職者の可能性を幅広く追求し、引き出すことを心掛けているという。現在、@ITジョブエージェントのパートナーとしても活躍中。
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