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経営者から若いITエンジニアへのメッセージ

第11回 世界を変えられるのはエンジニアしかいない

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/9/6

自分の手で作り上げる喜び

 はてなに入ってからは、「はてなダイアリー」の新機能の追加や「はてなアンテナ」、運用など幅広い業務を行った。入社してから半年後、「はてなブックマーク」を立ち上げる。そこからしばらくは、はてなブックマークの開発に注力した。

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 「やっぱり、自分でものを生み出していくことは面白いですね」。伊藤氏はそう話す。「いまだからいえますけど、人気ブログサービスの開発者といわれてうれしいと思う半面、内心では『作ったのは俺じゃない』と、ずっとコンプレックスだったんですよ」

 はてなでは、アプリケーションをほぼ自分1人の手で作り上げることができた。「今度こそ『これは自分が作りました』というものができたから、それが一番うれしかった」

 技術的に作れたことも大きかったが、何より自分が作ったサービスがちゃんと多くの人に使われるようになったこと、それが伊藤氏にとって大きな自信になったという。

 現在はサービスがある程度成熟してきたため、バックエンドのインフラ寄りの業務を担当しているという。インフラの業務をするようになった理由は、「単純に会社の中でそういうことをやろうとしている人が少なかったこと」と、もう1つ伊藤氏のハッカー像が関係している。

 「Webアプリケーションは、セオリーどおりにやれば作るのは簡単です。これだけやっていても、プログラマとして一流になるのは難しいだろうと以前から考えていました」

 伊藤氏の価値観では、プログラミング言語やOS開発など、レイヤが下にいけばいくほど、コンピュータの本質を知らないと作れないのですごいと思うという。「いまは下のレイヤの技術に関心がある」と伊藤氏はいう。

 「プライベートでそっちをやりつつ、会社でWebアプリケーションを作るという形だとすごい人たちに追い付くのは難しい。自分の仕事と学びたい技術を一緒にするにはどうしたらいいか考えたとき、インフラ側に手を出して、ほかの人がやっていないことができるようになれば、会社としてできることももっと増えるだろうし、技術者としても成長できると思いました」

 はてなには上のレイヤを得意としているエンジニアがいる。そのため、「そっちの方面が得意な人に任せた方がいいということと、開発する環境のバックエンドを支えてやらないとと考えています」と伊藤氏。

すごいエンジニアは社会に対して結果を出す

 伊藤氏の考える「すごいエンジニア像」とはどんなものだろうか。伊藤氏は次のように答える。

 「僕がすごいと思うのは、技術的にすごいというだけじゃなくて、世の中に対して、何か結果を出している人です」

 多くの知識があるだけでは駄目で、例えば、知識を生かして多くの人が利用するソフトウェアを作ったり、会社の状況を劇的に変えるなど、社会的に結果を残していることが重要だという。

 「自分もやるんだったら、ただ勉強してますというより、会社の中ですごいものを作って自分の技術力を証明したいなと思います。世の中に対して結果を出していくという姿勢は第1条件。持っている知識で道を切り開けるような人がいいんじゃないかなと思いますね」

世界を変えるにはコードを書けないと無理

 

 伊藤氏にITエンジニアを志す若い世代について聞いた。伊藤氏はある出来事が印象に残っているという。

 「ある大学で話をする機会がありました。理系の人が多かったので、きっとプログラミングなど技術的なことに食いついてくるんだろうと思っていたのですが、そういうことにはあまり興味がなさそうで、むしろベンチャー企業のビジネスの話とかに興味を持つ人が多くて不思議に思いました」

 「インターネットの世界で何かしようと思って、世界を変えられるのはITエンジニアだけ」伊藤氏はそう断言する。

 「もちろんマーケティングとかコンテンツ制作で結果を出すことはできますし、それも素晴らしいことだと思いますが、本当の意味でネットの世界を変えるくらいのことをやるにはコードを書けないと絶対無理だと思うんです。インターネットそのものが、コードでできてるんですから。インターネットに興味があって、何かしたいと思ったら、とにかくコードを書いてみたらと思います」

はてなの野望

 はてなはよく「技術の会社」だといわれる。また読者の中にもそう思っている人が多いのではないだろうか。しかし伊藤氏は「技術の会社だと思われるのはまだ早い」という。それは「技術を使うこと」に長けていても「技術を作り出す」ところまでは到達できていないという思いがあるからだ。

 「僕らが作った技術が世界標準になるとか、自分たちが作った技術によってスケーラビリティのあるシステムを作れるかというと、そこまではいけていません」

 伊藤氏は「そうした技術を会社で生み出し、はてなを世界的な企業をにしたい」と願う。「技術者あってこそ世界企業になれるんだということを証明できれば、世の中が変わってもっと日本で技術者の地位も上がるんじゃないかと思いますね」

 2006年7月。はてな 代表取締役 近藤淳也氏がアメリカに渡り、米子会社のHatena.Incを設立。2007年7年に同社のサービス第一弾となる「はてなスター」がリリースされた。ユーザー間のコミュニケーションの回路がまた1つ作られた。

 「近藤はネット上に社会を作るつもりでやっています。それこそユーザーが信頼を寄せてもいいものを作ろうとしています。それが彼の野望です。僕の野望は、技術の力を使って、そこにほかの会社には作れないものを作ることですね」と伊藤氏は笑顔で話す。これからも同社の動きから目が離せない。

 

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