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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第12回 31歳、5回目の転職。2年に1回は転職してます!

アデコ
辻貴由

2007/12/21

前向きな転職理由を書類でアピール

 私が小山さんの話を聞くことになったのは、そんなときのことでした。

 小山さんの経歴を見たとき、正直「転職回数が多いな」という感想を持ちました。3年以上勤務した職歴がないため、「これでは転職は難しい」とも思いました。

 しかしよく経歴を見ると、転職するたびに着実にキャリアアップしていることが分かります。直近では小規模ながらプロジェクトの取りまとめも担当していることは、大変素晴らしいと感じました。

 まず私は、小山さんとお話しし、退職理由を確認しました。するとすべてにおいてつじつまが合う、前向きな退職理由ばかりであったことが分かりました。そのため「十分に転職は可能である」と判断することができました。

 しかし、職務経歴書からはそういったところがまったく読み取れません。これが今回の小山さんの敗因です。そこで、「この会社では何を学び、身に付けたか」「何を目標に業務を担当してきたか」「なぜ退職したか」を書き加えるようアドバイスし、職務経歴書でこれまでのキャリアアップの様子をしっかりとアピールできるようにしました。まずは書類選考を通過しなければ、何も始まりませんから。

 ただ、どれだけ職務経歴書でアピールしても、次で6社目ということ自体で採用を見送る企業は多いため、小山さんの選択肢は非常に少ないものでした。しかし幸いなことに、前向きなものであれば転職回数をさほど気にしない外資系のシステム会社が、ちょうど中小製造業向けのシステムコンサルティング強化のため、積極的に中途採用をしていたのです。

 小山さんも、この会社は自分のスキルと経験が存分に生かせる環境であると思い、「これが最後の転職」という強い決意を持って応募しました。とんとん拍子に選考は進み、無事に内定を取得して、小山さんは5度目の転職を成し遂げたのでした。

 小山さんは約2年ごとに転職を繰り返していたため、ジョブホッパー(短期間で転職を繰り返す人)に思われる可能性もありました。しかし、彼は明確な将来のビジョンの実現手段として、一貫した考えの下にキャリアアップ転職を繰り返してきたのでした。すべての転職理由にぶれがなく、志が高いことを企業に伝えられたため、転職がうまくいったのです。

なぜ、転職回数が多いと不利なのか?

 小山さんの例のように、たとえ転職回数が多くても転職は可能です。しかし一般的には、回数が増えるほどに状況は厳しくなります。

 なぜ転職回数が多いと、転職が難しくなってしまうのでしょうか?

 企業の人事担当者が転職回数の多い人材を敬遠するのは、以下3点のような可能性を考えてのことだと思います。

  • 定着しない
  • 自分本位で帰属意識がない
  • 順調なキャリア形成ができていない

 人事担当者にとっては、人材に長期的に就業してもらえないことが一番の不安です。従って、その不安点を取り除くことができれば、転職回数が多くても転職はできるということになります。

 そのためには、転職理由をしっかりと用意することが重要になります。1つ1つの退職理由に一貫性があり、キャリア形成のストーリーがしっかりしていることが大切です。

 そのためには行き当たりばったりではなく、常に一貫性を持って転職をしていかなければなりません。これまでの「スキル経験」「成功経験」「失敗経験」を洗い出し、キャリア形成のストーリーの筋道を立て、自分の強みや実績をアピールすることが必要です。そしてビジョンをしっかりと持ち、会社の理念や事業内容を自分なりに理解し、今後何をしたいかという具体的なビジョンを語ることができれば、転職は可能なのです。

 とはいえ、転職回数の少なさを重んじる企業であれば、アピールする場さえ与えてもらえないこともあります。そこで転職回数よりも経験値を重視してくれる業界や企業を見極めることも必要となってきます。こういう判断は個人ではなかなか難しいので、人材紹介会社などを通じて得ていけばよいでしょう。

一貫したキャリアビジョンを大切に

 冒頭の繰り返しになりますが、私自身は、転職回数は少ない方がよいと思っています。転職回数が多くても転職することは可能なのですが、確実に転職先の選択肢は少なくなります。転職回数は少ない方が圧倒的に有利なのです。

 たとえ転職がしやすい環境であっても、一時の考えに流されて転職してしまうことは非常に危険です。

 会社の倒産などのやむを得ない事情による転職は企業の理解を得られますが、「自分とは合わなかった」「事前確認した職務内容と違った」という理由で転職回数を増やしてしまうと、企業に「採用してもすぐに辞めてしまうのではないか」という不安を抱かせ、転職が難しくなってしまいます。

 一貫性のあるキャリアビジョンを考えることと同時に、回数をむやみに増やさないように、企業概要、仕事内容や待遇面をしっかり考慮して慎重に転職を行うことが大切であると考えています。

 

今回のインデックス
転職5回目、小山さん初めての苦戦
なぜ、転職回数が多いと不利なのか?

筆者プロフィール
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
辻貴由
大阪府出身。大学卒業後、メーカー系ソフトウェア会社へ入社。約7年間SEとして官公庁・電力・交通システムの開発を数多く経験。同社を退職後、アデコへ転職。現在IT業界専門のコンサルタントとして、ITエンジニアの転職支援に従事。求職者のビジョンとスキルをうまく調和させたキャリアプランの提案を心掛けている。

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