第8回 PGに特化したいか、どこでも通用するエンジニアを目指すか
樋口研究室
山口紀子
2011/3/24
PGとして生きたい、IT業界で生き延びたい、楽しく仕事したい――自分が大切にしたいものをベースにキャリアづくりをしよう。 |
■ 「先輩! キャリアアップの秘けつを教えてください」
「どうやってキャリアアップをしようか」と考えたとき、親身になってアドバイスしてくれる先輩たちは、力強い味方になってくれるでしょう。
「すてきな先輩って、そんなにいるのかな……」「仕事は日々忙しいし、皆が一生懸命働いている。そういう環境で、すてきな先輩を見つけなさいといわれても、ちょっと難しい」――そう感じるかもしれないですね。
でも、諦めるのはまだ早いです。樋口研究室には、自らのキャリアアップのために日夜努力するエンジニアたちが集まってきます。彼らの目標やスキルの磨き方はさまざまですが、そこにはある種の共通点があります。それは、「職種」「業態」「目的」のどれかを使ってキャリアをつくっているということです。
今回は、キャリアアップのために努力するエンジニアの言葉を参考にして、自らの方向性に合ったビュー(考え方)を用いたキャリアづくりを学びましょう。
これから、樋口研究室を活用しているIT業界の先輩たちによるアドバイスを紹介します。彼らの仕事内容や職種は多彩です。プログラマやSE、営業にプロジェクトマネージャ(PM)、グループリーダー(管理職)、オペレータに教育担当者、人事や経営者など、IT業界で必要とされるほぼ全職種をカバーしています。
■プログラマのAさん「プログラミングスキルを強化すべし」
「スマートフォン用アプリケーションの開発をやってみるといいと思う」
ベテランプログラマのAさんは、こう語ります。
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Aさんは、会社でPHPやPerlを使ってWebアプリケーションを開発しています。Aさんは「これらの言語は、手軽にWebアプリを作れるので便利」だ語る一方、「もう少し大規模なシステムでも使えて、しっかりした体系を持つJavaやCでアプリ開発を経験するのもよい」とも考えています。
「JavaやCのプログラミングスキルを持つ人は、スマートフォンアプリ開発でも活躍できる。プログラマたるもの、プログラミングスキルを磨いて、新しいニーズがある分野にどんどんチャレンジするといい」
Aさんは、いま持っているプログラミングスキルをもっと強化することが大切だ、と感じているようです。
■SEのBさん「プログラミング以外のスキルも身に付けて」
「エンジニアとして、企画の案件に取り組むといい」
SEのBさんの意見です。
Bさんは、自社のインフラ整備をしています。しかし、現状のインフラが、過去にどのような経緯で採用されたのか、その理由や歴史をまったく知りません。そのため、「その理由を知りたい」と思っているのですが、つい目の前にある仕事に忙殺されて手がなかなかつけられないそうです。
そのため、Bさんは「システムの全体像を知って、スキルに厚みを付けたい」という思いから、上司に配属の希望を伝えているそうです。「次のシステム更新のタイミングで企画チームに入り、案件の最初から最後まで経験してみたらどうか」 ――Bさんは自分のこれまでのスキル・経験をふまえて、あえて別のスキルを身に付けてエンジニアとしての「幅広さ」を持たせるべし、と説きます。
■オペレータのCさん「ITよりも人間を大切にして、仕事を円滑化する」
「エンジニア職は、もっと会話の能力を身に付けるべき」
オペレータのCさんは、力強く言いました。
Cさんは、データセンターでシステムの監視業務をやっています。システムに問題が発生したら、監視ソフトがアラート(警告)を発生してくれるので、監視の作業に問題はないと言います。
しかし、Cさんは別の部分で問題意識を持っています。それは、アラートが発生した時に何の問題が発生しているのかユーザーに伝えること、トラブルがいつ回復するのか知らせること、システム部門の専門家に障害回復を依頼すること――すなわち「人に伝える」作業の迅速化です。
どうすれば、滞りなく自分の仕事を遂行できるか。このとき「相手にしっかり状況を伝えられるコミュニケーション能力が肝になってくる」と、Cさんは力説します。
「オペレータはコンピュータを使いこなしますが、最終的には人間が相手の仕事です」。Cさんが目指すのは、テクニカルスキルとは違うスキルを磨くことで「仕事を円滑に回す」ことでした。この視点は、キャリアアップのポイントを的確に突いているように感じます。
■教育担当のDさん「現場の感覚を常に忘れてはいけない」
「もっと現場に出て働くといいのでは」
人事部門で社員の教育・研修を担当しているDさんの部門には、現場の社員から数多くのクレーム、相談が寄せられます。「こんな会社体制は、現場では機能しない」「こんな研修をやっても現場では役に立たない」――時にはこんな激しいクレームも来るそうです。Dさんはこの事実が気になり、自分の仕事をあらためて見直し、「確かに、私自身が現場を熟知して教育制度を考えているわけではない」と反省したとのこと。
「現場を離れている状況で年を取ると、役に立たない社員になってしまうかもしれない」――Dさんは、このような危機感を抱いています。足りない「現場感覚」を補充するために、Dさんは本社から現場に出て、新しいスキル習得に励んでいます。管理職やPMなど、開発現場から離れた人にとって、有益なアドバイスではないでしょうか。
■PMのEさん「自分が楽しくできるよう、仕事のやり方を模索する」
「自分で仕事をコントロールできるよう、やり方を工夫してみては」
PMのEさんは、技術に関する事柄は基本的にはメンバーに任せています。しかし、結合テストや統合テストのフェイズに入ると、「仕様が足りない」「想定外のトラブルが頻発して、どうやってそれを乗り切るか」「いかに納期に間に合わせるか」「問題の収束のために利害関係者と交渉する」など、いつもドタバタしているそうです。
「毎日、気が休まらない日々が続いて大変。ゆっくり考える時間が欲しい」。Eさんはそう考えて、状況に振り回されないための仕事の仕組みづくり、現場のルール改善に奔走しています。自分で仕事の流れをコントロールできる――こういう環境は、どんなエンジニアにとっても憧れでしょう。
■起業したFさん「クリエイティブなパワーをなくさない」
起業をしたFさんは「経営者もクリエイティブな仕事をしないといけない」といいます。
Eさんは過去に、メーカーの製品開発部門にいていろいろな製品を作っていました。そこで得たスキルを基に会社をつくって経営者になりました。 リーマンショックを境に、案件が極端に減ってきて、新規事業の立ち上げ、新規メニューの開発をしないといけなくなってきたそうです。
もっと魅力的な商品を開発しないといけないのに、Fさんは会社を維持する経営者としての仕事で手いっぱい。ですが、Fさんはこんな状況を危惧(きぐ)しています。
「経営者になっても良い商品を作る、クリエイティブなパワーをなくしてはいけない」
これは、経営者だけに限らず、プログラマにPMなど、すべての職種に通用するアドバイスです。「新しいプログラムを書こう!」と思っていても、いつの間にかメンテナンスに追われていたり、「自分でもプログラムを書きたい」と思っていてもマネジメント業務が忙しくて、つい自分の希望を先延ばしにしてしまう、ということはよくあることです。仕事に飲み込まれないようにする第一歩は「クリエイティブさを忘れない」という意識をしっかり持っておくことではないでしょうか。
いかがでしょうか。先輩たちの思いは多種多様。考え方はバラバラで正解がない……そんなふうにも見えます。ですが、筆者からすればそこに興味深い「共通点」があるように思えます。
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