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なぜ、彼らは転職を考えたのか

第9回 海外出張で受けた衝撃。国際的に活躍したい!

アデコ
山口孝之

2008/1/18

それから4年……

 私が岡田さんに会ったのは、それから4年たってからのことです。面談の際、私はいつもそうするように、岡田さんに今回の転職の「テーマ」を聞きました。

 「岡田さん、いままでの経験についてはおおむね理解できました。ところで、転職を考えた動機は何ですか? 今回の転職のテーマを教えてください」

 「今回の転職のテーマは、国際感覚を身に付けたITエンジニアになることです」

 岡田さんは、会社にとって初めてのオフショア開発であったA社のプロジェクトを、見事成功させていました。それ以来、オフショアの専門家のような形でプロジェクトにアサインされることが多かったそうです。会社も顧客からの紹介ではなく、戦略的にオフショア先を開拓していきました。

 中国だけでなく、インドやベトナムの企業や大学などを視察に行ったこともあるそうです。活気にあふれる海外IT企業の様子を目の当たりにして、岡田さんの中で「国際的に活躍したい」という意識が高揚していっただろうことは、想像にかたくありません。

外国人エンジニアに触発されて

 「国際感覚の必要性を意識しだしたのはいつごろからでした?」

 「初めて中国の開発会社と接点を持ったときです。それ以来、日に日に強くなっていったのだと思います。そのときから何度となくオフショア先との打ち合わせを重ねましたし、自分が指揮したほかのプロジェクトでも、中国人のプログラマに日本に来てもらって一緒に仕事をしました。彼らのポテンシャルの高さや上昇志向、頭の良さなど、本当にカルチャーショックでしたね」

 「なぜ、国際感覚を身に付けなくてはならないと思ったのですか?」

 「大学を卒業するとき、一般的な話として『これからの人は英語くらい話せなくちゃ』といわれていました。でも日本のIT業界は完全な内需産業だったので、ぼくにはそれほど英語力は必要ではありませんでした。あのときの『英語くらい話せなくちゃ』ってやつに、いまの日本のITエンジニアは直面しているのだと思います。うちの会社でも外資系企業の顧客が増えましたし、日本のIT企業自体が海外に出て行かなければならない時期なのかもしれないし」

 確かに企業からの求人票にも、英語力に関する記述が増えたように思われます。情報システムは顧客の事業や業務を支援するものなので、顧客自体が海外に進出すれば情報システムも海外展開を意識した作りになります。IT企業としては、英語に堪能なITエンジニアの確保は喫緊の経営課題の1つかもしれません。

 岡田さんは外資系ITベンダのシステムエンジニア職に応募し、みごと合格しました。その勝因は、海外の協力会社との接点やオフショア開発の経験だけではありませんでした。英語の苦手な岡田さんは、通勤電車で毎日iPodで英語ニュースを聞き、英会話学校に通ったりTOEICを受けたりと、目標に近づくために時間的、経済的投資をしてきたのです。

 短期的な考えによらず、中長期的な視点で目標に向かって努力を続ける姿に、この企業も岡田さんのポテンシャルの高さを見たのでしょう。

 岡田さんはいまは、外資系企業の日本事業展開に参画しています。こういった経験は、今後のキャリアにとって重要なものになると思います。

 転職の理由(テーマ)は人それぞれです。どんな理由であれ、転職する人はいま一度、「なぜ転職するのか」という転職理由について熟考すべきです。

 しっかりした転職理由、そしてその周辺部分である、転職活動に至った経緯と転職した後のビジョン。この部分を確認し、論理立てて説明できるようになれば、転職活動は成功に近づくことでしょう。

 

今回のインデックス
中国人エンジニアのレベルの高さにびっくり
国際感覚を身に付けたエンジニアになりたい!

筆者プロフィール
アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント
山口孝之

千葉県出身。大学卒業後、建設会社にて人事、経理などの管理業務を経験。その後ITエンジニアに特化したスカウト型の人材紹介会社に転職し、キャリアアドバイザー業に従事する。その後アデコに参画し現在に至る。キャリアアドバイザーとしては一貫してIT業界、インターネット業界を担当。ギャップのない転職を支援するための情報収集能力、転職者側と採用企業側の両方の目線で行うカウンセリングには定評があるという。

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