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これからは人材紹介会社でスキルアップ?


大内隆良(@IT自分戦略研究所)
2006/10/19

人材紹介会社は、転職をするときに利用するものというのが、一般的な認識だろう。それだけではない、新しい人材紹介会社のサービスを紹介しよう。今後は、人材紹介会社でスキルアップを、という時代が来るかもしれない?

人材紹介会社がスキルアップ支援?

テクノブレーンの代表取締役社長 能勢賢太郎氏

 人材紹介会社の利用法はさまざまあるだろう。だが、一般的な利用法は、転職しようと考えたときに、転職先企業を紹介してもらうために相談に訪れる、というものだろう。

 テクノブレーンが2004年から開始したのは、こうした転職にまつわるものとは一線を画するサービスだ。それは、「CAREER LABORATORY」というITエンジニアのキャリアを支援するセミナーだ。

 何だ、キャリア=転職セミナーではないかと思うかもしれないが、それだけではない。確かに転職を促すようなセミナーもあるが、圧倒的に多いのはスキル系のセミナーなのだ。

 具体的には、次のようなセミナーが予定されている(2006年10月16日現在)。

  • 日本版SOX法対応レベルの疑似診断
  • IT導入経験に役立つ! 新マーケティング理論 ロングテール戦略講座!
  • これからの組み込みエンジニアに求められるスキルとは?
  • ERPコンサルタントのための「ERP提案のテクニック」

 なぜ、こうしたスキルアップ支援のようなセミナーを人材紹介会社が手掛けるのだろうか。その点をテクノブレーン 代表取締役社長の能勢賢太郎氏に問うと、「テクノブレーンを忘れないで」という思いがあったからだという。

「忘れないで」の裏にあるものとは

 人材紹介会社のビジネスは、いうまでもなく、転職先を探す求職者を求人企業に紹介し、転職させることで求人企業から報酬を得ることで成り立っている。詳しいそのビジネスモデルを知りたい人は、「人材紹介会社のビジネスモデルを知る」と「人材紹介会社選択の3つのポイント」を参照してほしい。

 このビジネスモデルの肝心な点は、人材紹介会社に登録した人すべてが転職しなくてもいいことである。登録者がある割合で転職すれば、人材紹介会社は利益を上げることができるようになっているからだ。

 人材紹介会社は、多くの転職希望者の相談に乗る一方で、多くの求人企業とも取引関係にある。テクノブレーンの場合、IT企業がその取引先となる。そうした企業には、セミナーなどで講師をした経験のあるITエンジニアも多い。

 テクノブレーンにすれば、こうしたサービス(セミナー)を行うことで、転職しようというときにテクノブレーンを選んでもらえれば、というビジネス上のメリットも十分考えているのだろう。それが、「テクノブレーンを忘れないで」(能勢氏)という言葉に表れていそうだ。

優れたITエンジニアと働きたいという意識

 能勢氏によると、セミナーは「なるべく少人数で、ディスカッションができる人数」を意識しているという。そしてなるべく、ITエンジニアの現場に近く、リアルな話ができないとダメだという。ITエンジニアは、たとえ無料のセミナーであっても内容をシビアに見極めているからだ。

 さらに、「こういう人と、働きたい」(能勢氏)と思えるような人に講師を依頼しているという。多くのITエンジニアは、優れたITエンジニアとともに働きたがることを知っているからだ。実際、2006年春に行った@IT自分戦略研究所とJOB@ITの読者調査(2006年春の調査)でも、給与がいい、経営者のビジョンなどを挙げる人はが多いのだが、優れたITエンジニアと働きたいという人も26%いた(図1)。

図1 @IT自分戦略研究所とJOB@ITの読者調査(2006年春実施)では、転職する場合に重視することとして、優れたITエンジニアと働きたいという人が26%いた

 セミナーに参加した人の中には、セミナーの講師にあこがれ、講師が働いている企業に転職を希望し、実際にそれを実現した人もいるという。

有料のセミナーと今後のセミナー

 基本的にセミナーは無料だ。ただし、有料のセミナーも存在する。例えば、「ERPコンサルタントのための『ERP提案のテクニック』」だ。このセミナーが有料の理由について能勢氏は、「すぐにでもクライアントに出せる内容」(能勢氏)という実践的なものだからと説明する。

 能勢氏によると、「国際的なものをもう少しやりたい」と述べる。例えばオフショア開発。何だかんだいいながらも、オフショア開発は増え続けている。しかし、いまのオフショア開発は「しなくてもいい苦労をしている」(能勢氏)。その苦労を減らせるのであればということで、オフショア開発のセミナーを行いたいようだ。それ以外に能勢氏が挙げたのは、英語関係のセミナーだ。実際、英語関係のセミナーも人気が高いという。オフショア開発を含め、実際に多くのITエンジニアが、現場で英語を多少なりとも必要としているのかもしれない。

こうしたセミナーは増えるのか

 では、こうしたセミナーを行う人材紹介会社は増えるのだろうか。基本的に人材紹介会社のビジネスモデルは、前述したように人材紹介会社に登録した人が、ある割合で転職することにより、契約している求人企業から報酬を得ることで成り立っている。

 増加の有無は、こうしたセミナーを手掛ける人材紹介会社が、ビジネスモデルにうまくセミナーを位置付け、ビジネスモデルに当てはめることができるか、という点にかかっているのかもしれない。

 人材紹介会社のビジネスは、以前は多くの案件を持ち、さまざまな職を紹介できるかにかかっていた。しかしキャリアビジョンの重要性が指摘されるようになり、キャリアプランの策定やキャリア相談の段階から引き受ける人材紹介会社の方が一般的だ。結局こうしたスキルアップ的なセミナーも、ITエンジニアが転職するうえで必要なサービスという声が多くなれば、手掛ける人材紹介会社も増えることになるのかもしれない。

@IT自分戦略研究所編集部では、人材紹介会社、転職サイト、人材派遣会社などの新しいサービスなどがあれば、今後も取材して記事にしたいと考えています。そうした情報があれば、編集部までご一報ください。よろしくお願いします。



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