自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

地方のITエンジニアよ、大都市を目指せ!

山本直治(キャリアコンサルタント)
2006/12/6

地方のITエンジニアのキャリアに特有の問題点や、首都圏に転職する場合のアドバイスを、地方在住者のキャリアコンサルティング経験を持つキャリアコンサルタントが語る。

IT企業は大都市に集中している

 私は、人材紹介会社のキャリアコンサルタントとして、これまで首都圏・関西圏以外の地方に在住するITエンジニアの方とも接点を持ってきました。その経験からすると、地方在住者は、地元での転職を希望する方が多いようです。

 しかし企業の情報システムを構築・運用する仕事は、性質上どうしても一般事業会社の多い大都市圏に集まっています。国土交通省の資料によると、国内にあるIT関連産業(インターネット関連サービス、ソフトウェア業、情報処理サービス)の事業所数は、首都圏に約4割、関西圏に約1割が集中しているそうです。特にWeb、ポータル、コンテンツ、モバイル系の仕事は首都圏に集中する傾向があります。

 確かに、地方にも地場のIT産業はあるにはあります。しかし、数としてはそれほど多くないのが現実なのです。ですから、地方在住のITエンジニアが地元で転職を考えた場合、大都市圏での転職に比べて選択肢が非常に狭くなりやすいのです。

地元での転職の問題点

 そもそも選択肢が少ない地元IT企業への転職。仮に転職できたとしても、地方の場合はいろいろ問題があります。地元を出て東京や大阪へ転職しようとするITエンジニアがよく口をそろえていうのが次のようなことです。

・地元には、大規模で最新技術を用いるような案件が(少)ない
・地域性もあるのか、プロジェクトマネジメントが“ゆるゆる”である。東京に行って、最先端の高度なプロジェクトマネジメントに触れたい

 確かに地方でも、Webや雑誌で最新の技術動向に触れることはできます。また、自宅に開発環境を作って勉強をすることもできるでしょう。しかし、やはり実務の中で最新技術に触れ、自分のスキルを高めたい向上心の強いITエンジニアならば、そこに不満を感じることも多いのでしょう。彼らは、そうした問題意識を持って、地方から大都市圏への転職を検討するのです。

 以下では、かつて私が担当した地方から東京への転職者の動機を簡単に紹介します。

<事例1:地方工場勤務が続いた>

 私が過去に地方から東京へ転職をサポートした方の1人は、有名メーカーの工場で、制御系システムの開発をしていた方でした。メーカーの工場は地方にあることが多く、東京の会社に入ったつもりが、事実上地方での永住が予定されてしまいました。

 大規模の新規開発も少なく、技術スキルの伸びも期待できない職場に飽き足らなくなった彼は、私と相談した結果、東京への転職を決意しました。扱っていたシステムが比較的大きく、年齢が若かったので、彼は大手コンサルティングファームの製造系システムのコンサルタントとして転職することができたのです。

<事例2:やりたい仕事が地元にない>

 PHPに多少の心得があり、モバイル系のアプリケーション開発をやってみたいという地方のITエンジニアと出会ったことがあります。モバイル系の仕事は首都圏に集中しており、地方ではあまり見つけることはできないようでした。しかも経験不足の彼を採用し、育てる余裕があったのは、結局、余力のある首都圏の会社だけでした。

地方では大都市圏の求人は分からない

 こんな時代ですから、インターネットを使えば、全国の求人情報はいくらでも検索できます。しかし、画面上では、大都市の企業への入りやすさ、開発のレベル感や社風といった皮膚感覚までは伝わりません。特に、先ほど述べたように、地方と東京ではプロジェクトマネジメントの意識に違いがある場合もあるので、自分は「キビキビとした」首都圏の開発現場のレベルについていけるのか、という不安を持つITエンジニアも少なくありません。

 またIT業界は、会社によって勤務環境や待遇の差が激しいことにも注意が必要です。よくない会社に入ってしまうと、その後のキャリアが台無しになりかねませんが、Webや求人広告だけで評判を見分けるのは至難の業です。

 地方在住のITエンジニアが大都市圏に転職しようとする際、キャリアコンサルタントに相談する意味はそこにあります。

まずは相談する

 地方に拠点を構える人材紹介会社であれば、オフィスに出向いて相談することができます。ただ、全国ネットを持つ大手の人材紹介会社といえども、オフィスがあるのは政令指定都市が中心のため、それ以外の県の方ですと、なかなか直接訪問することも難しい場合があります。一方、東京にしかオフィスを持たない人材紹介会社の場合は、電話(最近ではスカイプを含む)を使って、ご相談に応じてくれるでしょう(費用は人材紹介会社が持つのが一般的です)。

 直接会わないと不安という人もいるかもしれませんが、例えばスカイプなら顔が見えますので、時間的・距離的な制約なく、直接会うのに近い雰囲気で話すことができます。

効率的な日程調整などは人材紹介会社に任せる

 地方から東京や大阪の会社に応募する場合、面接の日程調整が重要です。在職中の方であれば、仕事を休んで遠征することは避けられません。複数社を並行応募する際は、なるべく日程を集中させて、費用・時間を節約したいものです。

 自分で直接企業へ応募すると、1社ごとに日程を自己管理しなければなりません。人材紹介会社を使えば、各社の日程調整はすべてやってくれます。企業も、地方からの応募であることに配慮して、無理を聞いてくれたり、選考プロセスを短縮してくれることもあります。交渉次第では、交通費を出してくれる企業もあります(交通費はない場合が多いです)。実は、人材紹介会社利用のメリットを最大限に受けられるのは、地方からの転職者であるともいえるのです。

 ただ、注意しなければいけないのは、複数の人材紹介会社を使って応募を頼むと、日程調整が混乱することがあるかもしれない、という点です。つまり、複数の人材紹介会社の調整してくれた日程を、自分自身がさらに調整しなければいけないためです。そのため、なるべくなら、信頼のおける人材紹介会社に絞って活動した方がよいと思います。

知名度重視の企業選びでいいのか

 提案された企業のうち、どこを受けるか。あるいは、内定した中でどこに入社するか。これは大きな問題です。地方から大都市圏に転職する場合、都会では有名な企業でも、地方での知名度はサッパリ、ということも少なくありません。

 また、入社企業を選ぶときに、親が意見をいう場合があります。やはり、ハードウェアメーカー系、商社系、ユーザー系など全国的な知名度のある「冠系強し」の傾向がありますが、系列の2次請けより無名の元請けの方が仕事にやりがいが持ちやすい、という考え方もあります。

 そういうときに参考になるのが、キャリアコンサルタントのアドバイス。地方から大都市への転職を成功させるためにも、ぜひ人材紹介会社を効率よく活用されることをお勧めいたします。

筆者プロフィール
山本直治
労働市場の限界と格闘しながらITエンジニアのキャリア形成をサポートする公務員出身の異色キャリアコンサルタント。 現在はロード・インターナショナルで活躍中。



@自分戦略研究所の転職関連の記事一覧
キャリアコンサルタントのアドバイス記事などを読む
転職事例の記事を読む
転職・退職時の注意点に関する記事を読む
自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。