第4回 はなずきん――IT勉強会カレンダーは「自分のために」
岑康貴
2008/9/18
オンラインとリアル。現代のエンジニア・コミュニティには、2つの活動領域が存在する。その境界線を越えて活動する人たちにフォーカスを当て、これからのコミュニティ像を探る。 |
多くのコミュニティが日々、日本中で開催する勉強会。企業が行うセミナーやイベントと異なり、勉強会の情報を得るのは難しい。まとまった情報はなく、コミュニティに近しい人間が周囲にいなければ、情報は得づらい。
そんな状況を変えたエンジニアが存在する。
日本全国、さまざまなIT系勉強会の大量の情報が日々更新される「IT勉強会カレンダー」を作った「はなずきん」さんだ。TechEdで関東に来ると聞き、会場となったパシフィコ横浜で話を伺った。
■もともとは「開催日がかぶらないように」
IT勉強会カレンダーが多くの人に使われるようになったのは、「にとよん」さんの「てっく煮ブログ」で紹介されたのがきっかけだ。しかし元々は、「開催する人のため」のものだったという。
「勉強会を開くとき、開催日がかぶってしまうという悩みがあるよね、という話をしていました。わたし自身、告知してから、日程がかぶっていることに気付くことがあった。そこで、Googleカレンダーでまとめて、開催日がかぶらないようにしよう、というのが始まりです」
IT勉強会カレンダー |
そのため、「勉強会に行きたい人が情報を集める」という用途は「想像もしていなかった」と話す。それ以前も自身のブログでセミナーや勉強会の紹介はしていたが、カレンダー形式で閲覧できる形の便利さが受けたのだろう。
カレンダーは少しずつ進化している。最初は「勉強会の名称」のみが掲載されていたが、Twitter経由で「場所の情報も見られるといい」というフィードバックをもらい、地名をつけるようになった。さらに、同じ日に同じ会場で行われるものには星マークをつけたり、まだ決定していない勉強会には「(仮」というマークを付けて仮告知としたりするなど、利用者の要望を取り入れてバージョンアップしている。
■ITプロ向けの勉強会は、まだまだ少ない
更新は毎日行っている。起床して専用のアンテナやGoogleアラートをチェックし、CSVにまとめる。数が多ければその場で更新するし、少なければ更新自体は夕方に行う。
これだけの情報量を見ると、管理や更新は面倒なのではないかという疑問が沸く。しかし、はなずきんさんは「自分のためでもあるし、楽しんでやっている」と話す。
「自分のためでもあるんです。自分の開催する勉強会の日にちを忘れてしまうことがあるので。それに、知らない勉強会を見つけて、『すごい、行きたいな』となるのも楽しみ」
自分が行きたいものは、自分用のカレンダーにコピーする。そうやって新しいものを発見するのが楽しいのだという。Googleカレンダーは、こうして個別にコピーできるのが便利なので気に入っているそうだ。
更新用のCSVファイル |
また、これだけ、日本中の勉強会情報をまとめていると、気付くことがあるという。
「開発者向けの勉強会が多いですね。一方で、ITプロ(システム管理者やネットワークエンジニア)向けのものは少ないです。開発者はその場でコードが書けるけど、ITプロはその場で構築するわけにはいかないから、というのがあるのかもしれません」
はなずきんさん自身、システム管理者だ。自身がスタッフとして参加している「Admintech.jp」は数少ないITプロ向けのコミュニティ・勉強会だが、ほかにあまりないのが寂しいと話す。
■注意しているのは「主催者や参加者に迷惑をかけないこと」
IT勉強会カレンダーを運営する上で、悩むこともあるという。少人数の勉強会の場合、「載せていいかどうか」ということだ。
「ある程度、規模が大きかったり、いろいろなところで宣伝しているものは、気兼ねなく載せてしまいます。一方で、小規模なものは、一概に載せることがいいこととは限りません。小さい会場に新しく人が応募してきてしまって、いつも参加している人が定員オーバーで参加できなくなってしまうと、ご迷惑をかけてしまうことになる。だから、小規模だったり、例えばmixi内で告知しているようなものの場合は、必ず載せていいか事前に確認するようにしています」
一度載せたものの、人が来すぎてしまったため、「やはり次からは載せないようにしてほしい」ということもあった。一番気をつけているのは「主催者や参加者に迷惑をかけないこと」だという。そのため、載せることが迷惑になってしまうケースを常に考え、注意しているそうだ。勉強会というスタイルならではの気配りだ。
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