エンジニアライフ コラムニストに聞く（4）
ベテラン技術者に聞く
「息の長いエンジニア」の秘けつ
岑康貴（＠IT自分戦略研究所）
2009/4/28
| 本音が語れるエンジニア参加型メディア「エンジニアライフ」。執筆しているエンジニアたちはどんな人物なのか。執筆したコラムの紹介とともに、コラムニストたちの内面に迫る。 |
エンジニアライフのコラムニストたちの素顔に迫る「コラムニストに聞く」。今回は、「アプリケーション開発9年、組み込み開発5年、テスト6年」という経歴を持つエンジニア、『息の長いエンジニアでゆこう』を執筆するヨギ氏にスポットを当てる。
「願わくば楽しくエンジニアとして生涯を全うできるように。自戒を込めたコラムです」――コラムの副題には、そのようにうたわれている。バリバリの開発者時代に無理がたたって心身の健康を崩し、現在は「息の長いエンジニア」を目指す43歳のベテラン技術者の足跡から、IT業界で健やかに働き続けるヒントを探る。
■バブル期の大量採用組
43歳。既婚。2児の父。バブル崩壊のころ、長期間の激務で自律神経をやられ、根治を目指し、2年ほど前からヨガを始めた。IT業界には約20年在籍。開発14年、テスト6年。
以上が今回の主役、ヨギ氏のプロフィールである。
ITエンジニアにとって、心と体の健康は永遠のテーマ。激務やストレスから健康を害し、IT業界から去っていってしまう技術者は少なくない（余談だが、エンジニアライフのコラムにおいて、メンタルヘルスの話題は多い）。
「平成元年に新卒採用された世代です。バブル絶頂期で、いわゆる『大量採用組』の中の1人ですね」
料理が好きで、コックになろうかと学生時代は考えていたそうだ。だが、理数系が得意だったことと、当時「コンピュータ業界は伸びている」と感じ、IT業界の門扉をたたいた。
開発現場でバリバリ働く若き日のヨギ氏。1990年代半ば、バブル崩壊に伴い、開発現場は関東から遠隔地へと移った。コスト削減が主な要因だった。
同時期に結婚し、子どもをもうけたヨギ氏は、関東を離れ、単身赴任することを嫌った。家庭を持って以来、ヨギ氏の最優先事項は、「家族一緒に暮らすこと」になっていたからだ。「開発経験豊富な君のスキルからするともったいない話だが、テストエンジニアなら関東勤務だ」と会社からいわれた。年収条件は変わらず、すぐにリーダークラスになれるという確約ももらった。かくして2000年、開発現場を離れ、ヨギ氏はテストエンジニアとなる。
■3年のブランク
テストエンジニアとして働いていたヨギ氏だが、2003年ごろ、「開発に戻ってくれ」という要請を受けた。
大きなコスト削減の動きがあり、それがテスト部隊を直撃したのだ。ヨギ氏の仕事自体は認められていたが、単価が高く、割に合わないというのが理由だった。
3年のブランクがある状態で開発に戻ったヨギ氏。現場感覚が戻らないままに客先常駐へ。テストの仕事が楽だというわけではないが、開発現場の激務に体がついてこなかった。終電の続く生活は、彼の体を確実にむしばんだ。
「さまざまな症状が一気に現れた」とヨギ氏は語る。耳鳴り、意識が揺れる感じ、胸苦しさ、胸焼け、動悸（どうき）、頻脈、鼻血がよく出る、泌尿器系の各種症状、過敏性腸症候群、不眠、うつ症状、高血圧、はてはタバコも吸わないのに肺ガンの疑い、など。血圧は下が110、上が170。異常な数値であることはいうまでもない。
病院通いが始まった。まったく原因が分からず、結果的に計12回のドクターショッピングを行ったという。最終的な診断は「自律神経失調症の一症状としての『うつ』（であろう）」ということだった。
開発から再びテストエンジニアに戻り、病気の根治のためにヨガを始めたヨギ氏。ヨガの効果については「ヨガのススメ Vol.2 ―体質が変わり快復へ。20kgの自然減量―」を読んでいただきたい。
■毎週土曜のヨガのレッスンのために、1週間頑張る
「学生時代に陸上競技をしていたのですが、病気のためにできなくなってしまった。通っていたスポーツクラブでできるものを探したら、ヨガしか残らなかったんです」
ヨガとの出合いは偶然だったという。始めてしばらくは効果が実感できず、駄目かなと思い始めたころ、「そういえば最近、風邪を引いていないなあ」と気付いたという。
「しばらく続けているうちに、さまざまな症状が改善されました。まだ耳鳴りや不眠、抑うつは残っていますが、それでもかなり良くなりました」
そう語るヨギ氏は、これからもヨガを続けるつもりだという。通常の運動は歳を重ねればいずれできなくなるが、ヨガは「90歳でもできる」のだという。
毎週土曜日、午後に2時間半のレッスン。終わった後は「頭の中がスッキリして、体の中がきれいになる感じ」が続くのだという。またその状態を楽しむために、1週間、仕事を頑張ろうという気持ちになれる、と笑う。娘に「お父さん、幸せそう」といわれるようになった。
「周りの男性に勧めても、即効性がないので、みんなすぐにやめちゃうんですよね。でも、ストレスの多いIT業界で働く人にとって、ヨガはお勧めですよ」
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