第8回 Linux SeminarからInfoTalkへ――勉強会今昔物語
岑康貴
2009/1/30
無数にある技術者たちのコミュ二ティや勉強会。そこにはどんな人たちが集まり、どんなことを行っているのか。コミュニティのメンバーに話を聞き、その実像を探る。 |
「以前、GLOCOMに所属していたときにオープンソースの勉強会をやっていたんです。1998年ごろかな。またやりたいなと思いまして」
品川にキャンパスを構える公立の社会人大学院、産業技術大学院大学。情報アーキテクチャ専攻の教授である小山裕司氏は、そういって屈託なく笑った。
GLOCOM(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター)で当時、小山氏らが主宰していたLinux Seminar Working Groupを、そのころからLinuxに触れていた読者はきっとご存じだろう。日本におけるLinux黎明期、毎月のようにLinux Seminar(勉強会)を開催し、オープンソースについて語り合っていた。
産業技術大学院大学 産業技術研究科 情報アーキテクチャ専攻 教授 小山裕司氏 |
「オープンソースに詳しい人が集まって、お酒を飲みながら話が盛り上がる。そこから新しいプロジェクトが生まれる。そんなことが起きていました」
GNUライブラリの多言語対応プロジェクトや、Linuxの国際規格を議論する組織「Li18nux(後のOpenI18N、現OSDL)」、現在はIDGジャパンが主催している「LinuxWorld」の開催などは、Linux Seminarがきっかけで始まった。小山氏はこうした技術者コミュニティの持つ「力」を強調する。
「ただ集まってお酒を飲んでいるだけに見えるのだけれど、そこから新しいものがちゃんと生まれていた。昔はサロンに人が集まって新しい文化が生まれていたけど、現代のエンジニアにとっては、コミュニティや勉強会がその役割を果たしているんでしょうね」
それから10年。ベンチャー企業やほかの大学を経て、2008年4月、同大学院に着任した小山氏。彼が中心となって、同年12月からICT関連の話題を扱う勉強会「InfoTalk」がスタートした。
■大学院でオープンな勉強会を
「それ以前から『マンスリーフォーラム』という名前で勉強会自体は存在しました。2007年は6回、開催しました」
さまざまな技術者が集まることで新しいものが生まれる、という勉強会文化を実践してきた小山氏にとって、マンスリーフォーラムは物足りなかったという。もっとオープンにし、外部への広報活動をしっかり行って、参加者を増やそうと考えた。
再スタートを切るに当たって、新たに「InfoTalk」という呼称を付けた。1993年ごろ、インターネットが生まれたばかりの時期に存在した技術系メーリングリスト「infotalk-ML」にちなんだ名前だという。
InfoTalk - AIIT
サイトでは過去の写真や動画、資料などが公開されている
2008年12月19日、第1回InfoTalkを開催。NTTの高田哲生氏とインフォテリアの北原淑行氏を講師として招いた。
「大体40人強、集まったと思います。当日の飛び入り参加が結構ありましたね」
さすがに大学院関係者が多かったが、まったく関係のない外部の参加者も少なくなかった。彼らはほとんどが第2回にも参加したそうだ。早くも常連である。2009年1月16日に開催した第2回はアジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦氏とSkypeの岩田真一氏が講師を務め、50人ほどの参加者が集まったという。
■集客は「手を抜かない」
InfoTalkが扱うテーマは「ICT関連の熱い技術、面白い活用など」と幅広い。
「仮想化技術やユーザーインターフェイスからブログやSkypeの話題まで。今後はIPv6やウイルス、ITと医療とか。Pythonの話題も扱いたい」
もっとテーマを絞った方がいいですかね、と小山氏は笑う。基本的に、毎回2つのテーマを決めて、2人の講師にお願いをしている。「2つあれば、どちらかに興味のある人が引っ掛かりますから」と、小山氏はその狙いを明かした。
小山氏のInfoTalkに関するミッションは企画と広報。いかに旬なテーマを、面白い人に語ってもらうか。そして、それをいかに宣伝して、多く人を集めるかがポイントになる。「毎回2セッション」「テーマは幅広く」というのも、そうしたミッションを勘案してのことだ。
主要IT系メディアから各種イベントカレンダー、果ては自治体や商工会まで、開催情報を送るためのアナウンスリストを作成している。1つ1つを見て来る人は決して多くはないが、ゼロではない。
「10人20人を集めようというものじゃなく、50人60人を集めようとしているわけです。頑張って広報活動をしないと、集まらないですよね」
やるなら徹底的に。手を抜かないことが大事。そう小山氏は語る。
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