第4回 誰にでもできる! 勉強会の作り方
よしおかひろたか
2008/10/29
■勉強会告知
誰でも参加OKの勉強会と決めたら、告知して広く参加者を募ろう。告知場所も、自分のブログ、「mixi」などのSNS、「Twitter」や「Wassr」などのミニブログと、さまざまなメディアがある。すでにその分野のポータルサイトやメーリングリストがあるならば、そこにメールを出すのも手である。おなじみのIT勉強会カレンダーに掲載をお願いするというのも強力な手段である。
勉強会は講師だけでは成り立たない。参加者あっての勉強会である。何かを勉強したいという共通の思いだけで集った人々である。その共通の思いを大事にしたい。
会場の広さで募集人数が決まるが、各種法令により定員以上入場できない会場もあるので、募集人数は明記しておく。定員に余裕がある場合は、多めに募集をかけておく。どうしても当日のキャンセルはあるので、それも折り込む。
告知すべき内容は下記のとおりだ。
- 勉強会の名前
- 開催日時
- 開催場所
- 内容、講師、開催形式(セミナー、ワークショップ、課題の書籍の読書会など)
- 料金。無償なのか、費用の負担方法など(会場費、資料費として、いくらなど)
- 定員
- 参加登録方法、締め切り方法(定員で締め切り。締め切り日など)
- 懇親会の情報。場所、値段、開始時刻、登録方法
- そのほかの情報。最近ではUstream.tvなどでのインターネット中継や、ニコニコ動画、YouTubeなどでの動画配信を行う場合があるので、その有無や、過去の勉強会の資料置き場、関連情報のURLなどを記しておくとよい
■当日のオペレーション
第1回の場合、全員が初対面なので、名札、名刺などを用意しておく。名刺サイズのシールを用意し、手書きの名札を胸に貼るというメソッドもある。実名でなくても、「はてな」やTwitterのid(ハンドル名)で構わない。
初対面同士が多いと、どうしても空気が固くなる。なぜ勉強会に参加したのか、どこで情報を得たのかなどの自己紹介を皆で行ったりする。
休日開催で、午後をたっぷり使える場合は、自己紹介の時間を長めにとることも可能だ。また、休憩時間を長めにとって、参加者同士の交流を深めるという方法もある。平日の夕方開催の場合は時間の関係もあり、なかなか参加者同士の交流が取れない。その場合は、懇親会でフォローする。
主宰者は積極的に声掛けをする。せっかく来てくれたのだから、わざわざ来てくれたことに感謝しよう。できればリピーターになってほしいので、要望や感想などを聞いて改善できる点は改善したい。
何回も開催していくと、常連と初参加者の間に見えない壁が生じることがある。微妙な内輪ノリをかもし出してしまう場合があるので注意したい。
内輪にだけしか分からないネタで内輪で盛り上るのは慎みたい。いろいろな人と交流を深め、勉強会を楽しむことが重要である。
■振り返りとフィードバック
いろいろ気を配っても、どうしても至らない点が多々出てしまう。ある程度は仕方ない。自分なりに振り返りをして、良かった点、悪かった点、次回試してみることなどをまとめておく。参加者にはブログなどで感想を記してもらうようにお願いする。参加者のフィードバックを1つ1つ確認することによって、次回へのエネルギー源とする。
参加者にブログなどで感想をお願いするのは、単に「勉強会の問題点を指摘してもらう」だけではない。良かった点もブログから読み取れるので、それを自分のエネルギー源にできる。自己満足で終わらないようにすること。自分のやりたい勉強会が、参加者にとって参加しやすいもの、あるいは参加したいものになるようにするには、参加者からのフィードバックは絶対必要なのである。参加者にとって、面白かったこと、良かったことを知ることは、次の勉強会を企画する際の指針になる。
自分の興味と参加者の興味を近づける、という行為を意識して行うことが、非常に重要である。自分に興味のないことは続かないし、自分にウソをついて興味のないことをやっても、魂がこもらない。徹底的に(自分に)正直になること。自分の興味のあることだけにこだわる勇気が必要である。そして、勇気を持って貫いた自分を、時には積極的に褒めることも必要である。
勉強会は1人では開催できない。講師を務めてくれた人や、参加者みんなで作り上げるのが勉強会である。講師にとってもプラス、参加者にとってもプラス、主宰者にとってもプラス。誰も損をしない、全員がプラスとなるような勉強会を開催したい。
欲張りに見えるかもしれないが、そのような勉強会の運営は不可能ではない。カーネル読書会は、少なくともわたしがやりたいことをやるという原点から出発しているが、結果として全員がプラスになっている。
■社会人としての注意
会社の設備を利用する場合は、会社に対して事前の了解だけではなく、事後の報告もしよう。会社の設備を利用することによるリスク、メリットについて、同僚、上司にもきちんと説明をし納得してもらう。
仕事との兼ね合いで、周りが大変忙しい時期に1人で勉強会だなんだとハシャいで見えるのは、よろしくない。日程の調整なども、社会人としての自覚を持ってやることは基本中の基本である。
■勉強会の開催で得たものと失ったもの
勉強会を開催することで、わたしは何かを失っただろうか。勉強会大集合でほかの勉強会主催者の皆さんと議論したが、結局わたしはなに1つ失っていないことに気付いた。手間も暇もほとんどかけていない。費用もかけていない。運営といっても、講師とのスケジュール調整、場所の手配、ピザとビールの発注、告知くらいなものである。数をこなしているので、目をつぶっても実施できる。自分の精神的コスト、肉体的コスト、経済的コスト、まるっきりゼロ。持ち出しゼロである。
一方で、さまざまな興味深い最先端のお話を無料で聞きたいだけ聞き、質問もがんがんできて、さまざまな人と知り合えて、大きな宝物をいただけた。
自分がちょっと動いただけで、とてつもない宝物をいただけた。講師の皆さまや参加者の皆さまのおかげである。それをエネルギーとしたからこそ、9年以上の長きにわたって続けることができたのである。ローリスク、ハイリターン。カーネル読書会を開催し、それを続けてきて良かったと本当に思うのである。
カーネル読書会の経験で得たことを中心に本稿をまとめたが、ここで紹介していることは、あくまでわたしがこのようにやってきた事例なので、唯一ベストな方法というわけでも、これでなければいけないという方法でも、常に適応可能だというわけでもない。それぞれの事情に合わせて適宜応用してほしい。
勉強会は誰でも開催できる。継続するのにはちょっとしたコツが必要かもしれないが、そのコツはコピーできるのである。どんどんコピーして、できれば改良して、それを自分の勉強会企画にフィードバックをしていただければ望外の喜びである。
筆者プロフィール |
吉岡弘隆(よしおかひろたか) 2000年6月、ミラクル・リナックスの創業に参加。1995年から1998年にかけて、米国OracleにてOracle RDBMSの開発を行う。1998年にNetscapeのソースコード公開(Mozilla)に衝撃を受け、オープンソースの世界に飛び込み、ついには会社も立ち上げてしまう。2008年6月、取締役CTOを退任し、一プログラマとなった。 所属 ミラクル・リナックス株式会社 日本OSS推進フォーラム ステアリングコミッティ委員 U-20プログラミング・コンテスト委員 セキュリティ&プログラミングキャンプ、プログラミングコース主査 独立行政法人情報処理推進機構、技術ワーキンググループ主査 OSDL Board of Directorsを歴任 カーネル読書会主宰 Webサイト ブログ:ユメのチカラ 日記:未来のいつか/hyoshiokの日記 |
参考:先達を見つけ、自分なりの勉強会を開催せよ
@IT自分戦略研究所 via kwout
(東京エリアDebian勉強会の岩松信洋氏らへのインタビュー)
参考:コミュニティは「知り合い系」から「出会い系」へ変化する
@IT自分戦略研究所 via kwout
(shibuya.pmの竹迫良範氏へのインタビュー)
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