先達を見つけ、自分なりの勉強会を開催せよ
千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2008/2/18
エンジニアが主催する勉強会やイベントが都市部を中心に数多く行われている。自分が普段から気になっている技術的なトピックについての発表を聞き、議論を行う。それは仲間内同士だけではなく、特に面識はなかったとしても同じ技術の基盤を持つもの同士でも楽しい。自分たちでもやってみようと考える人もいるだろう。
しかし、勉強会を開催するとしても、どういったところから始めたらいいか分からないという人もいるかもしれない。そんなときはすでに開催している勉強会をモデルに、自分たちの勉強会を考えてみてはどうだろうか。
そこで今回は、「積極的な発言が勉強会を盛り上げる」で参加させてもらった東京エリアDebian勉強会のメンバーである上川氏、山根氏、岩松氏、小林氏に集まってもらい、勉強会を運営し始めた経緯や勉強会自体のノウハウを聞いた。
■上川純一氏 Debian JP Project会長/Debian公式開発者。勉強会の主催者で、会場手配から配布資料の作成まで手広く担当している。本業は日本ヒューレット・パッカード コンサルティング・インテグレーション統括本部でIT関連のコンサルティング。 ■岩松信洋氏 Debian JP Project副会長。勉強会には初回から参加。自身も勉強会やイベントで発表者を務めることがある。勉強会に参加するようになってから、より深くDebianとかかわるようになった。普段はLinuxカーネルのSuperHへの移植などを業務として行っている。 ■山根秀樹氏 勉強会には初回から参加。自身も勉強会やイベントで発表者を務めることがある。業務はDebianとはまったく関係の無いWindows中心の社内システム管理などやセキュリティ全般を担当。 ■小林儀匡氏 勉強会には5回目から参加。自身も勉強会やイベントで発表者を務めることがある。元々Debian関連の翻訳には携わっていたが、勉強会をきっかけにパッケージのメンテナンスも始めるようになる。現在は東京大学大学院でDebianとはまったく関係のない惑星地球科学を専攻。 |
■Debian最高! という場を作りたかった
LinuxディストリビューションであるDebianに関するさまざまな情報を交換する場として、月1回のペースで開催されている東京エリアDebian勉強会。どういうきっかけでスタートしたのだろうか。上川氏は次のように振り返る。
「Debian関係のイベントというと2002年くらいまで活発に行われていたのですが、その後、だんだんと行われなくなっていました。東京エリアDebian勉強会は2005年からスタートしたのですが、そのころになるとイベントはほとんどなかったですね」
1990年代後半から2000年代前半にかけて、活発に動いていたメンバーが仕事の忙しさなどからだんだんと活動しなっていた。あるいはメンバー同士のコミュニケーションがどんどんIRCのチャットなどで完結することが増えてきたことが、イベント減少の背景としてあったのかもしれない。「2004年とか2005年はちょうど端境期みたいな時期でした」(山根氏)
ここでほかのコミュニティに目を向けるとどうだったのか。YLUG(YokohamaLinuxUsersGroup)やLILO(Linux Install Learning Osaka)といったコミュニティは活発に活動していた。上川氏はそういったコミュニティのイベントにも参加したが、そこに物足りなさを感じていたという。
「そこで扱われていた話題がLinux全般についてだったので、『Debian最高!』といえる場、語れる場がなかったんですよ」
自分が関心を持っているテーマについて話がしたい。その渇望が勉強会開催につながった。
■勉強会の形式は既存イベントを参考にしつつ、合わせていく
勉強会を始めるに当たって、参考にしたのは「百式」の田口元氏と「Passion For The Future」の橋本大也氏が主催する「無敵会議」だ。
「事前課題を参加者に課して、ワークショップを行う形式だと知って、『そういう方法もあるのか』と驚きましたね。それで、無敵会議の形式をそのままやろうと思いましたが、いまは結果として違う形になりました」(上川氏)
東京エリアDebian勉強会は、参加者は事前に課題を提出する必要があるが、発表はその時々で発表する話題がある人が行う。開始した当初は試行錯誤があったという。
「最初の方は上川さんを中心として2〜3人くらいで、資料を作って発表という形でした。そのころはまだ聞いている方も勉強しようという感じではなかったです」と岩松氏は話す。
「2〜3人で回しても結構きつくて、半年くらいたったところで、武藤さん(武藤健志氏:『Debian GNU/Linux徹底入門』著者)とか鵜飼さん(鵜飼文敏氏:Googleソフトウェアエンジニア)といった有名な人を呼んで話をしてもらいました。勉強会のメンバーから発表者が出始めたのが、1年くらいたってからでした」と上川氏。
現在は勉強会の中で話題がどんどん出てくる中で、参加者の興味を引く話題を持っている人や、面白そうなことをしている人がいると「次回発表してくれませんか」とお願いをするという形になりつつあるという。
しばらくは、勉強会に参加する人数はそれほど多くなかったが、OSC(open source conference)などの参加を通じて、定期的に参加する人数が徐々に増えた。いまは大体1回の開催で十数人の参加者がいるという。
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