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パソナテック シリコンバレーツアーレポート 後編

ソフトウェアエンジニアは、クールでセクシーな仕事

岑康貴
2008/8/7

エンジニアにとって、シリコンバレーで働くとはどういうことなのだろうか。日本との違いや、シリコンバレー特有の文化、キャリア形成などを、実際の企業や、現地で働いているエンジニアたちの言葉から考える。

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 前編ではVMwareとヒューレット・パッカード(HP)の「内側」を紹介した、パソナテック主催のシリコンバレーツアーレポート。後編の今回は、シリコンバレーで働く邦人エンジニアのセッションから見た「エンジニア事情の日米比較」と、それを受けてツアーに参加したエンジニアたちがどう感じたかをレポートする。

グーグル、アドビ、元アップル

 シリコンバレーで活躍する、4人の日本人。グーグルのソフトウェアエンジニアの廣島直己氏、アドビ システムズのソフトウェアエンジニアの松原晶子氏、元アップルのソフトウェアエンジニアで、現在はフリーコンサルタントの佐藤真治氏。モデレータを務めたBlueshift Global Partners 社長の渡辺千賀氏を交えたトークセッションは、良くも悪くも「シリコンバレーらしい」雰囲気を持ったものとなった。

左から廣島直己氏、松原晶子氏、佐藤真治氏、渡辺千賀氏

 廣島氏はもともと、営業だったという。「中学生くらいからソフトウェアのコードは書いていた」が、仕事にはしていなかった。しかし、「全国5位くらいになった」という営業が面白くなかったこともあり、1990年代初頭からWeb系の仕事をスタート。「eコマースなどもやったけど、早すぎた」という。その後、1996年にWeb系の会社を興すためにニューヨークへ。しかしドットコムバブルの煽りを受けて会社を畳み、2001年ごろにシリコンバレーに移る。その後はデジタルテレビの組み込み開発に従事。2008年3月にグリーンカードを取得した後、グーグルに入社した。

 松原氏は 大学時代、エンジニアリングとはまったく関係のない文系の学生だったという。大学院生のとき初めて工学系の授業を履修してコンピューターサイエンスに夢中になった。ドットコムバブルで人材不足だったこともあり、1997年にシリコンバレーに来て、エンジニアとして仕事を得ることができたという。「運も良かった」と話す。

 佐藤氏は大学時代、機械工学を専攻。卒業後、「毎日大勢の人を見ながら生活するのは嫌だ」という理由で東京を去り、地元の名古屋に戻ったという。しかし、トヨタに入るのも嫌で、電力会社に入る。なるべく楽な仕事をしながら趣味のコンピュータをやろうという考えだった。その後、途中でアメリカの大学へ。そのままアップルで4年ほどソフトウェアエンジニアとして働いたという。さらに、いくつかの起業をした後、やはりドットコムバブルの煽りを受けて事業を畳み、「しばらく一休み」した。ところが、周りから「仕事をしていないなら」と頼み事が持ち込まれ、いつの間にか「いわゆるコンサルタントみたいなこと」をやるようになったという。現在は、エンジニアリングよりも製品の企画に近いことをしているという。

 佐藤氏の「いわゆるコンサルタント」発言には渡辺氏が補足。「景気の悪いときのコンサルタントとは無職のこと。いま景気は悪くない。景気の良いときのコンサルタントとは、1つの会社に属するのではなく、いろいろな会社から仕事を受けるフリーな立場の者を指す」という。プログラマに多いといい、廣島氏もコンサルティングはやっているという。理由は「頼まれるから」だと話す。

エンジニア像の日米比較

 
 
4人の話に聞き入るツアー一行

 松原氏は「ソフトウェアエンジニアはクールでセクシーな仕事だ」と断言する。廣島氏も、「日本ではエンジニアとしての自分がなかなか肯定されない。きちんと肯定されるところに来てしまった」と話す。佐藤氏は「現在の環境でうまくいかない場合、変える方法は2つある。1つは、そこで頑張ってみる。もう1つは、環境を変える。頑張ったうえで、ロジカルにうまくいかない理由が見つかったら、環境を変えるしかない」と主張した。

 シリコンバレーのエンジニアは日本とどう違うか、との質問には、廣島氏は「給料がいい」と断言。ほかの職種に比べて高水準だといい、「仕事はなくならないし、クビになってもほかの仕事は見つかる。給料もいいし、まじめな人も多いんだから、ソフトウェアエンジニアの男はモテるに決まっている」と笑いを誘った。

 日々の情報収集、インプットの仕方についての質問には、「そんなに勉強する必要はない。必要なときにググればいい」(廣島氏)、「過剰にトレンドを追いかける必要はない」(佐藤氏)という回答が返ってきた。読んでいる時間があったらコードを書いた方がいい、という考え方のようだ。何かのアウトプットのためにインプットはするべきで、インプットが目的化するのは避けた方がいい、と廣島氏は補足した。

グーグルの採用は「やりすぎ」

 グーグルの採用プロセスについて、廣島氏は「僕のブログを見て、リクルーターから連絡があった。来てくれといわれて、行きますというと、過酷な試験が待っているのがグーグル。リスクを冒す意味はないので、始めは受ける気はなかった。しかし、定期的に連絡をくれるので、記念受験のつもりで受けてみることにした」という。試験は「思考プロセスを見る。1時間くらいの試験時間中に、問題に対してプログラムを書くが、最後まで書くわけではない。考えをとにかく口に出しながら、正しい方向に向いた瞬間、次の質問に移る。これが全部で5回くらいある。回数が多過ぎる。やりすぎだ」と苦笑い。ただ、「試験中はだんだん楽しくなってくる。問題も面白いし、試験官がたまにヒントを出してきたりする。こっちも試験官も負かしてやろうという気になってくる」と話した。

 グーグルは「毎週50人以上、新しい人が入ってくる」という。アップルも「基本は入社後、一緒に仕事をする人が審査をする」というが、グーグルは「関係ない部署の人も出てくるし、全員がOKといわないと入れない」と廣島氏は内情を明かした。

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文中、『アメリカへの交換留学の際、誤って工科大学を選んでしまい、周囲がエンジニアばかりという環境に身を置くことになる。しかし、その影響から「コンピュータサイエンスがやりたい」と思うようになったという。』を『大学院生のとき初めて工学系の授業を履修してコンピューターサイエンスに夢中になった。』に変更いたしました。また、『一方、アドビは「そこまででもない。中でいい人を探そうという方針の方が強い」と松原氏は話す。また、アドビも』を削除いたしました。[2008年8月7日16:50、編集部]
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