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「試してみる」がコミュニティ活動の第1歩


「試してみる」がコミュニティ活動の第1歩

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/9/27

 2007年8月に@IT自分戦略研究所が行ったアンケート調査で、開発コミュニティやユーザー会など、会社以外でITにかかわる組織活動に参加しているかどうかを聞いたところ、回答者全体の75.9%の人が「特にそのような活動には参加していないが、興味はある」と答えている。興味はあるが、コミュニティのこともよく分からないし、どういうふうに振る舞ったらいいのかということも分からない。従って、なかなかコミュニティ活動に参加するまでには至らない。そんな人が多いのではないだろうか。

 そこで今回は、これまで数多くのコミュニティの運営に携わり、現在もOSC(Open Source Conference)などのイベントを企画運営している、びぎねっと 代表取締役社長 宮原徹氏にコミュニティ活動に参加する際の心構えについて聞いた。

コミュニティに求めるものに対する違和感

びぎねっと 代表取締役社長 宮原徹氏

 アンケートでは、多くの人がコミュニティに求めるものとして「技術情報が手に入る」「スキルアップにつながる」「人脈ができる」という3つを挙げた。しかし、この求めるものに「違和感がある」と宮原氏はいう。特に違和感を抱いているのは、「技術情報が手に入る」と「人脈ができる」という点。

 「ほとんどの方が「情報がほしい」と挙げていますが、コミュニティに入ったというだけで情報が得られるわけではありません」と宮原氏は話す。技術情報という点では、コミュニティが運営するメーリングリスト(ML)やWiki、掲示板などのログは、自由に見ることができるケースがほとんどだ。情報を得るという点に焦点を当てると、必ずしもコミュニティに参加する必要はない。
 
  人脈については、「人脈」という言葉が指し示す意味や、それを求める目的がそれぞれ違うので、そのとらえ方が難しい。「もし、仕事に役立てたいのであれば、仕事の中で、パートナーや同僚とコミュニケーションを取ることが第一」と宮原氏は話す。

 宮原氏によるとコミュニティの人脈は、あくまで補完的なものだという。自分で調べ物などをしているときに「そういえば……」と相談できるくらいというもの。「それを求めている人がこんなに多いことに違和感があります」と驚く。

 「この3つをコミュニティ活動のメリットだというように期待してコミュニティに入ると、コミュニティに溶け込むことは難しいだろうと思います」

情報発信をする姿勢

 それでは、コミュニティに溶け込むにはどうしたらいいのだろうか。そこで求められるのは「情報を教えてもらう」という受け身の姿勢ではなく、「情報を発信する」という姿勢だ。

 宮原氏によるとコミュニティは、情報交換をしている人たちが、情報発信をするための基盤、あるいはすでに何かを作っていて、それを発表するための場として形成されるという。つまり、コミュニティに参加している人たちは、自分たちの情報を発信したいという意欲が高い。

 「単純に知的好奇心を満たすだけでなく、『これはすごくいいから、俺の中だけでとどめて置けない』『誰かに知らせたい』というモチベーションを誰もが持っているんですよね。それが溢れている人たちが中心になっています」(宮原氏)

 情報を発信している人は、日常的に何かを「探して調べて検証する」というサイクルを繰り返している。気になることがあったら、自分がまず試してみる。その姿勢が重要だ。そしてその結果をMLや掲示板、あるいはブログなどで発表してみる。すると同じような考えで、調べている人が出てくる。実行環境や作業の手順など、自分なりに持っている情報を整理して発信し、それに対してほかの人が同じような立場からフィードバックして、互いの情報が混ざり合い、徐々に収束していく。
 
  「自分で確かめてない技術的な情報は基本的に信用してはいけない」。これが宮原氏の持論だ。宮原氏は気になることや新しい技術が出ると、すぐに自ら触ってみるという。「やはり自分の目で確かめないといけない。生きた情報かどうかは結局のところ、自分自身がその情報を確かめているかどうかが鍵になりますよね」

 「そういったサイクルやそこで発信されている情報をはたから見ていても、果たしてその情報を活用できているのかなと思います」と宮原氏。

笑われてもいいから、輪の中に飛び込む

 技術を身に付けるために一番確実な方法は、自分自身でやってみるということだ。例えばMLで誰かが「○○をしようと思っているんだけど、うまくいかない」という質問があったとしたら、実際に自分で試してみて、それに答えてみる。課題に対する答えだけが情報とは限らない。課題自体も重要な情報だ。「いまどんな問題が起こっているのか」ということを知ることができるのもコミュニティのメリットの1つだという。

 「問題意識なく、情報をくださいというのが一番よくないと思っています。そういう場合はコミュニティに入らずとも雑誌やWebサイトで情報を得ればいい。情報をどんどん発信することで自分のキャラが確立されていくわけですよね。どんなくだらないことでもいいから、自分の持っている情報を出す。それが一番です」と宮原氏は力説する。

 しかし、現代社会では自分がやろうと思っていたことがすでに実現されていたり、発信しようと思っていたことが、すでにほかの人の手によって発信されていたりする場合が多々ある。「いまさらこんなことを……」と二の足を踏んでしまう人もいるのではないだろうか。

 宮原氏は「そんなことは気にしない」という。

 「コミュニティの中に入って、笑われてもいいからやることで上達への道が開けます。『上達してから入る』では、いつまでたっても上達はしないということです。見ているだけでは上達しない。まねしても笑われてもいいじゃないですか」

 コミュニティは先に活動していた人が、より多くの情報を得ている。これはどうしようもない事実だ。古くからそのコミュニティに参加している人にとっては、そのテクノロジについても暗黙知的なことが膨大に存在する。新参者には厳しい環境かもしれない。しかし、そうしたことにくじけてはいけない。

 「コミュニティの中にも『それは既出だから』という人がいますが、そういう人は心が寂しいですよ。そういう反応をするよりは、『頻出事項だからFAQにしよう』とか建設的な方向で話ができればいいわけで。でも、余計な突っ込みをする人は徐々にフェイドアウトしていきますから、心配しなくてもいいと思います」と宮原氏

 人の目を気にせずに、先人たちが歩いた道をたどれるかがポイントとなる。

自分のできる範囲からこつこつ試す

 「コミュニティはエンジニア育成機関ではありません」。そう宮原氏はいう。○○してもらうという姿勢ではなく、自分がやれる範囲でさまざまなことをやってみることが最も重要だ。例えば、セミナーや勉強会も受ける側として参加するだけではなく、自分の関心のある話題で企画する側に回ってみるのもいいだろう。

 その準備だけでも多くの知識やスキルが得られるだろう。もし、自分の知識やスキルに不安があっても、「○○について一緒に試してみませんか」という呼びかけでもいいだろう。もしかしたら、それについて教えてくれる人が現れるかもしれない。とにかく、少し高めの目標を設定して、自分の手であれこれ試しながら、着実に経験を積む。その姿勢が求められるだろう。


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