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勉強会カンファレンス2009レポート

「勉強会に勉強だけをしに来るヤツは素人」

岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2009/6/19

勉強会について議論するコミュニティ「MetaCon」が、勉強会開催の情報やノウハウ共有を目的としたイベント「勉強会カンファレンス2009」を開催した。勉強会主催者たちが集まったユニークなイベントの模様をレポートする。

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 IT勉強会の認知はこの1年で大きく広がった。@IT自分戦略研究所でも、よしおかひろたか氏の「初めての勉強会」や、はなずきん氏の「IT勉強会に行こう!」などの連載を通じてIT勉強会の魅力を発信し続けてきた。

 こうした勉強会ブームの中、「勉強会勉強会(MetaCon)」は発足した。「勉強会を主催している人たちのための勉強会の運営、コンテンツなどを議論するグループ」である、とWebサイトに記載されている。前述のよしおか氏やはなずきん氏を始め、さまざまな勉強会主催者たちが情報交換を行っている。

 6月6日、日本オラクル本社にて、MetaConが主催する「勉強会カンファレンス2009」が開催された。勉強会に関するカンファレンスという極めてユニークなこのイベントは当初、定員80人の予定だったが、参加希望者の多さから100人に定員を変更。最終的にはキャンセル待ちが出るほどの注目を集めた。「勉強会の達人」が集まったカンファレンスの模様をレポートする。

「伝説のカンファレンスにしたい」

 「目覚まし勉強会」と題して、勉強会に使えるツールやノウハウに関するプレゼンテーションが行われた午前中に引き続き、13時からカンファレンス本編が始まった。

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 MetaConを主催するよしおか氏によるあいさつと趣旨の説明からスタート。よしおか氏は「勉強会の価値を高める」「勉強会の価値をもっと広く知ってもらうための方法論を議論する」「勉強会運営の革新を加速する」「勉強会主催者のネットワークを作る」という4つのねらいがあると説明。勉強会に関する苦労話や楽しみ、悩み、喜び、運営のTipsなどを共有し、勉強会の「開催のコスト」を下げ、「開催のメリット」がコストを上回ることを目指すと語った。

 「今日は伝説のカンファレンスにしたい。今日この場で交わされた情報は公開が原則。未来のいつか、誰かにこのカンファレンスが発見される」と、よしおか氏は熱く語った(ちなみに、よしおか氏の個人ブログは「未来のいつか」という名前である)。その言葉通り、カンファレンス中にTwitterで実況中継する参加者が現れ、カンファレンス終了後は数多くのブログで参加者たちによる情報発信が行われた。「metacon2009」という公式タグで検索すると、当日の参加者たちのブログエントリーが効率的に見つけられるはずだ。

よしおかひろたか氏「伝説のカンファレンスに」

「勉強会エコシステム」のススメ

 セッション1のテーマは「社内勉強会」。「Genesis Lightning Talks」の主催者、さとうようぞう氏がモデレータとなり、papanda氏、ebacky氏、Kwappa氏、吉田茂氏の4人がそれぞれ「社内勉強会」の開催を通じて得た知識やノウハウを披露した。

 1人目はSIer(システムインテグレータ)に勤めるpapanda氏。「人が集まらない勉強会の果てに辿り着いた『新しい社内勉強会』」と題したプレゼンテーションで、社内勉強会に人を集める工夫について紹介した。

勉強会の意義を熱く語るpapanda氏

 papanda氏は社内勉強会にありがちな問題として「人が集まらない」という課題を提示。人が集まらない理由はいくつかあるが、特に多いのが「(勉強会の内容に)興味がない」ということだった。

 「勉強会の内容について、興味がない者同士の集まりになっている。これは寒い。でも、周りが温まるのを待っているほど人生は長くない。そこでわたしがやったのが、『社内でデブサミ(Developers Summit)をやる』ということでした」

 papanda氏は「社内版デブサミ」について、「自分たちで作るお祭り。社内にいる、あまり知られていないけど、何かに尖った人に話をしてもらう。運営はボランティアで、参加者の熱量を上げることを狙う」と説明。実際に開催を始め、継続するようになり、「社内の空気を少し変えられるようになった」という。しかし一方で、「(開発の)現場からやや遠くなってしまった」という反省があり、そこから「開発の楽しさを見つけ、広げる。そして、開発の現場を前進させる」というコンセプトを持ったコミュニティ「DevLOVE」の立ち上げに至った。DevLOVEの勉強会はこのコンセプトに基づいて、社内に留まらず、社外へと広げたという。ただし、その結果「社内勉強会がなくなってしまった」という落ちがついた。

 「勉強会はしょせん、主催者のエゴ」なのではないかとpapanda氏は語る。では、参加者が勉強会を「自分のもの」であると思えるようにするにはどうしたらよいのだろうか。papanda氏は「勉強会を自分たちで作れるようにする」という回答を提示した。まず何かに興味を持つ人を集め、勉強会で扱いたいテーマを出し合う。そして、テーマごとに勉強会を作るのである。それぞれの勉強会はそれぞれの参加者に運営してもらい、月1回で全員集まって「メタ勉強会」を開催。メタ勉強会でまた新しい勉強会を作り、人が集まらない勉強会はつぶす。メタ勉強会では、それぞれの勉強会を横断するようなトピックを扱う。勉強会に参加した人が勉強会を作っていくという図式であり、papanda氏はこれを「勉強会エコシステム」あるいは「勉強会コロニー」と呼べるのではないか、と語った。

 「そこまでして勉強会を開催する意義とは何か」という問いについて、papanda氏は次のように話した。

 「まず、純粋に楽しい。それから、仕事ではないので、失敗してもいい。さらに、知識だけでなく、ほかの人が話す経験も共有できるのがいいところ。同じ事例でも、聞く人によってさまざまな知恵が生まれるので、話し手の数だけ知恵を成長させる機会がある」

 また、質疑応答で「社内勉強会を『DevLOVE』にして社外に開放したとき、上司の抵抗はあったか」という質問に対して、papanda氏は「抵抗はなかった。あるタイミングで上司を巻き込むようなアクションを取った。上の人は、下の人が思っているほど冷たくなくて、熱いことをやろうとすると『やれやれ』といってくれる。そういう上司を見つけることが大切」と回答。「上を気にしすぎて、びくびくする必要はない」と断言した。

上司を説得するには、情熱だけでは足りない

 2人目はebacky氏。「社内外のエンジニアを参加対象者とした勉強会」と題し、社内勉強会に社外の人間を招こうとしたときの苦労について語った。

 ebacky氏はよしおか氏やpapanda氏との出会いから勉強会の開催に興味を持ち、「社内で自分がやったら、自分の話が上司に通りやすくなるのではないか」という打算的な目的から勉強会を始めたという。さらに、社外のエンジニアも社内勉強会に招こうと考えていたが、上司からの抵抗が大きかったと語った。

上司との戦いを振り返るebacky氏

 勉強会をしよう、といったときに、「現場の人(勉強会をやりたい人)」「管理職(上司)」「経営者」の3人のプレイヤーが登場する。ebacky氏はまず「管理職」を説得しようとしたという。だが、「現場の人」が熱い思いをどれだけ語っても、「管理職」は「やりたいならいいけど、コストやリスクはどう考えているの?」と考える。「現場の人」は情熱で「管理職」を動かせると思いがちだが、「管理職」は「こいつは情熱だけで、具体性がない」と感じてしまう、とebacky氏は自身の経験を振り返りながら語った。

 勉強会を開催するまで約3カ月、「管理職」と敵対関係になったというebacky氏。だが、最終的にebacky氏は「管理職の人たちは、経営者の人たちに『現場はこれをしたいといっている』と伝えなければいけないが、それに手間をかけたくないと考えている」ということに気付く。そこで、コストやリスクについてまとめた資料を自ら作成し、社外の人間を勉強会に招くメリットがリスクを上回ることを説明したのだという。

 また、「経営者は若い人の新しい提案を期待しているが、やみ雲に提案を持ってこられても困る。きちんと手順を踏んで実現してほしい」と考えているのだとebacky氏は解説。社内の関係者すべてを納得させて実現することに意味があり、それによって次から別の提案を持ちかけるとき、「こいつはコストやリスクについてきちんと考えてくる」と思わせることができるのだ、と説明した。

勉強会に勉強しに来るヤツは素人!?

 3人目はKwappa氏。Ustream.tvで外部に中継を公開する社内勉強会「東京Basic Technology勉強会」の主催者であるKwappa氏は、「社内勉強会開催の成果とTips」について紹介した。

 東京Basic Technologyの前身となる社内勉強会を開催するきっかけとして、Kwappa氏は「突如、Ruby on Railsの教育が必要になった」と説明。上司に申請したところ、抵抗も圧力もなく、あっさりと承認されたという。成果提出も一切求められず、「主催者としてはラッキーな状況でスタートできた」(Kwappa氏)。

社内勉強会の成果を語るKwappa氏

 ノー残業デーを利用して19時から1時間程度の勉強会としてスタート。定期的に実施し、全16回の実績があるという。出席率が50%以上の「熱心に来る層」が全体の4割。また、参加者のうち63%が最低1度は講師を経験しているというデータが示された。講師のリピート率は70%であり、「講師をやると楽しい、という気付きを提供できたのではないか」とKwappa氏は語った。

 また、データに表れない成果として、Kwappa氏は「勉強する習慣がつく」だけでなく、勉強会の場そのものが社員同士の「コミュニケーションツール」として機能することに気付いたという。

 好評だったテーマとしては「Ruby on Rails入門」「アルゴリズムとデータ構造入門」「Webアプリのセキュリティ入門」が挙げられた。これらに共通するのは「興味はあるけど未経験」「おろそかにしがちな基礎」という2つのキーワードであるとKwappa氏は分析した。

 最後にKwappa氏は、「エンジニアの未来サミット0905」での高井直人氏の「勉強会に勉強しに来るヤツは素人」という発言を引用。「講師を務めることでより成長できるし、モチベーションへの良い影響やコミュニケーションの促進といった側面もあるので、ただボーっと話を聞きに来るんじゃなくて、もっとほかのこともしないとダメ」と主張した。

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