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コラム:自分戦略を考えるヒント(31)
できる人ほど忙しい、この悪循環を解消する

堀内浩二
2006/7/27

 こんにちは、堀内浩二です。前回の記事「『Getting Things Done』と自分戦略」に対し、こんな質問をいただきました。

 せっかくLifehack(ライフハック)を駆使して仕事を早く仕上げても、「早く終わったのなら、これやってくれない?」となるのがオチではないでしょうか。仕事ができる人ほど仕事が振られ、忙しくなるという悪循環から脱出する方法はないのでしょうか。

 そこで今回は、「生産性を上げて確保した自分の時間を他人に取られない方法」について考えてみましょう。とはいっても、「オフィスにいないようにする」といった、「仕事が振られないようにするコツ」のような話ではなく、やはり自分戦略につながる文脈で。

「できる人ほど忙しい」悪循環の解消、5つの心得

(1)「仕事のできる人に高い期待がかかるのは当然」であることを理解しよう

 まず認識しておくべきなのは、「仕事のできる人に高い期待がかかるのは当然」ということ。組織が、成果を出した個人に、より大きな成果を求めるのは自然な発想です。それが個人にとって悪循環となるか好循環となるかは、個人の希望と与えられる仕事の性質との兼ね合いになります。

 質問者の方も、もし新しく振られた仕事が自分にとって好ましい仕事だったなら、「自分の時間を取られた」とは感じないでしょう。悪循環と感じるということは、これまでの経験から、成果を出しても自分の望まない仕事を依頼されるばかりだったということだと思います。

 ですから、悪循環の解消は、

「せっかく確保した空き時間を取られないように逃げ回ろう」

ではなく、

「この成果をテコに、自分にとってより有意義な仕事をゲットしよう」

という方向で考えるべきでしょう。

(2)「この仕事の先」を考え、他者と共有しよう

 先のことを考えるのは面倒です。そのため、忙しい忙しいといって目の前の仕事に逃避している人はたくさんいますし、誰しもそういう時期はあると思います。不満を解消するために勇気を奮って新しいチャレンジをするよりも、不満をいいつつ慣れた仕事で忙しく働いていた方が心理的に楽だったりします。

 せっかく仕事の生産性を高めるのならばその先も、つまり自分は何のために生産性を高めているのか、時間をつくって何をしたいのかを考えてみましょう。そして可能な限り、その目標は上司や周囲と共有しておきましょう。例えば「この仕事が終わったらこれをやりたいんですけど」と伝えるということです。それを聞いてしまった以上、上司もその意向を無視して仕事を振ることに抵抗を感じてくれるでしょう。

(3)「自分とのミーティング」をスケジュール

 これは戦略というよりも戦術というレベルの話ですが、上記のようなことを「考える」時間をしっかり取りましょう。頻度も、1〜3カ月に一度くらいで十分だと思います。

 スケジューラに「自分とのミーティング」を書き入れる人がいますが、これは良いアイディアですね。

(4)「交渉」で仕事のポートフォリオを変えよう

 忙しくなるほど仕事が振られるということは、実力を認めてもらっているわけです。であれば、仕事を振られたタイミングで、交渉を試みてみましょう。

 交渉といっても報酬を上げろというような話ではありません(それを交渉してもいいですが)。また、あなたがフリーランスでない限り、ほとんどの仕事は結果として受けざるを得ないでしょう。しかし、「これやってくれない?」といわれてから受けるまでのわずかな時間、あなたがやや強い立場にいるのも確かです。

 そこで例えば、新しい仕事を引き受ける代わりに、自分が抱えていて望ましくない仕事を手放せないかどうか尋ねてみることはできないでしょうか。そのような交渉を積み重ねられれば、低いリスクでじわじわと自分のやりたい仕事を実現していけますよね。

 ポイントは「仕事を振られたタイミングで」というところ。そのためにも、(2)と(3)をしっかりこなす、つまり前もって戦略的に考えておくことが重要なのです。

(5)「全体最適」を意識し、組織としての生産性を高めよう

 仮に、やるべき作業が決まっているプロジェクトがあったとします。もしメンバー全員がタスクの好き嫌いに関して同じ嗜好(しこう)の持ち主であったとして、上のように振る舞ったらどうなるでしょうか。

 これは、いわゆるゼロサムゲーム(全員の得点の総和がゼロになるゲーム)になります。うまく成果を出した人が、そうでない人にイヤな仕事を押しつけるということです。お互い仲間として仕事をする以上、どうにかしてプラスサムのゲームを設計しましょう。

 幸いなことに、人の好みには多様性があります。まずは各人の希望をはっきり述べたうえで、ミスマッチを減らすこと。他人の希望も尊重すること。そのうえで残った仕事は、応分の責任を進んで引き受けること。そういったことで組織の生産性を高めるために何ができるかを考えましょう。

 組織としての生産性を高めることは、結果的に「できる人ほど忙しい」悪循環を緩和することにもなります。これに限らず、自分だけでなく組織として成果を最大化していこうという発想が、個人にとってもプラスになることは多々あるはずです。

「ピーターの法則」から導かれる「ちょっと変人であれ」というコツ

◆さらに高い成果を求められ続けるその行く末は?

 ここで、ちょっと違った視点からも考えておきたいと思います。成果を出せばさらに高い成果を求められるのは「当然」という話をしました。それを突き詰めていくとどうなるのでしょうか。

 階層型の組織においては、有能な人には「より高い職位」という報酬が与えられます。職位はそのままでいいから給与だけアップしてくれといっても難しく、成果を挙げた人はたいがい昇進していきます。

 昇進するにつれ仕事の内容も変わっていきます。昇進が止まるのはいつかと考えてみると、皮肉なことに、高い成果を出せなくなった(無能となった)ところです。これは「ピーターの法則」(階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのの無能レベルに到達する)として知られています。

 実際には、多くの組織でこういった皮肉な現象を回避する手段が講じられています。現代の企業組織においてはピーターの法則の当てはまるケースは減ってきていると考えていますが、「組織の求めるものと個人の求めるもののズレが徐々に大きくなってきてしまう」ことがあるという点で参考にしたい発想です。

「ちょっと変人であれ」

 「ピーターの法則」には、この法則から逃れるために創造的無能であれということが書いてあります。自分が最も成果を挙げられる(そしておそらくは最も好きな)ポジションにとどまるために、組織からはじき出されない程度に変人たれということです。

 今回考えた5つの心得は、わりあい「まっとうな」仕事環境を想定しています。とにかく長時間労働を長期間強いられたり、交渉の余地などみじんもないという状況もあるかもしれません。そんなときには、この「ちょっと変人たれ」を試してみるのもよいかもしれません。

参考文献
ピーターの法則』(ローレンス・J・ピーター/レイモンド・ハル著、渡辺伸也訳、ダイヤモンド社、2003年12月、1470円)

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役。早稲田大学大学院理工学研究科(高分子化学専攻)修了。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。1998年より米国カリフォルニア州パロアルトにてITベンチャーの技術評価プロジェクトに携わった後、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。2000年に帰国、ソフトバンクと米国VerticalNet社との合弁事業において技術および事業開発を担当。

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