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特集:転職市場予測

第4回 転職、温故知新。不況期はトレンドを見極める時期


岡本哲男(テクノブレーン IT人財担当 部長)
2009/9/29

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ITエンジニアが不況の時期にすべきこと。それを探るために、過去を振り返る。
過去の不況期、ITエンジニアはどこに転職していたのか。人材業界にかかわって20年のベテランキャリアコンサルタントが、過去の不況から得た教訓をアドバイスする。

■不動産バブル、ITバブルとは質が異なる世界同時不況

 いわゆるリーマンショックの後、世界同時不況に陥って以降、IT業界はもちろんですが、すべての業種に関して企業の採用活動が冷え込んでいます。われわれは、過去にも大きな景気後退を経験してはいますが、今回の不況とは性質は異なっていました。

 1990年から不況の兆候が見え始め、2000年代前半までに起こったバブル崩壊。これは、土地の価値が右肩上がりに上がるという日本での土地神話が崩れて発生した不動産バブルの崩壊でした。ただし、この不況は、日本国内に限定されたものであり、リストラや採用抑制を行っていたのは、国内企業だけでした。実は、この時期、日本勢の動きとは対照的に積極的に採用を行っていたのが外資系企業です。

■バブル崩壊で採用を押さえた日本企業、積極的に進出した外資系企業

 当時を振り返ると、SAP R/3が登場しERPが日本でも導入され始める動きが見られました。さらに、IBMやサン・マイクロシステムズなど、後のドットコム市場を席巻する企業や、いまはなきDEC(Digital Equipment Corporation)などがITエンジニアの転職市場を下支えしていました。この時期、アメリカから見れば不況期の日本は有望な市場として見られていたのでしょう。こぞって外資が進出して、一種の外資ブームを起こしたくらいでした。

 日本が不動産バブルの負の遺産を清算するのに手間取っている間に、2000年ごろにはインターネットが普及しました。アメリカでは、ITバブルが発生して、前述した外資系企業は、こぞってITエンジニアを採用しましたし、日本の企業でもIT系であれば、積極的な採用を行っていました。

■ITバブルが崩壊。その影響はゆっくりと日本にも波及

 アメリカの好景気を支えていたITバブルが崩壊したのが2002年。好調だった外資系企業は不況に陥ります。この時の不況は、アメリカで発生し、ダイレクトに影響を受けた外資系企業がリストラを行いました。

 対照的に、国内企業は不動産バブルの傷が癒え始めていた時期で、日本の製造業における採用人員数が堅調に伸び始めていました。自動車関連やプラズマディスプレイ関連、組み込み分野でエンジニアの重要が伸びていきました。

■世界同時不況は、すべての業種が採用を凍結

 2008年秋のリーマンショックに端を発する、世界同時不況はこれまで経験した不動産バブルとITバブルとも違った、壮絶な不況であるといえます。人材業界にかかわって20年になりますが、すべての業種が突然採用をストップしたという経験はありませんでした。不動産バブルであれば外資系企業が、ITバブルであれば日本の製造業が積極的な採用を行っていました。市場から退くプレーヤーがあれば、代わって登場するプレーヤーが必ず存在していたのが、これまでの不況でした。

 ところが、今回の不況では一時的にではありますが、プレーヤーが誰もいなくなったのです。穴に閉じこもって、冬が去るのを待つ状態が、2009年初頭から続いているのです。

 ただし、悲観するばかりではありません。下のは、テクノブレーンにおける書類通過率と株式市場の関係図です。株価に比べると、求人は遅行指数と呼ばれ、リアルな景気の動向に対して遅く反応します。不動産バブルが崩壊した2000年、ITバブルが崩壊した2002年、世界同時不況が起きた2009年に注目してください。株価が底を打った1カ月後、書類通過率も底を打ちます。そして、株価が上昇するにつれて、書類通過率も上昇する。つまり、求人が回復していることが読み取れます。

図 テクノブレーンにおける書類通過率と株式市場の関係図(出典:テクノブレーン)

 2009年の落ち込み方は、これまでにない深い谷底であり、この不況の深刻さを表しています。ただし、最近の株価は底を打った感があり、このまま行けば株価の回復と共に、求人も回復するシナリオが実現するかもしれません。これは、あくまで楽観的な予測ですが……。

不況は新しいテクノロジが生まれる時期でもある  

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