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ITエンジニアを続けるうえでのヒント〜あるプロジェクトマネージャの“私点”


第36回 「面倒」なオフショアを、それでも行う3つの理由

トライアンツコンサルティング
野村隆

2008/10/24

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将来に不安を感じないITエンジニアはいない。新しいハードウェアやソフトウェア、開発方法論、さらには管理職になるときなど――。さまざまな場面でエンジニアは悩む。それらに対して誰にも当てはまる絶対的な解はないかもしれない。本連載では、あるプロジェクトマネージャ個人の視点=“私点”からそれらの悩みの背後にあるものに迫り、ITエンジニアを続けるうえでのヒントや参考になればと願っている。

 この連載では、システム開発プロジェクトにおけるリーダーシップを中心に、「私の視点=私点」を皆さんにお届けしています。

 今回の内容は、リーダーシップトライアングルのManagementに関係します。Managementについては、連載第9回「ソフトウェアは目に見えない」を参照いただければと思います。

図1 リーダーシップトライアングル。今回は「Management」に関連する内容を紹介

オフショアの理屈は分かったが

 前回の記事「何でオフショア開発しなくちゃいけないの?」では、マネジメントの視点から、オフショア開発の有効性を説明しました。「少子高齢化、グローバル化の潮流の中で、オフショアが有効な手段となり得る」という趣旨です。

 私の経験では、このような説明で、多くの方にある程度納得してもらうことができます。

 しかし、実際のシステム設計・開発現場のリーダー、メンバーに、「本音のところではなかなか納得できない」という意見をもらうこともあります。典型的な現場の意見は、「理屈は分かった。でも、なぜ、私がオフショアの当事者にならなくてはいけないの? 正直、面倒なだけ。できれば避けたい」というところでしょう。

 例えば、オフショアのパイロットプロジェクトのメンバーを選定する、大規模プロジェクトで一部の開発をオフショア化するに当たり、チームを決定するという場面では、「私はやりたくない。ほかの人が対応してほしい」という本音を聞くことがあります。

オフショアを嫌う人の理由

 このようにオフショアを避けたいと思う人たちが、その理由として挙げるのは、以下のようなことでしょう。

・気心の知れた人と仕事をした方が生産的

 まず、「気心の知れたメンバーと仕事をしたい」という理由を聞くことがあります。

 例えば、何年も付き合いのある協力会社がある場合、その会社のメンバーと仕事をすれば、過去に共に作業をした経験に基づいて作業を依頼することができます。

 「前回のプロジェクトの設計成果物と同じレベル感で成果物を作ろう」「3年前のあのプロジェクトで使ったテスト手順書を活用してテストを計画しよう」のように、作業を円滑かつ正確に行うことができるでしょう。

 「国内の気心の知れたメンバーとなら、生産性の高い作業ができる」「オフショア化してしまうと生産性が低くなり、結果としてのトータルコストが割高になる」という理論を展開する人は少なからずいます。

・言語の壁がある

 「言葉の壁があるから」という主張をする人もいます。

 中国でオフショア開発をする場合、一般的に、中国側メンバーに日本語ができる人がいるといわれます。しかし、中国のプロジェクトメンバー全員が日本語を話せるということはないです。一部のメンバーのみということが通例です。

 日本語ができるといわれるメンバーでも、日本語のレベルが低いこともあります。「てにをは」が少々おかしいくらいであればいいのですが、何をいっているのか分からない、日本語でこちらが伝えたことが正しく伝わらない、というケースはあります。

 一方、インドのような英語圏でのオフショア開発では、英語でのコミュニケーションがメインとなります。ITエンジニアに英語の読み書きが得意な人は多いですが、会話となるとちょっと厳しい、という人が多いのも事実です。さらに、インド人の英語は、発音やイントネーションが欧米人と異なることがあります。

 ですので、「わざわざ言葉の壁を乗り越えてまでオフショア開発するのは正直面倒だし、品質にも問題が出てしまう」と考える人が多いのでしょう。

・文化の違いから来るストレスがある

 さらに、「そもそも文化が違うから」という意見を聞くこともあります。

 例えば「納期についての考え方が違う」などです。私の経験からもいえますが、欧米でのプロジェクト経験を基礎としたオフショア開発メンバーは、平気で納期をずらす傾向にあります。仕様が変わった、仕様に追加があった、他チームのスケジュール遅延が自分に影響したなどの場合、悪びれずに「納期が延びます」という一方的な通告をしてくることがあります。

 確かに、オフショア開発メンバーのいうことも、理屈としては理解できます。自分のチームの作業に影響する現象が発生した場合、作業の納期が後ろにずれるのは当然というわけです。

 しかし日本人の感覚としては、納期をずらすということは重要な意思決定事項です。すべての考えられ得る回避策を講じたうえで、やむを得ず発動する最後の手段と考えるのが通例ではないでしょうか。

 オフショア開発メンバーが、簡単に「納期が延びます」と決定してしまうと、いちいち納期の重要性や回避策を講じたかどうかなどの確認をしなければなりません。

 このように、感覚のずれている相手とのコミュニケーションは、ストレスはたまり、コミュニケーションコストも過多となり、プロジェクトの進ちょく・予算にも影響を与える場合があります。


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