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パソコン創世記
嚆矢アルテア アメリカに生まれる

アルテアの限界

富田倫生
2009/11/27

「組み立てキット アルテア8800」へ

本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

 当時のミニコンピュータの本体をまねたアルテアには、キーボードもディスプレイも付いていなかった。組み立て終わったユーザーは、前面のパネルに横一列に並んだスイッチを上下させて、アルテアへの入力を行うことになった。ごく短いプログラムを入れ終わると、アルテアは確かに指示どおりの手順をなぞった。ただしアルテアが動いたのだという事実と処理の結果は、横二列に並んだ発光ダイオードの点滅でしか確認できなかった。プログラムは、機械語と呼ばれる0と1の組み合わせによって書くしかなく、入力の最中に1度でもスイッチを入れ間違えればはじめからやりなおしとなった。

 アルテアでは、満足な入力も出力も不可能だった。

 コンピュータの記憶容量は通常、アルファベットの文字を1つ表すことのできる8ビットをひとまとまりとした、バイト単位で表現される。

 これに従えば、アルテアの容量は256文字分に相当する256バイトしかなかった。しかもプログラムやデータを保存しておける外部記憶装置はなく、いったん電源を切ればすべての情報が失われた。

 たとえて言えばアルテアは、押し入れの奥から引っ張り出してきた8ビットのパーソナルコンピュータから基板だけを抜き出し、メモリーのあらかたを捨て、周辺機器を接続するインターフェイスも取りはずし、代わりに入力用のスイッチと小さなランプだけを取り付けたような代物だった。

 確かに慎重に事を運べば、電子の脳が動いたことだけは確認できたが、アルテアで取りあえずやれることのすべてはそこまでだった。

 このアルテアの写真を『ポピュラーエレクトロニクス』は、「市販のモデルに肩を並べる世界初のミニコンピュータキット」との賛辞を添えて、表紙に載せた。

 「1000ドル以上お得」の文字に引かれて、エド・ロバーツとMITSのスタッフのビル・イェーツの手になる記事を開くと、アルテアは400ドル以下で作ることができるとのタイトルが読者の目に飛び込んできた。本文を読み進むと、アルバカーキーのMITSの連絡先が記載されており、同社から完全なキットが397ドルで提供されるとの記述があった。

 ばらで買えば8080が350ドルすることを考えれば、この価格はじつに魅力的だった。

 何の役に立つわけでもないだろう。だが397★ドルでともかく、自分のコンピュータが手に入るのだ。

 ★エド・ロバーツとビル・イェーツの記事は、『ポピュラーエレクトロニクス』の1975年1月号と2月号に分けて掲載された。MITSの広告は同誌3月号から掲載されているが、記事では397ドルとされていたキットの価格が、ここでは断りもなく439ドルに変更されている。498ドルだったはずの組み立て済みモデルが621ドルと大幅に値上げされているのは、アルテアの組み立てがいかに厄介か、MITS自身がこの間にはっきりと認識したということだろうか。

 ちなみに3月号のMITSの初めての広告は、『ポピュラーエレクトロニクス』に記事が掲載されて以来の同社の熱狂の日々の記述から始まっている。

 「私たちはただ電話を受けるだけのために、余分な人員を雇わなければならなくなりました。すでに数百の注文書を頂戴しており、アルテア8800コンピュータシステムの無料パンフレットを、数千部発送しております。加えて何より喜ばしいことに、私どもは素晴らしいオプションをあらたに多数用意いたしました」。

 ただしこの広告のどこにも、アルテアを出荷しはじめたとの記述はない。

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