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パソコン創世記
日本電気、電子計算機本流の系譜

浜田俊三とNEC

富田倫生
2009/12/16

「日本電気のコンピュータ事業」へ

本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

 1959(昭和34)年4月、高度経済成長の歯車がまさに回りはじめようとしていた時期に、浜田俊三は山梨大学工学部電気工学科を卒業して日本電気に入社した。

 通信を専攻した浜田だったが、4年生の夏までこの会社の名前は知らないでいた。

 担当の教授に夏休みの実習先として日本電気を指示され、玉川製造所★で1カ月を過ごした。

 ★日本電気関係者の証言を集め、資料を収集していく段階で首をひねってしまったのが、事業拠点の名称だった。「玉川」に例をとれば、玉川向製造所、玉川事業所、玉川事業場、玉川事業部などさまざまな名前が登場するため、資料のまとめの段階では大いに混乱させられた。

  この疑問は、同社の正史である『日本電気株式会社七十年史』(日本電気社史編纂室編、日本電気、1972年)と『日本電気最近十年史』(同前、1980年)をあらためて追うことで、単純に機構改革、名称変更が繰り返されたためと氷解した。と同時に、組織変更の繰り返しの跡は、当初電話機器の製造メーカーとして生まれた同社が通信一般に領域を拡張し、軍需に精力的に応えたあとで敗戦という一大衝撃を受け、そこから家電、コンピュータ、半導体と新しい分野に乗り出しながら、復興、発展を遂げていった証であることを確認させられた。

  大半の読者にとっては、組織の正式名称の変遷は興味の外だろう。本文中の表記が多少前後で入れ替わっていたとしても、「筆者がそこは確認しているだろう」と安心して読み飛ばしていただければよい。ただし本書に資料的な側面を求めるごく一部の読者のために、名称の変遷の跡を戦後に限って振り返っておく。

  創業の地であり、現在本社の置かれている三田は、敗戦後、有線通信関係の拠点として三田製造所と呼ばれ、一方、無線関係の拠点であった玉川は玉川向製造所と名付けられていた。日本電気はその他に、大津製造所(ラジオ、真空管)、大垣製造所(手動交換機、有線関係製品)、同瀬戸工場(通信機器用特殊窯業製品)、高崎製造所(真空管材料、各種特殊材料)の製造拠点を有していた。

  戦後のインフレ抑制を狙った金融引き締め政策、ドッジラインが発表された直後の1949(昭和24)年4月23日、日本電気経営陣は「会社再建に関する新提案」をまとめて、労働組合に提示した。提案は、

(1)大垣製造所および同瀬戸工場、高崎製造所、研究所の廃止
(2)会社全体にわたる人員縮小
(3)大津製造所への独立採算性の導入

を骨子としていた。

  以降、組合側は106日間にわたって抵抗するが、5月27日、会社側は提案の(1)を実施し、7月7日には(2)、(3)を実行して全従業員約1万2000名の35パーセント弱に相当する約3600人を整理し、大津製造所をラジオ事業部に改組した。あわせて同日、三田製造所は三田事業部に、玉川向製造所は玉川事業部に名称変更された。朝鮮戦争に伴う特需景気が日本経済のカンフル剤として機能したのちの1954年10月、三田、玉川両事業部の名称は製造所に戻され、1961年4月、事業部制の採用によって今度は事業所と呼ばれることになった。コンピュータの拠点となる府中事業所の新設は、1964年9月。1969年1月には各事業所は事業支援本部と改称され、三田、玉川など、各地区工場の総称が事業所から事業場に変更される。

  昔話をたどろうとすれば、混乱もしようというものだ。

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