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幸せなITエンジニアを目指すためのヒント

第1回 技術を究めたかった私が、マネージャになったワケ

テイクウェーブ 竹内義晴
2008/1/16

チームのマネージャに。でもどうすればいいのか分からない

 それと並行して、常駐先での仕事は続けていました。巨大プロジェクトも終盤に近づき、全国各地から集まっていたメンバーは1人2人と去り、自社のマネジメント層も引き上げていきました。残された20人のチームの中で、マネージャができそうな経験を持つのは私だけでした。ずっと逃げ回っていたのに、しかももう独立したのに……。

 一応独立していたため、誰が困ろうと関係ないということもできました。けれども、私より若い人たちが、私が味わったつらさをまた味わうのかと思うと、どうにかしたいという気持ちになりました。そこで腹をくくり、避けていたマネージャの領域に足を踏み入れることにしました。

 そんなこんなでマネージャを任された私ですが、興味があるのは「システムの作り方」であって、「組織のつくり方」や「人の動かし方」ではありません。

 常駐先でずいぶんとプレッシャーをかけられて仕事をしてきたので、「プレッシャーでは人は動かない」ことは嫌というほど分かっていました。でも私にできることといえば、それまで自分がされてきた「人前でしかる」「プレッシャーをかける」「数値で管理する」「『何でこんなことも分かんないの?』などの叱咤(しった)激励や指示命令」ぐらいでした。チームには生き生きと仕事をしてほしいと願いながら、そうするための方法がまったく分からず、まさに八方ふさがりの状況でした。

コーチングとの出合い

 あるとき、知人の紹介でコーチングのセミナーがあることを知りました。「コーチングって何だ?」と思いながら参加して、目からウロコが落ちる思いがしました。

 「同じことでもいい方によってずいぶんと違うものだな……」ということを知った私は、コーチングを学び始めました。コーチングについて調べるうち、NLP(神経言語プログラミング)という心理学も良さそうだという印象を受け、これも併せて学ぶことにしました。このときの自己投資額は数百万円に上りました(怖くて妻にはいえません……)。とにかくどうにかしたいという思いで必死だったのです。

 同時に、本にも救いを求めました。経営、マネジメント、哲学、心理学、神話、マーケティング……ありとあらゆる分野の本を読みあさりました。本代がもったいなかったので、古本屋に行っては10冊単位でまとめ買いをして、 1日1冊ペースで読みました。

 そうすると、うまくやっている人々が何を考え、どのように行動しているのか、どのように人を動かしているのかという共通点が見えてくるようになりました。その方法は、私が繰り返していた指示命令ではありませんでした。多くはコーチングや心理学に通じるところがあると分かり、その2つを継続して学びました。

 学んだ内容は、実際に現場で試しました。まずは本の内容をうのみにして、「○○のいい方をすれば△△になる」「質問はこうする」という表面的なことを試してみました。

 最初はあまりうまくいきませんでした。「操作されているようで嫌」「尋問されているようで嫌」……たくさんの批判を受けました。それでもあきらめず、たくさんの失敗をするうちに、やっと「あぁ、こうすればうまくいくんだな」とか「いくら表面的に言葉を使ってもダメなんだな」とかいうことが分かってきました。

コンピュータより人を動かす方が楽しくなった

 それまでは「おれは技術者だ!」と「コンピュータを動かす」ことだけに喜びを感じていましたが、試行錯誤がうまくいったことによって、「チームを動かす」ことにも喜びを感じるようになりました。

 「チームを動かす」というと人を操作し、コントロールするような印象を受けるかもしれませんが、実際はまったくの逆。リーダーが接し方を変えていくことで、チームが自然と動きだすことを、私は体で理解したのです。チームが変わり、人が変わってきて、笑顔や生き生き感が見られるようになる喜びは何にも代えがたいものです。

 「人を動かすこと、チームを動かすことって楽しいんだな」「リーダーがかかわり方を変えていくことで、人が変わり、チームが変わり、ひょっとしたら、その人の家族や社会全体までも変わるのかもしれないな」。マネージャ経験をきっかけにそのように考えるようになった私は、ついにコーチングを本業とするようになり、いまに至っています。

 今回は、技術にしか興味がなかった私が興味の範囲を広げていった経緯をお話ししました。次回以降、これら私の経験を基にして、ITエンジニアのあなたに知っておいてほしいあれこれを紹介します。連載第2回では、「自分は本当は何をしたいのか」を考え、その目標に向かう方法についてお話ししたいと思います。


今回のインデックス
人なんて動かしたくない。動かしたいのはシステムだ
もうこんな会社イヤだ。辞めて独立する!
コンピュータよりも、チームを動かす方が楽しくなった

筆者プロフィール
テイクウェーブ 代表 竹内義晴●システムエンジニアとしてさまざまな規模の開発を経験した後、心理学のトレーナーになるという異色の経歴を持つ。現在は人材育成を中心としたパーソナルコーチングや組織活性化のための企業研修を行う。「技術命」のエンジニアとしての経験と、脳機能の理論から生まれた独自の視点でマネジメントの楽しさを伝えている。そのほか、夢を持って人生を切り開く方法やモチベーションアップ法などをメールマガジンやWebサイトで無料提供中。ITコーディネータ・生涯学習開発財団認定コーチ・NLP(神経言語プログラミング)トレーナー。
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