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ITコンサルタントが語る! 世界の現場から

 

第6回 中国語圏である1つのプログラムが完成するまで

アビーム コンサルティング
マネジャー 古山太

2008/8/8

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ITコンサルタントの活躍の場は、日本だけではなく各国にも広がっている。本連載は、主に海外で活躍する日本人のITコンサルタントが、海外のプロジェクト事情などを、リレー方式で伝えていく予定だ。あなたの将来の活躍の場も、そこにある?

 今回は1つのプログラムが完成するまでのとても短い物語をお送りします。機密保持などの関係から、本当のことをありのままに書いてはいませんが、私が2003年から約5年の間に経験した中国と台湾での仕事を材料としています。本当に起こった「架空のお話」です。

【背景:中国語圏のERPの導入プロジェクト】

 ある中国語圏の日系企業がクライアント。ERPの導入プロジェクトで、日本にある本社が予算を出しています。ユーザーは現地の子会社です。そのERPプロジェクトで、返品に関する追加開発が決まりました。私がそのプログラムの仕様を作成することになりました。

【仕様:決めるところから始める】

 ERPでも標準機能で要件が満たされない場合は開発を行います。日本と同じように、仕様を決めるところから始まります。

 まずは、プログラムの概要設計を日本語で書きます。それを日本側担当者Jさんに説明し、アドバイスをもらいます。「日本から現地の統計数値を見るため、ここに返品理由コードをユーザーに入れてもらおう」など。

 その後、設計書を修正して中国語にします。もちろん、ネイティブチェックをチームメンバーにしてもらいます。現地側担当者Xさんに時間をいただき、中国語で説明します。

 「Xさん、日本でこういう視点の数値が見たいようなので、ここに返品理由コードを入れてください」

X 「そんなの面倒くさいし、日本から監視されているみたいで気分がよくないですねぇ。それに、みんな正直に入れないと思いますよ。いまの理由コードには“Other”という項目がありますね。おそらく80%はこれになると思います。日本で考えているほど単純じゃないんですよ。もう少し、細かい設定をお願いします。あと、本当に入れるなら英語は駄目です。中国語じゃないと勘違いで入力する可能性があります」

 「そうですか、状況は理解しました。日本側と検討させてください」

◎翌日:「そんなに難しい英語じゃないでしょ」

 「Jさん、返品理由コードは駄目みたいですね。このままでは正しいデータを入力してもらえなさそうです。受注理由コードを入れてもらい、それの裏返しで返品分析をするのはどうでしょう?」

J 「駄目ですね。受注理由がそのまま返品理由にはならないですからね」

 「そうですよね。では、いま管理職で行われている未回収債権検討会に日本と同じく返品率削減検討も加えてもらうというのはどうでしょう? ここで検討されるなら、ユーザーに正しく入力してもらえると思います」

J 「なるほど、では現地管理者会議に申請してみましょう」

 「その前に、もう2つ課題があります。コードは中国語にしてほしいそうです。間違えて入力されると意味のない統計になるので入力は中国語、日本側では日中対訳表をもっておくのはどうでしょうか?」

J 「そんなに難しい英語じゃないでしょ。大丈夫ですよ」

 「いや、そうはいっても日本側から要求している以上、できるだけの対応はすべきだと思います」

J 「分かりました。では中国語にしましょう。日本での報告時に私が編集します」

 「すみません、よろしくお願いします。2つ目の課題は、理由を細分化してほしいということです。これは日本と同じ体系でなければ駄目ですか」

J 「はい。ただし、細分化するなら理由を階層構造にし、現地で細かい分析をして、日本ではまとめるというふうにするのはどうでしょうか」

 「階層ですか、いま利用しようとしている標準機能のマスターには階層がないはずですが……。少し検討させてください」

 この後、管理者会議での説明のため、日本からも責任者に出張してもらい、話をまとめました。私はその通訳も行いました。そして、階層構造の仕組みを別途考案、コストの相談を行い、仕様の最終段階にこぎつけたのでした。

◎後日:「ユーザーが納得できる説明をお願いします」

 「Xさん、検討の結果ですが、やはり返品理由は必須で入れていただく必要があります。ただし、中国語での入力と理由の細分化に関してはご要望のとおりにします。返品理由は現地の管理者も分析が必要だとおっしゃっているので、お願いします」

X 「そう決まったのですか?」

 「はい。このプロジェクトは日本側の予算で行っているので、必須要件としてご理解ください」

X 「そうですか、分かりました。ただ、システムの操作説明のときには、ユーザーが納得できる説明をお願いしますね」

 「……了解しました」

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