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ITコンサルタントが語る! 世界の現場から

 

第8回 海外勤務を乗り切る3つのアドバイス

アビーム コンサルティング
マネジャー 紀本武史

2008/10/17

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 今夏、北京オリンピックがさまざまな話題を世間に提供しつつも、ひとまず成功裏に終了しました。事前に懸念されていたような混乱はなく、中国経済の勢いをあらためて世界に示すものになりました。そんな中国を含むBRICsの経済的躍進については、すでに十分語りつくされている感があります。

 ところで、BRICsに比肩する大きな新興市場がほかにあります。東南アジアのアセアン地域です。いうまでもなくアセアン地域は、戦後日本にとってのビジネス上の要所です。FTA(自由貿易協定)交渉も非常に活発であり、2国間での個別の貿易促進は、特に2000年代中盤から増加しています。1997年のアジア通貨危機から10年あまりを経て、ベトナムのインフレーションなど多少の振幅はありますが、アセアン地域は、各国おおむね5〜9%程度のGDP成長率を保ってきました。

 そんなアセアン地域が、ここ2年あまりの筆者のプロジェクト現場です。今回はアセアン地域でのコンサルティング経験を振り返りながら、アセアン地域および海外の仕事で使えるかもしれない「Lesson Learnt」に触れてみたいと思います。

その1:怖気づくな。カッコ悪い

 わたしが仕事で本格的に携わったアセアン地域はタイです(2006年6月)。それまでにも、数回タイにプロジェクト支援(1週間前後の出張)で行っていましたが、1カ月以上の滞在は2006年が初めてでした。日系製造業の現地法人向けに、アセアン標準の業務やIT基盤導入を推進するプロジェクトでした。わたしは当初、会計領域のリードとして参加しました。

 1カ月半で現地コンサルタントにナレッジトランスファーし、プロジェクトの走り出しを支援するのがわたしの役目でした。1カ月半後、当初の目的は無事果たしたのですが、プロジェクトの事情でその後1年近くタイに常駐することとなってしまったのでした。

 延長後の新たな役割は、サブ・プロジェクトマネジャー*でした。

通常、@ITでは「マネージャ」と表記しますが、ここでは、アビーム コンサルティングの役職名を踏襲して「マネジャー」とします。

 わたしには、会計関連のさまざまなプロジェクト経験がありました。プロジェクトの各段階でどういうタスクがあり、その業種では主に何がポイントなのかなど、プロジェクトの基本的な流れについては一通り知っていたため、サブ・プロジェクトマネジャーという役割そのものに不安はありませんでした。しかし、留学経験がなく、仕事上十分といえないレベルの英語力しかなかったこと、ロジスティクス関連業務(そういう業務も担当していました)の経験不足などで、内心怖気づいていたのを覚えています。実際のところ、オファーを断るというオプションもあったため、(オファーが来たときには)驚くとともに大いに悩んだものでした。しかし、丸1日かけて暑いバンコクの地で考えた末、わたしはこう考えるようになりました。

 「どこにいてもコンサルティングの要諦(ようてい)は変わらない」

 「『海外だから』『英語だから』『クライアントやユーザーの質が異なるから』などいい訳を立てて、この挑戦を避けたら5年後10年後、きっと自分を恥じることになる」

 「怖気づくなんてカッコ悪い」

 「ちょっとくらい失敗しても、やっておけば5年後10年後、少しは自慢話になるかもしれない」

……と。

 少し不純に聞こえるかもしれませんが、このように考えるに至った理由は、(ほんの1カ月半とはいえ)日本とタイで行う仕事の中身に大きな違いはなく、きちんと手順を踏めば、課題は必ず越えられると考えたからです。

 日本とタイには、「気候」「環境」「英語」「気質や物事への執着心」「報告姿勢」「精度」などの違いがあります。細かく見れば、多くの違いや不便が目に付きます。しかし、少し俯瞰(ふかん)して見てみると、こんな見方もできるのです。

  • 顧客が難しいと思っていることがまさにプロジェクトのテーマであることは、日本でもタイでも同じ

  • タスクやイシューを完了したときの喜ぶさまは日本人もタイ人も同じ

  • 日本人が難しいと思うことは、彼ら(当時はタイ人)も同じように難しいと思う

  • お互い英語は第2外国語だ。込み入ったことは、絵を描くなどして、粘り強く会話すれば通じるはず

  • ある担当者で埒(らち)があかない場合でも、上位者が責任を持って対応してくれる体制は日本とそれほど変わらない(組織レベルの無責任体質はない)

 (当時のわたしのような)英語力不十分な海外業務初心者は、環境や言語の違いだけに気を取られ、思考が混乱します。最悪の場合、自分の仕事の本質を忘れ、ネガティブなことにだけ意識がいき、怖気づくことがあります。自社に限らず、他社やクライアントのケースでも、そうした混乱状況に陥って体調を崩し、仕事ができなくなる人がいることを後になって知りました。

 「怖気づくのはやめよう。『困難』や『違い』を楽しみながら、課題に対するソリューションを顧客に提供するのが自分の仕事。怖気づいてはカッコ悪い」と思ったわけです。

1つ目のLesson Learnt
ソリューション提供者なら、怖気づくな。どこでも本来の仕事をやろう

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