@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(106)
リンゴ農家 木村秋則の仕事と奇跡
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/5/22
■100%不可能で非常識
エズラ・F・ヴォーゲル教授の『ジャパン・アズ・ナンバーワン』がベストセラーとなり、日本経済が世界の模範とされていた1980年ごろ、青森県のリンゴ農家 木村秋則(あきのり)氏の一家は貧乏のどん底にいた。「100%不可能で非常識」といわれていたリンゴの無農薬栽培を続けた結果だった。
奇跡のリンゴ 石川拓治著 幻冬舎 2008年7月 ISBN-10:4344015444 ISBN-13:978-4344015449 1365円(税込み) |
木村氏の無謀ともいえる挑戦は「リンゴ栽培に農薬は必要なのだろうか?」という疑問から始まる。しかし、考えに考え抜いても答えは出ず、リンゴ農園はあっという間に壊滅状態となる。そして一家は困窮し、周囲から完全に孤立。木村氏は極限状態に追い込まれた。
元の生活に戻ることは簡単だ。また農薬を使えばいいのだ。しかし、木村氏はあきらめなかった。極限状態の中で木村氏は「リンゴ本来の力を引き出す」というヒントを見つけ「奇跡のリンゴ」の花を咲かせた。
この長く壮絶な闘いの記録で、著者は2つの奇跡を提示している。1つはリンゴの無農薬栽培の成功、もう1つは木村氏の挑戦そのものである。
木村氏は人生相談の電話をしてきた若者にこう答えている。
「バカになればいい。1つのものに狂えば、いつか答えに巡り合う」(『奇跡のリンゴ』、p.23)
著者はこの解釈としてこのように述べている。
「経験と知識は生きていくために不可欠である。だから経験や知識がない人を、世の中ではバカという。けれど人が真に新しい何かに挑むとき、最大の壁になるのはしばしばその経験や知識なのだ」(本書、p.113)
リンゴの無農薬栽培について、その科学的なメカニズムはいまなお解明されていない。木村氏は決して科学的ではないがこのように述べている。
「リンゴの木はリンゴの木だけで生きているわけではない。周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている。そしていつの間にか、自分が栽培している作物もそういうもんだと思いこんでしまう。農薬を使うことの一番の問題は、本当はそこのところにあるんだよ。農薬をまくことは、リンゴの木を周りの自然から切り離して育てるということなんだ」(本書、p.131) (鯖)
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