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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(118)
デジタル社会を上手に生きる

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/9/9

■幽霊の正体見たり……

 デジタル社会である。いつごろからわたしたちはデジタル社会を生きるようになったのだろうか。アナログとデジタルの違いを意識することでおぼろげながら時代の節目を感じることができる。東京工業大学大学院の徳田雄洋教授はアナログとデジタルの違いを以下のように説明する。

デジタル社会は
なぜ生きにくいか


徳田雄洋(著)
岩波書店
2009年5月
ISBN-10:4004311853
ISBN-13:978-4004311850
735円(税込み)

 アナログ技術で製造された機器は連続的な物理量を自然法則を利用して、別の連続的な物理量に変換し、測定や記録、通信を行う。連続的な物理量とは例えば、明るさや重さ、温度を指す。体重計や水銀体温計、フィルムカメラが代表的なアナログ方式の機器だ。一方、デジタル機器は外部の連続的な物理量を機器内部で0と1の数字の列に変換し、測定などを行う。デジタルカメラは画素ごとの光の強さを0と1の数字の列で記録する。

 アナログ方式からデジタル方式に移行することで得られるメリットの大きさゆえに、わたしたちはデジタル社会を生きる選択をした。デジタル方式のメリットとはアナログ方式と比較にならないほどの大容量のデータを記録できることにある。驚異的な量のデータが蓄積可能となり、なおかつデータの高速処理が実現したことで、わたしたちの生活を支援するさまざまな機器はアナログ型からデジタル型に置き換わっていったのであった。

 ヒトが使用する機器の製造技術がデジタル方式に切り替わり、広く活用され、社会の中で重要な位置を占めるようになると、ヒトの行動形態が機器および機器を利用したサービスに大きな影響を受けるようになる。ヒトの行動形態がデジタル方式の影響を受けている社会をデジタル社会という。現在は確かにデジタル社会であるが、身の回りにはまだアナログ機器が存在し、ヒトの生活支援の道具として有効に機能していることも事実である。

 それゆえ、現在はアナログとデジタルの端境期(はざかいき)にある時代と表現した方が適切だ。時代の端境期には新旧の行動形態間に生じるギャップによって、いくつかの無視できない問題が生じるものである。徳田教授が『デジタル社会はなぜ生きにくいか』というささやかな本で読者に訴えかけるのは、アナログからデジタルに移行する現在のような端境期をできるだけストレスなく生きるにはどうすればよいか、ということである。

 そのために、本書では、デジタル機器の基本的な構造や振る舞いを丁寧に説明したり、サービスの利用場面で想定されるさまざまなトラブルを記述している。アナログ社会からデジタル社会への端境期で生じる困難の多くは、機器の動作やサービスの流れに関する基本的な知識の欠如にあると徳田教授は考えている。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」である。

 なお、本書の最後で徳田教授は「デジタル社会を生き抜く心構え」として以下の6項目を提示している。

  1. 半分信用し、半分信用しない

  2. 必要な知識や情報を得て、自分を守り、他人の立場を尊重する

  3. 自分ですることの境界線を定める

  4. 利用することと利用しないことの境界線を定める

  5. 危険性を分散し、代替の方法を持つ

  6. 依存しすぎない

(鰈)

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