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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(23)
「ウェブ社会」の生き方

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/8/14

■機械情報と生命情報

ウェブ社会を
どう生きるか


西垣通(著)
岩波書店
2007年5月
ISBN-10:4004310741
ISBN-13:978-4004310747
735円(税込み)

 「情報」をあらためて考える。

 情報とは例えば「小包」のような実体ではない。「情報とは生物が世界と関係することで出現するものであり、具体的には生物が生きる上で『意味のある(識別できる)パターン』ということ」(『ウェブ社会をどう生きるか』、p.18)である。パターンには質量もエネルギーもない。そして、注意すべきは「パターンというものが客観的な存在ではなく、観察者とワンセットになった主観的存在」(同書、p.17)だということである。

 一般的な意味での情報は、この本の中では「機械情報」と記述されている。ハードディスクに記録されるデジタル信号がこれに当たる。

 情報通信技術の急速な発達と普及が、機械情報の爆発的な増加を促した。このことから、現在は、高度情報通信社会と呼ばれる。この社会には「知識」や「情報」が富を生むという常識が横たわっており、多くの起業家がこの常識にのっとって事業を興した。

 しかし「この考えは、まったく誤りでないにせよ、致命的な欠陥を持っています」(同書、p.33)とこの本は指摘する。情報を、生物が環境と結ぶダイナミックな関係ととらえる視点が欠如していると批判する。この批判のポイントは、生物および機械と、時間との関係である。機械と生物との根本的な相違は時間性の有無であり、「情報を小包とみなす高度情報通信社会なるものが、いかに人間の自由を奪い、人間をサイボーグのように機械的・反復的な時間のなかに閉じ込めるかがわかってくる」(同書、p.35)とする。なお、「機械情報」に対置する言葉として、この本には「生命情報」という言葉が登場する。

 いわゆる「ウェブ礼賛者」の素朴な古典的進歩主義を徹底的に批判した本なのである。(鰆)

本を読む前に
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