@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(12)
『中堅崩壊』の救いをイタリア企業に求める
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/7/30
■イタリアの「プロジェティスタ」を目指す
中堅崩壊 野田稔、ミドルマネジメント研究会著 ダイヤモンド社 2008年3月 ISBN-10:447800465X ISBN-13:978-4478004654 1785円(税込み) |
日本企業の中堅層が弱体化している。中堅層とは、バブル入社組(30代後半から40代後半)を指す。「(中略)十数年にわたって、組織の末端で、彼らは極めて狭い範囲でのスペシャリストになってしまったのだ」(『中堅崩壊』p.10)。彼らはいわゆる事務系の単能工で、企画力や戦略力がなく、交渉能力も人材ネットワークもリーダーシップもない。そもそもそれらのスキルを学ぶ機会がなかった。「塩漬け君」と呼ばれている。
入社後数年から10年ほどたち、そろそろ部下を持つという段階で、「失われた10年」が始まったのである。部下となるべき新入社員がぱったり入ってこなくなった。部下・後輩の指導、育成経験に乏しいのは仕方がない。このため、「万年プレーヤー症候群」「漠然不安症」「プチ自信喪失症」「塩漬け症」といった“バブルミドル症候群”にかかる人が多くなった。
このことの何が問題なのか。
10年の長期不況をくぐり抜けて、企業間の競争ルールが変わった。同質化競争(価格競争など)から競争相手のいない世界での競争へと、競争の仕方が変化した。市場のルールの変化により、組織の考え方も変わった。資産や資本集約的な巨大組織ではなく、知識集約的なチームの集合体として組織をとらえる必要性に迫られた。
このような時代に求められるのは、「企業活動の各局面、レベルで、小さなイノベーションを創造することのできるフロントラインのリーダー層」(同書、p.54)である。「塩漬け君」には荷が重い。
では、中堅層を活性化するにはどうすればいいのか。つまり、たくさんの小リーダーを生み出し、現場力を高めるにはどうすればいいのか。著者の提案はシンプルである。「組織成員の働き方、生き方を変えるということである。何のために働くか、その動機付けを変えるのである」(同書、p.233)。
ロールモデルとして、イタリアの「プロジェティスタ」という職種、働き方の日本企業への導入、定着を提唱している。
プロジェティスタとは、プロジェクトマネジメントを専門とする独立したプロフェッショナルのことだ。95%以上の企業が従業員9人以下というイタリアだが、企業の輸出性向はとても高く、「中小企業の輸出比率は60%に達する」(同書、p.236)。イタリア企業の全体としての強みは、各企業間で縦横に張り巡らされた水平ネットワーク(例えば「のれん分け」)にある。このネットワーク環境で活躍するのがプロジェティスタだ。
イタリア企業の柔軟な水平構造とプロジェティスタの役割を、日本の企業組織に応用することで、組織の活性化が図れる、とこの本は説く。「塩漬け君」になりつつある日本の中堅層がプロジェティスタの役割を担えるか。(鯖)
本を読む前に | |
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※「プロティジェスタ」を「プロジェティスタ」に修正しました。(編集部:2008年8月1日) |
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