定時で帰るメンバー。作業は順調なんだよね?
ナレッジエックス 中越智哉
2008/2/14
気付けばあっという間に年が明け、正月休みも終わり、2月もすでに半分終わろうとしています。去年の4月に入社した新人も、もう会社生活11カ月目。最初は右も左も分からなかった新人たちが、いまではすっかり慣れた顔つきで日々の仕事に取り組んでいるのではないでしょうか。
ここアットイットシステム社にも、入社11カ月目の新人、しんじ君がいます。最初は怒られてばかりだったしんじ君も、最近ではきちんと業務をこなせるようになり、もう何年も在籍しているかのように会社に溶け込んでいますよ。
■鮫島さん、新人時代を思い出す
そんなしんじ君の成長を、つぶさに見てきた先輩がいます。入社5年目のITエンジニア鮫島さんです。
去年の4月から比べると、見違えるほどしっかりしたしんじ君の様子を眺めながら、ふと鮫島さんは自分の新人時代を思い出していました。
鮫島さん | そういえば、あれはちょうどいまくらいのことだったなあ……。 |
鮫島さんは、5年前にアットイットシステム社に入社。以来ずっとシステム開発部に在籍し、多くのプロジェクトを経験してきました。
しんじ君と違い、情報系の学校を卒業した鮫島さんは、コンピュータやプログラミングについてはある程度の知識がありました。でもビジネスマナーやシステム開発のイロハについては、やはり入社後に覚えていったのです。
入社から1年近くが経過し、仕事にもずいぶん慣れてきた4年前の2月のことです。鮫島さんはとあるプロジェクトに配属され、プログラマとして業務を行っていました。
■新人鮫島さん、プログラミングのリーダーに
鮫島さんは、麻根主任に呼ばれています。
麻根主任 | 鮫島君、明日からナレッジ商事さんの開発プロジェクトに入ってほしいんだ。 |
鮫島さん | はい、分かりました。 |
麻根主任 | 君にはプログラマとして入ってもらうつもりだ。 |
鮫島さん | はい。 |
麻根主任 | 今回のプロジェクトは、初めてのお客さんだし、失敗は許されないぞ。 |
鮫島さん | はい。 |
しんじ君が数多く行ってきたナレッジ商事のプロジェクトは、鮫島さんが新人の年に初めて受注したのでした。
麻根主任 | だが、システム自体の規模は比較的小さいんだ。そこで、鮫島君にプログラミングのリーダーをやってもらいたいんだが、どうだね? |
鮫島さん | はい……え? 私がですか? |
麻根主任 | ああ、そうだ。もちろん、設計部分は先輩エンジニアたちがやってくれるから、君は実装部分をほかのプログラマの中心になって進めてほしいんだ。 |
鮫島さん | 分かりました。頑張ります。 |
新人がプログラミングのリーダーを務めるのは、アットイットシステム社では異例のことです。その日の昼、鮫島さんは同期の面田さんとそのことについて話していました。
面田さん | へぇ、鮫島君、リーダーなんだ。すごいね。 |
鮫島さん | 全体のリーダーじゃなくて、プログラミングだけのリーダーだけどね。 |
面田さん | まあ、それでもリーダーには変わりないよ。今日から鮫島リーダーと呼ぼうかな。 |
鮫島さん | やめてくれよ。でも何で、私なんかにリーダーをさせるんだろう? まだ1年目なのに。 |
面田さん | そりゃあ、鮫島君が優秀だからじゃない? きっと、会社から期待されてるんだよ。 |
鮫島さん | 本当にそうなんだろうか……。 |
確かに入社以来、鮫島さんは失敗もほとんどなく、いくつかの開発プロジェクトで順調に自分の役割をこなしてきました。面田さんのいうとおりなのかもしれません。
■3人体制でプログラミング開始
次の日から鮫島さんは、プログラミングの進行を管理するリーダーとしてプロジェクトに参画しました。プログラマは鮫島さんを入れて3人。鮫島さん以外は、パートナー会社のITエンジニアです。
麻根主任 | 鮫島君、こちらが一緒に作業してもらう外山さんと、注島さんだ。 |
鮫島さん | 鮫島です。よろしくお願いします。 |
新人離れしたプログラミングスキルを持っている鮫島さんですが、人とのコミュニケーションはあまり得意とはいえません。そんな鮫島さんに、これまで接することのなかった他社のITエンジニアとのコミュニケーションが求められることになったのです。
外山さんと注島さんは、見たところ、鮫島さんと同年代か少し若いくらいの人たちでした。「年上のITエンジニアばかりだったらどうしよう」と考えていた鮫島さんですが、さすがに入社1年目の鮫島さんに、そこまでのシチュエーションは用意されなかったようです。鮫島さんは少しほっとしましたが、まだ不安でいっぱいでした。
そして作業は始まりました。システムの設計はほぼ終わっていたので、すぐにでもプログラミングが始められる状況でした。まずは鮫島さんが中心になって、プログラミングの分担を決めなければなりません。鮫島さんはパートナーの2人にまず開発に必要な環境づくりをしてもらうように指示し、その間に分担の計画を立てることにしました。
鮫島さん | 普通に考えれば、3人なんだから、全体の3分の1ずつ割り当てればいいんだろうけど……。でも、どの人がどのくらいのスキルなのか分からないのに、そんな分担でいいのかな? |
鮫島さんはしばらく考えていました。
鮫島さん | まあ、途中で変更してもいいんだし、取りあえず3等分にしてみよう。 |
こうして、3人のプログラマによる作業が始まりました。プロジェクトの全体スケジュールのうち、プログラミングの期間は約2週間です。初日は、3人が3人とも黙々とプログラミングをこなして終了しました。
「2人とも定時で帰っているし、作業は順調に違いない」。本当かな? |
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