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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(26)
『いま、働くということ』を読む

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/8/20

■人生は「プロジェクト」ではない

いま、働くということ

大庭健(著)
筑摩書房
2008年5月
ISBN-10:4480064230
ISBN-13:978-4480064233
819円(税込み)

 「なぜ働くのか」という問いに対し、「生きるため」という回答がある。この回答にはある前提が隠されている。「『生きる』ということが、気付かぬうちに、私有したいのちを“原資”として快と満足を搾り出すプロジェクトへと切り詰められ、仕事もまた、見返りとして快と満足を得るための手段へと矮小化されてしまう」(『いま、働くということ』、p.231)という前提である。

 人生は「プロジェクト」ではない。この考えがこの本のあらゆる記述の根幹にある。つまり、人生は、なんらかの対価の見返りを求める行動原理とは対極にあるはずであるとする。著者はヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』(みすず書房)のある一節を参考にしながらこう書いている。「自我がいのちを所有しているのではなく、いのちのうえに自我が成立している」(同書、p.229)。

 人生をプロジェクトと見立て、投資と回収の物差しでしかあらゆることを考えなくなったとき、働くという行為は、プロジェクトを成功に導くための手段にすぎなくなる。しかし、人生がプロジェクトではないとすれば、働くという行為もプロジェクトの成功を支援するための単なる手段だとはいえなくなる。

 人はひとりでは働けない。ひとりの人間は仕事を通じて巨大なネットワークを構築する1つの要素である。「全体としてみるならば、自然に対して人類が働きかけていく協業を形成している」(同書、p.53)といえる。このような協業を著者はカール・マルクスの表現を使って「『間柄をなして・自然に対して』遂行される活動の連関」(同書、p.53)と表現した。

 働くというのは、つまり「そういうこと」なのである、とこの本は主張する。(鯖)

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