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@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(76)
検索社会とクウキの支配

@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/12/22

■場の人間関係

検索バカ
藤原智美(著)
朝日新聞出版
2008年10月
ISBN-10:4022732407
ISBN-13:978-4022732408
777円(税込み)

 場の人間関係を支配するのは「クウキ」である。空気ではなく、クウキ。明文化されたり、制度化されたものではない。著者はこのクウキを暗黙であるといい換える。そして、クウキとは「『関係の力学』、人と人との力関係そのもの」であると定義する。

 他人の顔色をうかがい、他人の意見を確認した後で、自分の意思を表明するクウキがまん延している。他人の価値観と対立するのを避けるためである。他人と意見が異なるのをあらかじめ巧妙に回避するのが習い性になっている。この暗黙を破る人は、クウキが読めないというらく印を押され、場から排除される。そのため、わたしたちは、他人の話に耳を傾け、直接疑問を追及したり、意見を戦わせたりしない。それは場のクウキが読めない者のおきて破りの態度だからだ。では、本音はどこにいくのか? 本音は口コミサイトや掲示板やブログやソーシャルブックマークやSNSに書き込まれる。わたしたちはそれらを見て、あらためて現代のクウキを読む。

 著者はクウキに批判的である。クウキの醸成は、自発的思考の欠如に原因の一端があるとする。疑問にぶつかると、わたしたちは、ともあれ検索する。検索窓にキーワードを入力してenterを押す。すると、答えらしきテキストがディスプレイに表示される。その中から“それらしきもの”を選び、コピーし、ペーストして、電子メールの文章を作ったり、Webに日記を書いたりする。

 わたしたちはあまり自分で考えない。ほとんど対話もしない。どこかで読んだ情報をお互いに応酬するだけ。話のテーマは数十秒ごとに変化する。それぞれに割り振られたキャラクターを演じて、脊髄反射的な盛り上がりに意識を集中するのである。

 この本の著者は情報社会に生きるわたしたちの生活に極めて悲観的なまなざしを向けている。(鰈)

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