@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(86)
あなたの命は月いくらか
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/1/29
■分かりやすい生命保険
生命保険は だれのものか 出口治明(著) ダイヤモンド社 2008年11月 ISBN-10:4478007381 ISBN-13:978-4478007389 1500円(税込み) |
生命保険の保険料はどのように計算されるのか。保険料の基本構造を丁寧に解説したところにこの本の真価がある。
国勢調査を基にした分析資料の中に国民生命表というのがある。そこには男女別年齢別の死亡率が載っている。向こう1年間に人が死亡する確率を示したもの。例えば、30歳の男性の死亡率が0.00074だとすると、10万人当たり74人が向こう1年間で死亡すると予想される。1000万円の死亡保険を10万人に販売する保険会社があったとする。この生命保険会社が支払う予定の保険料は、上記の死亡率を基に計算すると、7億4000万円である。つまり、生命保険会社が利益を確保するには、年間7億4000万円以上の保険料収入が必要だということになる。すると、30歳男性については、(例えば)1人当たり月額7400円の保険料を設定する。ただし、死亡率は年齢とともに上昇するため、保険料も上昇していく。これを自然保険料という。第2章「生命保険の基本」では、自然保険料の基本構造から始まって、平準保険料(ある期間の保険料を平準化し、月ごとに払い込める)、死亡保険の給付、医療保険、生存保険の仕組みから、生命保険会社の収益構造まで丁寧に解説する。
第3章では生命保険の商品構成が記述される。生命保険とは、死亡保険と生存保険、医療保険の3つの基本商品の組み合わせで構築される。この組み合わせにさまざまな特約が付加され、多様な商品が生み出される。生命保険商品の複雑化の主な要因はこの特約にあるといっていい。特約を追加することで、保険会社は保険料収入の増加が見込める。実際、顧客のニーズも細分化されているため、特約はよく売れる。
ただし、この本の基本スタンスは、「第1章で示される内容(第1章 日本の生命保険の問題点)」で詳しく記述されているが、複雑化した生命保険のシンプル化の(静かな)提言にある。生命保険を分かりやすくするにはどのような改革が必要か。商品構成の簡略化を進めることと並行して、生命保険の販売チャネルの問題を改善し、法規制への対応を見直し、(生命保険の)運用を効率化するといった多角的な取り組みが必要となる。(鰈)
本を読む前に | |
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