@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(93)
常識の正しさはだいたい50%
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2009/3/20
■「半分だけ正しい」がくせもの
事実に基づいた経営 ジェフリー・フェファー、ロバート・I・サットン(著)/清水勝彦(訳) 東洋経済新報社 2009年1月 ISBN-10:4492532501 ISBN-13:978-4492532508 2415円(税込み) |
問い。初代大統領のジョージ・ワシントンの死因は? 答え。大量失血によるショック死。肺炎にかかった彼は、1799年当時に治療法として一般的だった瀉血(しゃけつ)を受け、その2日後に亡くなった。直接的な死因は肺炎ではなく、ショック死という説がある。その約40年後、ピエール・ルイス医師の調査によって、肺炎の治療では瀉血した方が死に至る確率が高いと証明されている。
事実に基づかない医療は研究により徐々に減っているが、経営分野では「事実に基づかない」または「半分だけ正しい常識に基づく」経営が多いようだ。この本が「半分だけ正しい常識」として挙げているのは次の6つだ。
- 仕事とプライベートを分離した方が効率がいい
- 業績の良い企業には優秀な人材がいる
- 社員への金銭的インセンティブは企業の業績を上げる
- 企業経営は戦略がすべてである
- 企業は変革をすべきだ
- リーダーの出来が企業の業績を決める
どれもこれも「そのとおり」と思われるものばかりだが、著者は膨大な研究結果や事例を基にいずれもが半分だけ正しく、半分は間違っているとする。この「半分だけ正しい」がくせものだ。企業戦略に関しては、インテル元CEOアンディ・グローブ氏のコメントがよく引用されている。一例を挙げてみよう。
「小さかろうが大きかろうが、会社を経営するには戦略だけでは駄目だ。(中略)戦略は重要だ。何をするべきかを理解することは重要だ。そして、それをどれほど効果的に実行するかも同じくらい重要なのである」(『事実に基づいた経営』、p.223)
本書では、いかに多くの企業で「半分だけ正しい常識」に基づいた経営が行われているのかを例証し、さらにどうすれば「事実に基づいた」経営ができるかを指南している。
成功する変革への取り組み方には次の4大要素があるという。あなたの属する部門や企業ではこの4大要素がそろっているだろうか? もしそろっていないなら、「半分だけ正しい常識」にとらわれた経営がなされているのかもしれない。
- 人々が現状に不満で飽き足らないとき
- 方向性がはっきりしており、人々がその方向に集中しているとき
- 人々が成功への自信にあふれているとき
- 変革というのは、混乱や不安に耐えなくてはならない「ドロドロしたプロセス」であることを分かっているとき(本書、p.249)
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