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Web業界セミナー レポート
「Webサービスは戦略+技術+PR」
――Ameba技術者が講演

岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2010/2/10

ネクストが「Web業界セミナー」を開催した。アメーバブログやアメーバピグなどを手掛けるサイバーエージェントの技術マネージャが登壇し、開発の裏側を公開した。また、パネルディスカッションでソーシャルアプリやiPhoneアプリ開発を手掛ける登壇者たちが、今後のWebサービスの行方を語った。

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 「流行しているWebサービスには、戦略、技術、プロモーションの3つの要素がある」

 2月4日、六本木アカデミーヒルズで開催されたネクスト主催の「第1回Web業界セミナー」で、登壇したサイバーエージェント 新規開発局 局長、アメーバ事業本部 ゼネラルマネージャーの長瀬慶重氏はそう語った。基調講演のタイトルは「Amebaを支える技術と組織の秘密」。アメーバピグに代表される同社のWebサービス開発の背景について講演した。

 長瀬氏はもともと通信業界で研究開発に従事していた。その後、ユーザーと直接対話できるWeb業界でのサービス開発に興味を持ち、2005年に同社に入社した。現在はアメーバのメディア開発の責任者を務める傍ら、約140人のエンジニア、クリエイターを束ねているという。

サイバーエージェント 新規開発局 局長
アメーバ事業本部 ゼネラルマネージャー
長瀬慶重氏

「ないものは自分で作る」

 長瀬氏は同社のWebサービスについて説明し、自身が考える「流行るWebサービスに必要な3つの要素」を紹介した。すなわち「戦略」「技術」「プロモーション(PR)」の3つである。

 「戦略」については、「目のつけどころが重要」だと長瀬氏は語った。アメーバピグの基本戦略は「すべてのネットユーザーがターゲット」だという。セカンドライフを比較対象として取り上げ、「低スペックのPCでも利用可能」「日本語ベースで、日本人が気軽にコミュニケーションできる」「簡単で使いやすい」の3点にこだわったと開発コンセプトを明かした。

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 続いて「技術」について、長瀬氏は「Webサービスにおける技術とは、命を吹き込むものである」と強く語った。アメーバピグの技術的な背景として、「立ち上げ当初はとにかく予算がなく、低コストで始める必要があった」と内情を明かし、Atomを使用した自作サーバを使ったというエピソードを披露。「秋葉原で1台あたり3万円で部品を買ってきて、自作サーバを構築した」と長瀬氏は苦笑いした。また、分散データベースをスクラッチで開発したこと、データ通信の最適化を目的とした独自のプロトコルを開発したこと、アルゴリズムを最適化し、Flashを軽量化して活用したことなどを挙げ、「ないものは自分で作る、の精神でサービスを立ち上げた。エンジニアは、やっぱり制約があると燃える」と技術者としての姿をのぞかせた。特に強調したのが独自のDIコンテナを開発したことだ。当時、Flash開発においては、複数人が並列でうまく開発できるようなフレームワークが見当たらなかったという。

 「PR」については、「使い方や、使う楽しさを伝えること」であると長瀬氏は説明した。作ったサービスをユーザーに押し付けるのではなく、「分かりやすい使い方の説明」とセットでPRすることが重要であり、ここまで含めて初めて「Webサービスの戦略」であるというのが長瀬氏の考え方だ。例として長瀬氏はアメーバブログにおける「タレントブログ」戦略を取り上げ、「まだITリテラシーの高い人向けだったブログをタレントに使わせることで、ブログを使う楽しさを分かりやすく一般層に広めるねらいがあった」と解説した。現在、アメーバピグでも同様の戦略を取り始めており、「使う楽しさの説明をパッケージしてPRするのは、わたしたちの責務」であるとまとめた。

セミナーは六本木アカデミーヒルズで開催された

「自由×自己責任」で組織運営

 後半では、こうしたアメーバのWebサービスを生む組織体制について講演が行われた。もともと同社は2004年ごろは10人から20人くらいしかエンジニアがおらず、技術的に未熟だったという。長瀬氏が入社し、2006年以降、エンジニアの中途採用を積極的に行うようになって、60人ほどの規模に成長した。2008年からは新卒採用を始め、現在ではエンジニアとクリエイターだけで約140人の規模となった。「まだまだ、技術を売りにしている他社と比べれば小さな組織だが、離職率が非常に低い」と長瀬氏は自信をのぞかせた。

 エンジニア集団をまとめるリーダーである長瀬氏は、組織のコンセプトを「自由×自己責任」であると説明した。5つのルールと4つの成長機会で技術力向上に努めているという。

5つのルール

  • 新しいサービス、技術に取り組まない姿勢は「悪」

  • 自由な代わりに自己管理を徹底

  • 自分の設計、開発には責任を持つ

  • 新人教育、採用に力を入れる

  • 主体的な問題提起と解決に努める

4つの成長機会

  • 大規模なトラフィック

  • 国内外の新規サービス

  • 現場での裁量権

  • 基盤技術の研究

 これらをベースに、独自の研究成果を評価する「研究評価制度」や、膨大なブログのテキスト解析、大規模トラフィックの負荷分散などの基盤・要素技術研究、社内アプリコンテストなどを通じて、社内活性化を図っていると長瀬氏は語った。

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