Engineer Life
第2回 読者調査結果発表
〜インターネットでスキルアップとキャリアアップができるか?〜
小柴豊
アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
2002/1/9
インターネットがメディアとして確立するにつれ、われわれのアクセス目的も、当初の物珍しさから仕事や生活に密着したものへと変容している。では、本フォーラムの守備範囲である“スキルアップ”や“キャリアアップ”といった人生を左右するイベントにおいても、インターネットは有益な手段たりえるのだろうか? 先日実施した第2回 Engineer Life読者調査結果から、読者のeラーニング/転職支援Webサイトの利用状況について紹介しよう。
eラーニングを利用したいのは全体の95%
新しい教育形態として注目を浴びている“eラーニング”について読者の利用意向を聞いたところ、全体の95%が“利用したい”と答えており、インターネットによるスキルアップサービス需要の高さが明らかになった(図1)。今回は、利用意向の内訳を「会社が提供する社員研修メニューの一環として利用したい」と「書籍など自学自習手段の一環として(個人で)利用したい」との2つに分けて聞いたのだが、仕事のためのスキルアップにもかかわらず、圧倒的に個人としての利用意向が高かったのが特徴だ。インターネット自体が持つ“個人の主体性に基づく能動的メディア”としての属性が、eラーニングにも継承されているようだ。企業でeラーニングを導入する場合でも、集合研修以上に受講者個人のモチベーション管理が重要になると思われる。
図1 eラーニング利用意向(N=249) |
では、読者はeラーニングを行うことによって、どのような成果を期待しているのだろうか? 想定される主な成果を「各種資格試験合格のための知識やノウハウ取得」「興味はあるが、実務経験がない分野の理解/スキルチェンジ」「実務分野の応用知識取得/スキルアップ」の3つに分け、主な目的を選んでもらった結果が図2だ。ご覧いただけるように、すべての選択肢について3割前後で回答が分散しており、eラーニングへの期待は、スキルアップの幅広い側面に及んでいるようだ。
図2 eラーニングに求める成果(N=249) |
eラーニングの要件は、マルチメディア&双方向ではない!
それでは、eラーニングに対して、ユーザーはどんな機能やサービスを期待しているのだろうか? 一般的には、“ブロードバンドやCD-ROM/DVDを活用したマルチメディア教育コンテンツ”とか、“ネットならではのインタラクティブな授業”といった内容が想像されるだろう。しかし実際にeラーニングに求める機能/サービスを尋ねた結果、読者が上位に挙げたのは、マルチメディアでも双方向でもなく、「学びたい部分だけ受講できるコース内容の細分化/専門性の深さ」や「技術動向に合わせたコース内容のアップデートの早さ」だった(図3)。マルチメディアや双方向性は確かにインターネットの特徴だが、よく考えるとそれらはスキルアップの目的とあまり関係ない要素だ。業務上学ぶべき領域が広範囲にわたり、日々刻々と変化に対応する必要があるITエンジニアにとって、“ピンポイントな興味分野の知識を、タイムリーに/深く学べること”こそ、eラーニングの本質的な価値であるようだ。逆にいうと、既存の書籍や教育用テキストに動画・双方向機能を付加しただけでは、“形だけのeラーニング”で終わってしまう可能性が高いだろう。
図3 eラーニングに求める機能/サービス(3つまでの複数回答 N=249)。単位は% |
〜eラーニングに期待すること:読者のコメントから〜
“学びたい項目を、学びたいときに、どこからでも好きなだけ、繰り返し学べること。最新技術になればなるほど、時間とともに具体的かつ明確になる項目もあると思うので、同じコースでも常に更新してほしい。ここが書籍学習と比べてメリットになり得ると思います。”
“新しい技術を個人的に学ぶコンテンツを充実させてほしい。新しい技術はWebか書籍で追うことがほとんどだが、実際に技術を使用するためには、自ら環境を整える必要がある。JSP/Servlet、UML、XMLを学びたいと思っても、とにかく取っ掛かりをつかむのがなかなか難しい。”
“最近のブロードバンドを利用したリモートアクセスで、機器または仮想機器のようなものを使えるような実践的な力が身に付けられるようなもの。”
“とにかく「Anytime, Anywhere」が実現できていること。内容はかなり細かく分類できていること。自己満足に終わらないような評価ができること。”
転職支援Webサイトへの登録率は39%
さて後半では、インターネットを利用したキャリアアップサービスを提供する“転職支援Webサイト”について、読者の利用実態などを紹介しよう。こうしたサイトでは、転職情報の入手用にメールアドレスなどの登録が必要となるが、読者の中でいずれかの転職サイトに登録をしている人は、全体の39%に達していた。また具体的なサイトの登録率では、「リクルートナビキャリア」(リクナビ)が一歩抜き出ており、「en」「JOBMAIL」「nikkeibp-expert」が続く結果となった(図4)。
図4 登録している転職支援Webサイト(複数回答 N=249)。単位は% |
次に、読者が転職支援サイトに望む情報/機能/サービスについて聞いたところ、「スキルやキャリアを匿名で公開し、アプローチを受ける機能」「条件に合った求人情報をメールで知らせる機能」の2点に対する希望が40%を超えた(図5)。この2点については、すでに多くのサイトが実装しており、すでに適職紹介を目的とする転職支援Webサイトの基本機能といえるだろう。
図5 転職Webサイトに望む情報/機能/サービス(3つまでの複数回答 N=249)。単位は% |
最後に、読者が転職活動をする際の問題点を紹介しておこう(図6)。最も多くの回答が集まったのは「転職後の賃金」であったが、「転職先の社風や経営方針」を挙げる人も全体のおよそ5割に上った。賃金については事前に書面などで確認できるが、社風や経営方針などは実際に入社してみないと分からないケースが多い。前項の図5を見ても「第三者による客観的な求人企業評価」や「求人企業の社風や仕事内容が分かるインタビュー」を求める声は比較的高かった。新規参入事業者が増える中、今後ユーザーに選ばれる転職支援サイトになるためには、求人メールなどの基本機能と同時に、こうした転職者の課題を解決するサービス/ソリューションの提供が求められるだろう。
図6 転職活動時の問題点(3つまでの複数回答 N=249)。単位は% |
調査概要
調査概要 | |
調査方法
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Engineer LifeサイトからリンクしたWebアンケート |
調査期間
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2001年10月26日〜11月22日 |
有効回答数
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249件 |
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